EC事業者に必要なのは「俯瞰的に見れる存在」元iProspect的場氏が仕掛けるEC事業者向けデジタルマーケティング

利根川 舞

シンクリンク株式会社 代表取締役社長 的場啓年氏 シンクリンク株式会社 代表取締役社長 的場啓年氏

「EC事業者は今、足元を固める時。そのためには数字と戦略を俯瞰的に見るべきです。」そう語るのは10月にアイプロスペクト・ジャパン株式会社(以下、iProspect)から独立し、EC事業者向けに特化しデジタルエージェンシー シンクリンク株式会社(以下、シンクリンク)を設立した的場 啓年氏だ。

なぜECに事業を特化させたのか。そしてEC事業者に必要な”俯瞰的に数字と戦略を見れる存在”について、話を伺った。

ECの現場へ舞い戻る

iProspect時代にもECに限らずデジタルマーケティングを手がけてきた的場氏であるが、なぜECに特化するという選択をしたのだろうか。以前の取材でも「今後もEC事業に携わる仕事をずっと続けていきたい」と話をしていたが、的場氏は次のように語る。

「これまで、飲食事業やECをやったりしましたが、ECがきっかけで電通グループに入りました。結果として今は広告ビジネスをやっていますが、それもECが切り開いてくれた。ECにご縁がある人生だと感じることもありECに関わる事業をやっていきたいなと考えていました。

独立は2年前くらいから徐々にイメージしていました。理由としてはいろいろあります。まず一つとして前職のCCO(チーフクライアントオフィサー)という役割ですと、第一線でEC事業者様や他のクライアントさんとお会いする機会が減り、デジタルがすごい速度で進化している中で現場にいないとわからない感覚を得る場が減ってしまいました。また、エージェンシーの利益構造やビジネスモデルに対しても今後、このままだと厳しいのではないかとも感じていました。そこで自分の理想としていることを積極的にやっていきたいと思ったんです。」と独立の背景を語る的場氏。

「EC事業者様って大手から中小企業まで幅広くいらっしゃる中で、広告予算もあまり無かったり、皆さんがエージェンシーやコンサルに依頼してデジタルマーケティングを行えているかといえば、そうではありません。周りに教えてくれる人もいないし、条件が合わず請け負ってくれる代理店もいない。そうしたEC事業者様に対して、私にできる限りの最高のデジタルマーケティングをサービスとして提供していくというミッションを持っています。デジタルって領域が広くて、何がやれるの?と問われると、経験上、何でもできちゃいますって回答になりますが、、自分の思いとやっていきたいことを考えるとやはりEC事業者に特化していきたいと思っています。」

同期するという意味の”シンク”、そして繋がるという意味の”リンク”を組み合わせ、まさに一蓮托生でEC事業者とビジネスをしていきたいという思いが込められたシンクリンクはiProspect同様、デジタルマーケティング全般を取り扱う。

「サーチ広告やディスプレイ広告などもお手伝いしましたが、広告だけで売上を上げるのには限界があるんです。そこを戦略でカバーしつつ、ペイドメディアで何ができるのか、オウンドメディアを使ってどのようにコンバージョンさせていくのかというところまで、お手伝いできると思います。例えばそれが接客ツールの選定や運用、レビューエンジンの選定運用、CRMの構築であったり、もちろんAmazonに出店されている方であればサードパーティーコマースの戦略と運用までもお手伝いできると思います。」

中小企業にもマーケティングパートナーを

中小企業にもマーケティングパートナーを

戦略からCRMまで、EC事業を成長させるために幅広い支援を行うシンクリンクではあるが、そもそも売上が上がらない原因は売上数字や戦略を俯瞰的に見る存在がいないことだと的場氏は指摘する。

「今、数字の見方や戦略が部署によって統合されていない企業さんが非常に多いんです。勿論、EC事業の担当者さんはデジタルのエキスパートではあるのですが、中にはクリエイティブに多くの知見を持つ人、マス広告に知見を持つ人など、それぞれの得意分野が細分化されていると思います。そこが戦略的・数値的に統合出来ないのが、売上が上がりにくい一つの要因だと考えています。

社内だけなく、広告代理店に依頼した場合でも、です。極端な話、広告代理店は自分たちが運用している広告の管理画面から売上を出し、EC事業者はGoogleアナリティクスで売上を見ている。その時点で乖離が生まれているわけですね。ですから、まずは足元の数値を把握して、デジタルマーケティングをどうやっていくか戦略を立てることが絶対に必要だと思います。EC事業全体を俯瞰的に捉えられる人がいれば、もう少し新しいことにチャレンジできるし、数値と戦略の整合性もとれるのではないでしょうか。」

中小規模のEC事業者では、目の前の売上を立てるのに精一杯で戦略を見直すどころか、戦略を立てることすら難しく、行き当たりばったりな施策になってしまうことも少なくない。しかし、すでに日常業務で社内のリソースが足りておらず、堂々巡りになってしまうのではないだろうか。

「マーケティングパートナーがいないEC事業者様はたくさんいると思いますが、広告代理店に依頼しようにも利益構造が違うため、広告バジェットにはまらず、断られてしまうことも多いのです。そこで、私たちはレベニューシェアモデルでのサービス提供をしています。

自分が会社をやるとなった時に、周りから『成果報酬でやるんですか?』ってよく言われました。しかし、アフィリエイトモデルのような成果報酬とレベニューシェアは全然違うんです。成果報酬は1件獲得したらいくら、みたいな個別施策の成果に対する報酬ですが、私たちのレベニューシェアモデルというのは、本当に売上のシェアをしてくださいっていうモデルなんですね。レベニューシェアはもっと包括的に取り組みができるような意味合いになっています。だからこそ、いろんな相談を受けることができるんです。皆さんが儲かったら私も儲かるわけですから、積極的に関与しつつ、時間であったりナレッジの部分をカバーしていけるんじゃないかなとおもいます。」

シンクリンクが提唱するレベニューシェアモデル

「EC事業者の成長なくして私たちの成長はない」

設立から2ヶ月近くになるが、今後はどのような未来を見据えているのだろうか。

「設立から約2ヶ月ですが、おかげさまで順調にビジネス自体は進んでいて、今ちょうど雇用を考えているタイミングです。もちろん、雇用も誰でもいいとは思っていなくて、EC事業に対しての熱い思いであったりとか、自身でEC事業を経験していたり、逆に広告サイドでEC事業者さんとお付き合いをしていたような人たちが増えてくれたらいいなと思っています。

”EC事業者のパートナー”とはっきり言っている以上はペイド広告であろうがオウンドメディアであろうがCRMであろうが、すべてを包括して提供していきたいと思っていますが、もちろん部分的に切り分けての提供も可能です、企業の成長なくして私たちの成長はないと思っていますから必要があれば姿かたちを変えサービスを提供します。」

裾野の広いEC業界において、デジタルマーケティングが実施できている企業は少なくないが、これから出会うであろうパートナーたちといかなる未来を切り開いて行くのか、今後の行く末を見守りたい。


記者プロフィール

利根川 舞

ECのミカタ 副編集長

ロックが好きで週末はライブハウスやフェス会場に出現します。
一番好きなバンドはACIDMAN、一番好きなフェスは京都大作戦。

ECを活用した地方創生に注目しています!
EC業界を発展させることをミッションに、様々な情報を発信していきます。

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