ZOZOが語る靴のEC化への可能性

西村 勇哉

23123_thumbnail_zozotop_thumbnail.jpg 株式会社ZOZO MSP事業推進本部 本部長 常井 康寛氏

株式会社ZOZOが発表した新サービス「ZOZOMAT」。スマホとZOZOMATがあれば足のサイズをミリ単位で計測できる画期的なサービスだ。靴は衣服と比べてもサイズの問題がシビアでありZOZOTOWN全体の売上から見ても10%ほどに留まっている。

サービスローンチまでの経緯と今後の展開を株式会社ZOZO MSP事業推進本部 本部長の常井氏にお伺いした。

ーーーZOZOMATローンチには様々な工夫があったと聞いています。

常井:ZOZOMATは、ZOZOSUIT・PB(プライベートブランド)での経験を活かして開発を行っており、計測の利便性にも配慮しております。例えばZOZOSUITの延長で靴下のような形状の計測ツールとした場合、複数サイズの用意と都度配送が必要になります。

しかしZOZOMATは1枚あれば、老若男女問わず足の計測が可能です。さらには、新聞広告やPDFファイルを家でプリントし計測することも将来的には可能な仕様となっています。生産も非常に簡単なのでZOZOSUITの時のように生産遅延が発生し、配送が遅れるといった心配もありません。

また、PBでは、ZOZOSUITによるサイズ計測から商品開発、多サイズ生産まですべてを自社で対応したことで企画力の無さを実感したこともあり、ZOZOMATに関連する靴事業では計測データを活用して、ブランド様と、商品開発を共同で進めていく予定です。

具体的なビジネスモデルはまだ思案中ですが、自分の足のサイズに合った靴を、試着することなく、ECで安心して購入できるサービスを提供したいと考えています。またこの秋から本格的に展開するMSP(マルチサイズプラットフォーム)事業※での、ブランド様との商品開発も見据えています。

ZOZOTOWN内のシューズカテゴリーにも注力する方針ですので、これを機に新たなブランド様にもぜひご出店いただけないかと考えております。それに合わせて、靴の販売方法も強化し、靴に合わせたサイトデザインやサービスを展開できないかと考えているところです。

※MSP(マルチサイズプラットフォーム)事業
「憧れのブランドを理想のサイズで着れる」をコンセプトに、ブランドと協働してSMLなどの既存のサイズ展開をアイテムの特性に合わせて20~50サイズ程度のサイズ数で展開し、販売を行うサービス。

ーーーあと気になるのは計測精度だと思います。実際にどれくらい正確な精度でサイズ計測が可能なのでしょうか。

常井:今現在、足の3Dデータを計測するレーザースキャナーとZOZOMAT、それぞれで計測した3Dデータを重ね合わせた結果、平均で1ミリ程度の誤差です。今後も精度向上のため開発は進めていきますが、現段階でも高精度のデータが抽出できると感じています。

実際に使ってみてください!簡単に計測ができるので、すぐ終わりますよ。

ーーー待ってました!ありがとうございます!

常井:使い方は非常にシンプルです。

ZOZOMATの緑色の部分に足を乗せ、音声ガイドの通りに6方向から足の撮影を行います。

左右それぞれの計測が終わったら、足の3Dサイズの計測結果がアプリに表示されます。「足長」や「足幅」、「足囲」などの複数箇所のサイズをミリ単位で計測され、アプリ内で3Dデータを360度ご確認いただけます。

 実際に筆者が計測した足のデータ

ーーー2分もかからずにここまでのデータが出るんですね。計測方法もシンプルでわかりやすいです。

常井:ZOZOSUITは実際に着用する必要があり、そもそも計測のハードルが高かったと思います。

その反省も活かし、より多くの人に計測していただけるようにZOZOMATは誰でもどこでも計測ができるような手軽さを意識して開発しました。

ーーー確かにスマホとZOZOMATだけで計測できるのはいいですね。これくらい簡単で場所も選ばないのであれば、例えばオフィス、展示会などでお試し会もできそうですね。

常井:足であれば、人前で計測することへの抵抗が少ない方も多いのではないでしょうか。オープンな場所でも計測できることで、より多くの方にZOZOMATを使って足を計測していただきたいと思います。

ーーーそもそも、足の計測はいつ頃から開発に着手していたのでしょうか。

常井:ZOZOSUITの開発とほぼ同じ頃からです。

ZOZOSUITもZOZOMATも、サイズに関する課題を解決し、安心してECで購入できる環境をつくりあげたいといった共通のコンセプトがあります。体型を計測することを目的としたZOZOSUITのみならず、足を計測できる計測ツールの開発にも同時期から着手しておりました。

ちなみに靴には独自のサイズに関する悩みがあると思っております。足の長さだけではなく、足の幅や甲の高さによって快適な履き心地が変わってくるので、ECで購入する際の「サイズ選びの不安」や「試着の必要性」などの課題が衣服に比べて多いと感じています。

実際にお客様にアンケートさせていただいた結果からみても、靴の方がECで購入する際のハードルが高いことが分かりました。

ーーー確かに服は自分自身のサイズをS/M/Lなどで把握をしている人は多いと思いますが、靴に関しては試着を繰り返して、自身に合う商品を探すことが多いです。ブランドや素材によって自分に合うサイズが変わってくることを改めて考えると、ECで靴を購入するハードルが高めなのがわかりますね。

常井:はい。ハードルが高い分、靴のサイズに関する課題を解決することで、ECでの靴の販売も大きな成長の余地があると考えております。

また、課題を解決できた場合、ECでは数多くの靴の中から、一人ひとりの足に合う靴を横断的におすすめすることも可能ですので相性も良いと思います。さらに将来的には、足のサイズの統計データに基づいた適正在庫数を販売できる仕組みを構築することで、お客様、ブランド様にとってより魅力的なサービス展開を実現したいと考えております。

実際、ZOZOMATの新しい取り組みについてお話をさせていただいたところ、とても好意的に考えて下さるブランド様もいらっしゃいます。また、お客様からの反応も良く、ZOZOMATの予約受付の初日には20万件以上の予約をいただいております。

ーーーZOZOMATの発表をした後に意外な業種から連絡もあったとお聞きしています。

常井:そうですね。ファッション以外にも理学療法士など医学系の方々からもご連絡をいただいています。オープンイノベーションという形で、足のサイズ計測が靴の購入以外にも役に立つのであれば、将来的に一緒にお取り組みさせていただきたいと考えています。

ーーーまだZOZOMATにも課題は多い?

そうですね。ZOZOMATで足を計測していただいたあとのサービス展開についても開発を進めております。

例えば、自分の足のサイズに合った靴をおすすめする機能であれば、普段ビジネスで利用する革靴は少し余裕があったほうがいい、スポーツで履く靴はしっかり足にフィットしていてほしいなど、お客様のニーズの抽出も今後行っていく必要があります。

あらゆる靴やお客様の好みを考えると乗り越えなければならない課題はありますが、着実に進めていきたいと考えております。

また、サービスをリリースできたとしても、ECで靴を購入すること自体に不安を感じられているお客様も多いと思いますので、そのような方々に安心して購入してもらえるようなサイトデザインやサービスを展開していく予定です。

ーーー今後、ZOZOMATが目指す目標はどこになるのでしょうか。

常井:お客様にとって快適で便利な靴選びが可能となる、新しい購買体験を提供したいと考えております。サイズの選択が難しく、靴を選ぶときにサイズで不安を感じていた方も、ZOZOMATで足を計測するだけで、簡単に自分の足に合う靴が見つけられるような時代にしていきたいです。

新たに靴をECで購入するお客様が増えれば、ZOZOTOWNにとってもブランド様にとっても新しい顧客接点を創出することができると思います。

ZOZOMATもブランド様と一緒にファッション業界を盛り上げていくことに一役買えないかと考えております。

ZOZOMATはただいま無料でご予約を受け付けておりますので、ご関心のある方は、特設ページからのお申込みをお待ちしております。


記者プロフィール

西村 勇哉

メディア運営事業部 編集チーム所属
見た目はヒョロイのに7歳から空手を習っています。
他にも水泳、サッカー、野球、弓道の経験有り。
たまにメルマガに登場しますが乃木坂46の話しかしません。
連絡先→nishimura@ecnomikata.co.jp

西村 勇哉 の執筆記事