サイトは構築から運用へ「Shopifyパートナーになることは、これからのECの時代を一緒に作ること」
流通総額が1,550億ドルを突破し、世界175カ国・100万を超える店舗が利用するマルチチャネルコマースプラットフォーム「Shopify」(※2020年5月時点)。直感的に使えるシンプルさや、分析機能などをそなえた管理画面の充実度から、Shopifyでネットショップを構築するEC事業者が急増している。
そんなShopifyのサービスをさらに充実させるのが「Shopify パートナープログラム(以下、パートナープログラム)」だ。パートナープログラムとは、企業や個人がShopifyを利用するEC事業者に向け、ストア構築やストア機能を拡張させるアプリケーションの開発などのソリューションを提供することで、収益が発生する仕組みのこと。
Shopifyでネットショップを構築することで、どんなメリットがあるのだろうか。そしてパートナープログラムに参加する魅力とは。Shopify Japan株式会社の徳満泰彰氏、コロニーインタラクティブ株式会社の田上知之氏と井上修志氏、株式会社BLUE STYLEの外谷洋二郎氏に話を伺った。
「これからは“サイト構築”よりも“運用サポート”の時代」Shopifyのパートナーになったワケ
ーーまずはじめに、Shopifyのパートナープログラムについて詳しく教えてください。
徳満氏:パートナープログラムは、企業や個人とShopifyがパートナーシップを結び、Shopifyを利用するEC事業者の課題を解決するためにスタートした制度です。どなたでも無料で申し込みいただけます。パートナーの提供するサービスは、ストア構築やアプリ開発、デザインプレート開発、アフィリエイト、マーケティングなどさまざま。
パートナーはEC事業者を支援することで、収益を得られるのが特徴です。例えば、ストア構築パートナーの場合は、クライアントの月額利用料の20%を毎月得られます。
Shopify Japanは2017年に設立されたばかりです。そのため、開発に関する情報がまだまだ少なく、時間や労力などの学習コストがかかってしまいます。そこで、パートナーのみなさまにすばやく豊富な実績を上げていただくため、学習プログラムを用意しています。
Shopifyで構築したサイトは100万以上あり、そのうち約25%はパートナーのサポートによって完成したもの(※2020年5月時点)。営業組織がないShopifyにとって、パートナーはとても重要な存在です。
ーー2社は、なぜパートナーになることにしたのでしょうか?
田上氏:弊社がパートナーになった理由は「越境ECをシームレスに実現するShopifyのようなプラットフォームのニーズは、今後さらに高まっていくだろう」と思ったからです。
2005年に設立した弊社は、もともとブランドサイトの構築や運用をしてきました。そのうちEC領域の比重が重くなり、ネットショップのデザインを担当することが増えてきたので、2018年に、デザインからサポートまでワンストップのECサイト構築・運営サービス「cagolab.(カゴラボ)」の提供をスタートしました。
事業をECにシフトさせていくなかで、EC事業者様から「海外進出を視野に入れている」「海外向けサイトはShopifyで構築している」といった話を聞くようになったのです。個人的に海外サイトから買い物をしたときにShopifyは使いやすいと感じたし、弊社がEC事業者様に提示できる選択肢が増えるのはメリットだと思い、パートナーになることを決めました。
井上氏:Shopifyに興味を持っていたメンバーが社内に複数人いたこともあり、パートナーとしての活動はスムーズに始められました。現在は、クライアントのニーズをヒアリングし、「Shopify」か「cagolab.」のどちらか相性が良いサービスでネットショップを構築しています。
外谷氏:弊社がパートナーになったのは「今後、サイト構築よりも運用に力を入れるEC事業者が増えるだろう」と感じたからです。
私がもともと「EC-CUBE」を使って輸入雑貨のショップを運営していたこともあり、弊社はEC-CUBEのエバンジェリストとしても活動しています。日々EC事業者様をサポートしながら、日本にD2Cブランドが増えるのを見るなかで「サイトを簡単に作り、その分、運用のほうを強化していきたい」というニーズが増えているとここ最近は感じています。商品の売り方までサポートし、EC事業者様とともにショップを育てていきたいと思うようになりました。
その点でShopifyは、サイトを簡単に構築できるうえ、運用部分の機能も豊富にそろっています。弊社は、Shopifyの日本法人が設立された翌年にパートナーとなり、現在は「Shopify Experts(※)」に認定していただきました。
過去に輸入雑貨のネットショップを運営していたこと、今は子供服のお下がりプラットフォーム「Lynks」を運営していることを活かし、デザインから制作、アプリ開発、運用まで、幅広くサポートしています。
(※Shopify Experts:一定数の実績を得たパートナーに対して付与される認定バッジのこと。日本だと30弱のパートナーが付与されている)
マニュアル要らずの直感的UI。Shopifyの管理画面は、もはやマーケティングツール
ーー2社ともこれからのニーズを見越し、パートナーになることを決められたのですね。そもそも、なぜShopifyはパートナープログラムを運用されているのでしょうか?
徳満氏:前提として、Shopifyはエコシステムとして存在するプラットフォームであり、「自分たちの成長よりも、起業家であるEC事業者やパートナーのみなさまが成長するべき」という考えを大切にしています。
この想いは、2004年に弊社代表がカナダでスノーボードブランドを立ち上げ販売する際に、個人が自分自身のオリジナルのブランドを販売するのに最適なシステムが無いことに気づき、個人でも商品販売が可能なシステムを開発して、2006年にShopifyをリリースした当初から変わらず継続されています。
そのため弊社は、パートナープログラムを通して、パートナーと共存することを重視しています。多種多様なAPIを公開し、パートナーのみなさまが、各国やクライアントに合ったサービスを開発できる環境作りをしてきた結果、現在ではパートナー全体のShopifyに関するビジネス規模のほうが、Shopify本体の収益を上回っています。
ーー「エコシステムとなり、共存していく」という文化から、パートナープログラムを運用されているのですね。2社は、実際に開発するなかで、Shopifyのどこに注目していますか?
井上氏:インフラの強さや料金の安さなど、いくつもありますが、一番は管理画面の機能の充実度ですね。もはやマーケティングツールです。
分析機能が標準装備されており、流入経路やCV率などの情報が管理画面に流れてきます。自然に情報が入ってくるので、分析に慣れていなくても「次からこう改善してみよう」と考える、きっかけになります。
こうしたShopifyの管理画面は、「いかに売れるネットショップを作るか」というゴールから逆算して作り込まれていると感じますね。EC事業者様に「これだけ機能がそろっているから、商品が売れないわけないですよ」と伝えても過言ではないでしょう。
外谷氏:私も管理画面だと思います。シンプルで使いやすいのに、運用するうえで欲しい情報が網羅されていて、痒いところに手が届く管理画面だと感じています。クライアントも、私たちからレクチャーする前に、サクサクと進められていました。
私自身が経験してきたのでよくわかるのですが、管理画面が使いにくいと、担当者の運用ストレスが蓄積してしまいます。「機能をカスタマイズする必要がない」「見やすくて直感的に操作できる」など、人のリソースを減らす管理画面は、これから重宝されていくでしょう。
徳満氏:ありがとうございます。実際、管理画面のシンプルさや使いやすさに驚かれる方が多いですね。
Shopifyは「Make commerce better for everyone」を掲げ、どんな人でもECを簡単にスタートさせられること、いわゆるコマースの民主化を目指しています。そのため、スマートフォンをマニュアルなどなしに利用するのと同じような感覚で、誰もが直感的に操作できるようにUI/UXのデザイン設計をしています。
“競合”ではなく“協業”。パートナー同士、横のつながりでビジネスを加速させる
ーー今回の取材で「『“自分たち”よりも“周りのみんな”とともに』という信念は、サービスのクオリティにもしっかり反映されている」と感じました。
外谷氏:その信念は、パートナーにも浸透している気がします。Facebookにパートナー同士のコミュニティがあり、そこで業界やShopifyに関する情報が頻繁に流されることは非常に多いです。
情報を流すことにより、多くのパートナーがShopifyについての理解を深められ、Shopify周りのサービスがさらに充実します。すると、最終的にはShopifyユーザーが増えていく。「パートナーはライバル」というよりも「パートナー同士で協力していこう」という意識が強いのです。
田上氏:確かに、パートナーには競合という感覚をあまり抱きません。他社の進め方を見るのは参考になるので、情報交換が活発に行われて助かっています。外資系企業に多い「広い世界でみんなで戦っていきましょう」というオープンイノベーションの文化が根付いていますね。
ーー最後に、パートナープログラムに参加して感じる、Shopifyの魅力を総括していただけたらと思います。
外谷氏:パートナーになることは、魅力しかないと思います。日々スピーディにイノベーションの波が流れるEC業界のなかでも、Shopifyは最先端の波。今Shopifyのパートナーになることは、これからのECの時代を一緒に作ることだと考えています。
今後は、運用が重視されるであろう未来にそなえ、多くの実績を作っておきたいですね。「今の行動が、未来のEC業界で戦っていける武器を作る」、私はそう信じています。
田上氏:「Shopifyでサイトを構築したい」というニーズが増えていますし、日本だけでなく世界でも、Shopifyは急速な勢いで広まっています。今後は、パートナーにならざるを得ない時代が来るのではないでしょうか。
私たちは、Shopifyを日本全国に広めるべく、地方発・伝統産業のD2Cブランドのネットショップを作ろうと動いています。地方の伝統産業が、Shopifyを通して日本全国、そして世界へと進出していくーー。こうした成功事例が生まれたら、地方のEC事業者もShopifyに注目するし、日本のEC市場自体を拡大することにもつながりますから。
徳満氏:弊社としても、地方のEC事業者や事業者を支援する方々とのパートナーシップを強化して、日本の伝統産業を世界に広めていきたいと思っています。ECによって個人をエンパワーメントし、世界に広めることができるのは、Shopifyだからこそ。日本の高品質な商品を求める世界中の人たちに向けて、日本の伝統産業を発信する手伝いができたらうれしいです。