ポンパレモールなど、モール出店の多面的展開で安定成長を続ける『おのみち発北前船の贈り物』
創業80余年の伝統をもつ尾道の浜問屋であるマルキン有限会社が、2004年からスタートさせた、海産物を中心に多様な食品を扱うECショップ『おのみち発北前船の贈り物』。楽天、Yahoo!を皮切りに、現在ではポンパレモールなどにも出店する多店舗展開戦略で成功をおさめている。ポンパレモールにおいては、一昨年、昨年と年間最高売上げを更新しているというEC躍進の秘訣について、該社の代表取締役社長 橋塚 良行氏にお話を伺った。
必ずしも順風満々ではなかったスタートアップ時期。商品の打ち出し方を変えて躍進の端緒をつかむ
2004年に、楽天、Yahoo!に同時出店したことを皮切りに、以降は、ぐるなび・アマゾン・ポンパレモール・Qoo10など、メジャーなショッピングモールを中心に多店舗展開する『おのみち発北前船の贈り物』は、現在では多くの固定客をつかみ、押しも押されもせぬ海産物中心のECショップとしてのポジションを確立している。しかし、決してスタート当初からECが好調だったわけではないと、橋塚氏は言う。
それでも、橋塚氏はECの可能性に見切りをつけることなく、地道にEC事業への取り組みを続けたという。
「ECの手応えを感じられるようになったのは、スタートから2年ほど経った2006年くらいからです。そのきっかけになったのが、広島産牡蠣の打ち出し方を変えたことでした。当社は問屋ですから、小売店などに卸すようなボリューム感のある商材が多く、冷凍の広島産牡蠣も、いわゆる業務用の1kgというパッケージでした。ですから、一般の家庭用としては量が多すぎるということで、あまり売れていませんでした。業務用として販売する商材ですから、当然、価格的にはとても魅力がありました。しかし、“そんなに買っても使いきれない”ということで敬遠されていたわけです。そこで、“使う分だけ解凍し、残りは冷凍で長期保存できる”という打ち出し方をしたところ、これが売れ出しました。当社はバラ凍結という方法で冷凍にしているので、使う際には、1個ずつ使えるというメリットを強調したのです。」
同じ商材でありながら、打ち出し方を変えたことで、広島産冷凍牡蠣はヒット商品になったのだという。元々が浜問屋であるということもあり、扱っている商品の品質自体は極めて高い。現に、『おのみち発北前船の贈り物』の冷凍牡蠣は生牡蠣に比べて、調理しても牡蠣の身自体が小さくなりにくく(生牡蠣は海水を多く含むため、調理すると水分が逃げて、小ぶりになってしまう)、購入者は「こんな大きな食べられるなんて!」と大変よろこんでくれるという。
「当時は、あまり競合もありませんでしたし、年間を通して牡蠣を販売しているのも当社ぐらいでしたから、非常にご好評をいただきました。」と橋塚氏は当時を振り返る。
こうした商品の打ち出し方の工夫に加えて、海産物に限定しない、多様な品揃えをしていくことで、ECでの売上げは着実に上向いていった。
リクルートグループであることの安心感・信頼感と、「じゃらん」などとの横断的利用により売上げに大きく貢献するポンパレモール
そんな『おのみち発北前船の贈り物』とポンパレモールの出合いは、2013年のことである。すでに展開している楽天、Yahoo!などが順調に推移する中、その販売力に目をつけたポンパレモールから出店の誘いがあったのだという。
「モールの良い点は、それぞれのモール自体に顧客がついているということです。各モールとも独自のポイント戦略なども展開していますから、ユーザー側も、自分の利用するモールに対してのロイヤリティが高い傾向がありますね。ですから、当社としても、より多くのモールなどに出店することは、顧客を拡大する上ではとてもメリットがあるわけです。せっかく誘っていただいたということもありますから、すぐに出店を決めました。」と橋塚氏は、多店舗展開による顧客拡大戦略に軸足を置いていることを示唆してくれた。
ポンパレモールに出店して、すでに5年ほどが経過している。
「いい時もあれば、悪い時もある、という意味では、すべてのモールが横並びですが、しかし、ここ最近の動きだけでいえば、ポンパレモールでは、一昨年、昨年と年間売上げの記録更新が続いており、非常に好調です。」と橋塚氏。
その好調要因を、橋塚氏は次のように分析する。
「ひとつには、リクルートブランドの強みがあると思っています。リクルートグループのモールだということで、ユーザーの安心感・信頼感が高いのだということです。また、じゃらんを使っているユーザーさんが、ポンパレモールに流入してきて、当社の商品のファンになっていただくということも多いという印象があります。各モールとも、独自のポイント戦略などで固定客を抱えているわけですが、ポンパレモールは、とりわけ「じゃらん」をはじめとする多面的なネット事業を展開していることで、ポイントを貯めやすい、使いやすいという特徴があり、そうしたリクルートさんの強みが相乗効果として発揮されて、結果的に当社の売上げアップにもつながっているということもあると思います。また、ポンパレモールでは、キャンペーンやセールの頻度が多く、“ポイントを使いやすい”シーンが多様ですから、そうしたキャンペーンやセールをうまく利用することで、売上げアップにつなげることができます。」
『おのみち発北前船の贈り物』では、商品の特性上、年末の時期には客単価が高くなるということだが、ポンパレモールでは歳末となる12月には、キャンペーンを強化しており、そうしたポンパレモールのキャンペーン戦略と『おのみち発北前船の贈り物』の商品特性がマッチしたことも、売上向上に寄与しているということもいえるかもしれない。
さらなる品揃えの強化と、顧客ニーズの的確な把握で、今後の成長を目指す『おのみち発北前船の贈り物』
『おのみち発北前船の贈り物』では、2011年に自社店舗も開設しているが、売上げ構成的には、モール系が圧倒的に比重が高いという。
現在では楽天やYahoo!に2号店を出店するなど、モール系での出店数が多いので、当然といえば当然なのかもしれない。
しかし一方で、『おのみち発北前船の贈り物』がECに参入した当時に比べて、現在では競合も増えている。そうした環境下で、今後の成長をどのように目指すのか、橋塚氏に聞いてみた。
「今日での当社の強みは、ひとことでいうと“品揃えの豊富さ”です。当社はメーカーではないので、その分、お客様のニーズを的確に把握できれば、ニーズに合った商品を自在に品揃えに加えて強化することができます。品揃えを強化すると、その新しい商品に魅力を感じてくださる新しいお客様が増えていきます。
お客様のニーズは多様で、“おいしいものを食べたい”というニーズもあれば、“健康につながるものを食べたい”というニーズもあります。そうした多様なニーズのひとつひとつに丁寧に応えていくことが、今後のさらなる成長に欠かせないポイントだと考えています。」と橋塚氏は言う。
『おのみち発北前船の贈り物』のように、商品力に優れたECショップなら、一定ボリュームのユーザーを抱えているモールの活用は、成功への近道だといえるかもしれない。