CtoC市場の今〜苦手分野を補うCtoBtoCサービス「RECLO」〜
今、フリマアプリを始めとしたCtoC市場の成長が著しい。欲しいモノを中古で買い、要らなくいったモノは売るという消費者の行動が定着することで、BtoC-EC市場にも変化が表れている。インターネット上でのモノの売買において、消費者は何を求めているのだろうか。それを明らかにすべく、CtoC市場に関するサービスを提供する各社に直接取材を行っていく。
今回は、ハイブランド品の委託販売・買取サービスを行う「RECLO(リクロ)」を運営する、株式会社アクティブソナー 代表取締役社長 青木康時氏に伺った。
CtoC取引に関する消費者の不安とは
「『RECLO(リクロ)』という名前は『クローゼットをリフレッシュする』という意味で『リ・クローゼット』から来ています」と青木氏。サービス開始から2年、成長は順調だという。「RECLO」の構想が生まれたのはちょうど「メルカリ」が有名になり、フリマアプリを中心にCtoC市場が盛り上がり始めた頃。「フリマアプリでは困ることを考えたのがきっかけでした」。どういうことだろうか。
「RECLO」は、ハイブランドのアパレルやカバン、時計、宝飾品の委託販売と買取を行う、CtoBtoCサービスだ。「RECLO」に預けられた商品は、ベテランの鑑定士が鑑定を行い、100%本物という保証がされた上で販売される。その証拠に、これまで何万点と販売してきたハイブランド品の中で、偽物は一度も出ていない。さらに2016年の9月からは、返品保証制度も開始した。これは、商品到着から5日以内の申請であれば、返品処理を受け付け、専属の鑑定士が再検品の上、購入時と状態が変わらない事を条件に返金処理を行うという制度だ。
なぜこのような手厚い保証を行うのか。それは、CtoC取引の問題点として、万が一偽物が出品されていた場合、その判断がつきにくいという点がある。安価な品物の場合はそれほど問題にならないが、ハイブランド品の場合は大きな問題だろう。出品者が故意に偽物を出品している場合も、気づかずに出品している場合もあるが、偽物を購入してしまっても、購入者の自己責任となることが多い。「ハイブランド品であっても安心して利用できるtoCサービスを作りたいと思ったのがきっかけです」と青木氏。
アクティブソナーが実施した、インターネットにおける中古品の購入に関する意識調査(※)によると、中古品の購入に慎重になる価格は10,000円以上が31.4%、次いで5,000円以上が23.4%となっている。つまりインターネットで中古品の購入を検討する際に、「10,000円」が一つの境目となっていることが分かる。ここから、10,000円以上の高額な商品となると、何らかの保証がほしいということにもなるだろう。
さらに、商品の品質を自己判断でき、インターネットにおけるCtoC取引を通じて購入検討ができる中古品としては、ともに「雑貨」「アパレル」が半数以上を占める結果となった。逆に、プロの鑑定を必要とすると回答があった中古品に関しては、「貴金属」や「ブランド品」など高価格帯の商品が8割以上を占めている。また、鑑定士による品質保証付の場合、購入対象となる中古品として「貴金属」「ブランド品」が半数以上を占めている。
※調査概要
対象者:個人間取引の利用経験がある20代〜40代の有識者男女442名
地域:全国
時期:2016年8月19日〜20日
実査機関:インターネットリサーチfasttask
CtoC取引を面倒だと感じる時に
CtoC、特にフリマアプリ市場においては、取引成立に至るまでのやり取りや、そこからの梱包、発送手配などにそれなりの手間がかかる。出品や販売を楽しむという点では良いのだが、忙しい中でモノを売りたいという時には不便を感じることもある。「RECLO」では、売りたいモノを集荷してくれて、鑑定から掲載のための撮影、問い合わせ対応や梱包、発送まで、全ての作業を行ってくれる。ハイブランド品を売るためには、特に相応しい見せ方や梱包が必要になってくる。それを踏まえた手配が可能なのが、CtoBtoCの仕組みの強みだろう。
「弊社がターゲットとしているのは、タンスの肥やしとなっている要らないモノはあるけれど、忙しいし、手間をかけて売るほどではないというような方です」と青木氏。アクティブソナーの調査によると、オンライン・オフラインを含め、リサクルショップを利用したことがない消費者は半数以上の57%にも上った。その理由としては、売れる場所があることに気づいていない、売れることは知っていても面倒など、いろいろな理由が考えられる。そういった理由を持つ人達への新たなアプローチが、市場の拡大につながるはずだ。
EC上での取引であれば、実店舗を持つリサイクルショップに比べコストがかからず、また委託販売の場合は、買取額に安さを求める必要がない。適正な価格を出品者にも提示し、良い価格で売れたら出品者と共に喜ぶことができる関係性なのだ。商品を購入するユーザーにとっても、100%本物という安心感のもとで、定価より安い価格で買い物ができるのだ。
メイド・イン・ジャパンからチェックド・イン・ジャパン
さらに日本における中古ブランド市場の特徴として、海外に対して信用力があるということがあるそうだ。日本はブランド品がよく売れる国であり、中古ブランド市場と相場が安定している。さらに日本人の特徴として、モノを丁寧に使う傾向があるため、良質な状態の商品が多くある。「メイド・イン・ジャパン」ならぬ「チェックド・イン・ジャパン」で、「日本で鑑定された中古ブランド品」というのは、海外で評価が高いのだ。
こういった市場背景を受けて、アクティブソナーは、中国江蘇省最大手の国営貿易企業HIGHHOPEグループと資本提携を行い、スマートフォン向け中国版RECLO「RECLO.cn」を2016年10月5日にオープンした。「RECLO.cn」の商品ラインナップは日本版RECLOと在庫連携しており、日本から直送で中国のユーザーに商品を届ける。
CtoC市場は今後どう変化していくのか
市場が成長すれば、新たな課題が生まれ、それを解決する新たなサービスが生まれる。フリマアプリというと「メルカリ」のようなフリマアプリが注目されがちだが、そこではカバーできない範囲に対して、新たなサービスが台頭しつつある。「RECLO」もそういったスタンスだ。「様々なCtoCサービスがあることで、市場全体が盛り上がるのは良いことだと思います。その中で、タンスに眠っている商品が再利用されて、モノが循環するきっかけになれば良いなと思っています」。
CtoC市場は、新たな局面に入りつつあると言えるだろう。