店舗に寄り添う為にEC始めました!健康食品・サプリメントOEMヨネキチの挑戦
健康食品・サプリメントなどを中心としたOEM受託製造で、30年近い実績をもつ株式会社ヨネキチ(以下、ヨネキチ)は、このほど独自商品を開発し、EC事業をスタートさせた。新たな収益事業としてECに進出したわけではなく、あくまでもOEM受託製造ビジネスにおいて、クライアント企業に対する、よりハイタッチなサービスを提供するための知見・ノウハウの蓄積が目的だという。ヨネキチでマーケティングを担当する宮下・三上両氏にお話を伺った。
期待を超える“良い商品作り”は当たり前、という姿勢でOEM受託製造を続ける『ヨネキチ』
『ヨネキチ』は、健康食品をはじめ、多種多様な商品のOEM受託製造事業で右肩上がりに業績を伸ばしており、この分野では30年に近いキャリアをもっている。
「当社では、“より良い商品作り”ということにこだわった商品の企画・開発に取り組んでいます。一見問題なさそうな成分であっても、エンドユーザーにとって良くない結果をもたらす危険性があるような成分は徹底的に排除するなど、その姿勢は一貫しています。」と宮下氏は言う。
たとえば、人工甘味料などは商品の味を良くする上では使い勝手のよいものではあるが、長く摂取し続けることを不安に感じる消費者も少なくない。そうした場合『ヨネキチ』では、人工甘味料を使わずに、おいしさも損なわないような工夫を凝らすという。体に良い成分を駆使して、味も期待以上のものを具現化する、そこに『ヨネキチ』の真骨頂がある。
「30年近くも事業を続けてきた中で、多種多様な素材・成分を知り尽くしています。ですから、どんな素材・成分をどのように配合すれば、どんな商品を創れるのかということについては豊富な知見・ノウハウを蓄積しています。
また、当社は自社工場を持たず、製品形状などによって外部の協力工場で生産します。ですから、グミでも青汁でも、ソフトカプセルもハードカプセルも、クライアント様のご要望に応じて、最適な製造ラインをセレクトすることができるのです。」と宮下氏が言う通り、ファブレスであることを強みとした機動性の高い対応力がヨネキチの強みになっている。
“良い商品を作る”だけでは顧客満足を得られないEC隆盛時代への挑戦
OEM商品の企画・開発・製造には大きな優位性を持つが、最近では、“良い商品を作る”だけでは、真の顧客満足は得られないと考えるようになってきているという。
「通信販売などにおいてはメディアが多様化しました。かつてカタログ通販は、新聞・雑誌の広告を媒体としていましたが、今ではTV通販というスタイルも浸透しました。さらにインターネットの普及に伴ってECという新しい販売チャネルが登場するなど、事業環境が大きく変革してきています。
販売というシーンに限らず、販売促進という部分についても、SNSが社会に浸透したことで、そのあり様が変化してきました。商品をアピールする上でも、SNS上での話題性や“映え”ということを意識したプロモーションを展開しないと、なかなかヒット商品につながらないという時代です。
ところが私たちには、そうした販売の最前線に関する知見・ノウハウがないために、販売シーンを想定した商品開発という視点を持てず、そこにクライアント企業様との意識の差のようなものを感じるようになってきていました。
そこで、“私たち自身が、「売り」の最前線を理解した上で、品質的により良い商品であることは当たり前として、さらにEC・SNS全盛時代にヒット商品になり得る商品作り”を目指すべきだということになったのです。それが「独自商品の開発・販売プロジェクト」です。
ウェブディレクター、デザイナー、広報などの業務経験者を含めて、各部署からプロジェクトメンバーを招集しました。そして、ターゲットの設定、商品開発、ECサイトの構築、SNSを活用したプロモーション展開など、EC事業に必要なあらゆるファンクションを内製で取り組みました。もちろん、商品開発においては、パッケージデザインも私たち自身が手掛けました。」と宮下氏。
「もっとも苦労したのが、SNS対応です。個人的にツイッターやラインなどのSNSは利用経験があったとしても、ビジネス前提でどんなことができるのかといった視点でSNSを使ったことはありませんから、まったくゼロベースでの取り組みでした。」と当時を振り返り、その苦労を三上氏が説明してくれた。
「何人かのプロジェクトメンバーが、ツイッター、インスタグラム、フェイスブックをはじめ、主だったSNSを使い倒しました。全員がすべてのSNSに取り組んだのです。誰かがツイッターだけ、別の誰かがインスタグラムだけ、という担当制では、それぞれのメリット・デメリットを正しく評価できないと思ったからです。
とにかく試行錯誤の連続でした。しかし、そうした努力の結果として、SNSごとの特性をある程度は把握でき、どんなコンテンツをどのような見せ方でアップすればフォロワーを増やせるか、といった知見・ノウハウが、少しずつですが、社内に蓄積し、企業アカウントとは別に2月上旬に開始した個人の施策としてのSNSアカウントのフォロワー総数は約15000人です」と三上氏は目を輝かせた。
独自のEC展開で培った知見・ノウハウの提供を通じて、ヒット商品創りをコンサルティング&トータルサポート
「設定したターゲットは、若者層でした。私たちが企画・開発する商品は健康食品系が多く、そのためクライアント企業様がターゲットにするのは高齢者層であめることが多いのですが、私たちとしては、あえて難しいターゲットへチャレンジすることで、より汎用性の高いノウハウを獲得できるだろうと考えました。」と宮下氏は言う。
構想自体は、2018年からあったが、実際にプロジェクトとして始動したのは、2019年に入ってからだという。
「実質的には、半年にも満たない期間で、EC事業をローンチしたことになります。プロジェクトメンバー全員が通常業務に加えて作業することになりましたが、とにかく自分たち自身が経験することが何よりも大事だったので、ECサイト構築のコーディング作業のような極めて専門性の高い部分は外部に委託しましたが、それ以外はほぼ内製です。苦労はしましたが、得るものも大きかったですね。」と宮下氏は顔を綻ばせた。
こうした独自のEC事業を展開したことによって、『ヨネキチ』として体得できたものは大きいという。
「ひとつは、クライアント企業様と同じ立場に立って、物事を見られるようになったことです。単に“良い商品を作る”だけではなく、“その商品の良さをどうターゲットに伝えるか”という視点も重要で、その視点をクライアント企業様と共有できるようになったことは大きいですね。
また、私たちが販売者としての“生みの苦しみ”を経験しましたから、その経験を生かして、クライアント企業様に対して、先回りして“生みの苦労を少なくする”ための提案ができるようになりました。
さらに、カタログやポスター、サイトのランディングページなどのデザインやコンテンツをどうすれば、商品の魅力を的確に伝えられるか、ということについても、私たちなりのノウハウが蓄積しました。
このように、もの作りだけではない、幅広い知見・ノウハウを体験的に修得できたので、今後は、それらを積極的にクライアント企業様にご提供していきたいと思っています。」と宮下氏は胸を張った。
『ヨネキチ』としては、あくまでもOEM受託製造が事業の中心であり、ECビジネスを本業にするつもりはないという。しかし独自にEC事業へ取り組むことによって、OEMの クライアント企業に対して、プラスアルファの提案が可能になった。
『ヨネキチ』は、“良い商品を作る”パートナー企業から、“EC隆盛時代のヒット商品を創る”パートナー企業に進化したといえるのかもしれない。