ブランディングってどうやるの?メンズスキンケアブランド「LOGIC」立ち上げ事例に学ぶ

西村 勇哉

株式会社パーク 代表取締役 佐々木 智也氏

自社で新しいブランドを立ち上げる時、これといった実績もないし「何から手を付けていいのか、どう打ち出していけばいいのか」わからないこともしばしば。そんなお悩みに対しては、メンズスキンケアのD2Cブランド「LOGIC」を立ち上げた株式会社パークの事例が参考になる。

デジタル領域を中心としたブランディングやプロモーションを手がけるクリエイティブ・エージェンシーである同社が、なぜコスメブランドを作ったのか。そして、どのようにプロモーションを仕掛け、ブランド価値を高めているのか。株式会社パーク 代表取締役の佐々木 智也氏に話を伺った。

なぜクリエイター集団がメンズコスメを作ったのか?

――まずは株式会社パークの事業内容について教えてください。

2015年に創業した当社は、主にベンチャーやスタートアップの企業様向けにCIづくりのお手伝いをしたり、サービスや商品のブランディングなどを行っています。サービスの企画からクリエイティブ制作やプロモーションまで、幅広く対応しています。たとえばメーカー様の案件ですと、パッケージや商品デザインもしたうえで、販促物や広告物も担当させていただきます。

――そんなパークが、今回なぜコスメブランド「LOGIC」を立ち上げたのでしょうか。

先ほどお話しした事業が当社の軸ですが、プラスで何らかのシナジーを生み出せるような自社事業を立ち上げたいという想いが、創業当時からありました。これまでにもいくつかアイデアはありましたが、形になったのは今回が初めてです。

多くのクライアントワークを行っていくなかで、ブランディングやクリエイティブの専門家としての視点にプラスオンの視点をもちたいと思うようになりました。

もちろん担当する企業様や業界のことは勉強しますが、事業を共に成長させていくには、経営的なアプローチやリアルな事業者としての視座を持っていた方が強いと思ったのです。

「LOGIC」のような事業なら、これまで培ってきたデザインやコミュニケーションに関するナレッジを活かせそうだと考え、今回の形になりました。

――商材の策定はどのように行われたのでしょうか。

メンズコスメ市場で勝負しようというのは、何となく最初からありました。長期にわたって化粧品メーカー様とお付き合いさせていただいていて、業界の事情をある程度理解できていたこと。あとは自分が消費者としてメンズコスメを使おうとすると、女性向けコスメに比べて選択肢が少なくて 、まだ新しいことをやれる余地があると思ったことが理由です。

たくさんの人にヒアリングしたり、ベンチマークになりそうな商品を片っ端から使ってみたりと地道に調査をして、市場のニーズに当社が応えられそうかをシミュレーションしてみて、主要商品をスキンケアに決めました。

――次は商品開発ですね。

お付き合いのあった化粧品メーカー様からの紹介で、OEM先はスムーズに決まりました。当社のような新規参入者はなかなか受け入れてもらえないことが多いのですが、本業のクライアントワークで得てきた業界知識や人との関係性が武器になりました。柱となる事業を他にやっていて、キャッシュフローの土台があったのも大きいですね。

商品開発はOEM先にサンプルを作ってもらって、それに対して私がフィードバックして……の繰り返しです。これまでとは畑違いの仕事だったので、コミュニケーションには苦労しました。「香り? 触感? 使用感? コスメってどうやってフィードバックすればいいんだろう」と。感覚的なことを言っても、OEM先には伝わりませんので。

わからないから製造者に全部任せている企業様も多いと思いますが、私はそれはしたくありませんでした。私自身が消費者のターゲットに近かったということもあり、気になることは細かい部分まで全てつぶしていきました。

ブランドと商品を深く見つめ、共感する仕掛けを生み出す

――売り出す商品ができたら、次は販促です。男性の顔を泡が覆っているクリエイティブがすごく印象的です。

「LOGIC」のターゲット層は、仕事で忙しい日々を送るハードワーカーです。ブランド名も、面倒なスキンケアをスパッと完了させてくれる、そんなハードワーカーが追い求める合理性みたいなものをシンプルに訴求できる名前として選びました。

では、彼らに伝えるには、どう表現したらいいか。フランス語やらイタリア語やらの抽象的な名前で、有名人を起用してイメージアップを図るよりも、“商品自体がもたらしてくれるもの”をストレートにビジュアライズした方が効果的だと考えました。使ってもらいたい対象者が明確なので、自ずと形は固まっていきましたね。

あのクリエイティブはインパクトが欲しかったのがひとつと、この商品の気持ちよさが一瞬でわかるものを作りたい、というコンセプトで生まれました。モデルさんの色を出さずに、「あくまでも主役は中身です」「この商品はこう作用しますよ」というものを作りたかったんです。モデル事務所にも、キービジュアルで顔が思いっきり隠れますけどいいですか? とあらかじめお伝えしました。

――反響はいかがでしたか。

おかげさまで、たくさんの反響がありました。クラウドファンディングサイト「マクアケ」で先行販売をしていく時に、noteやTwitterで1ヵ月半ほどかけて「LOGIC」の情報を小出しにしていったのですが、一番反響をいただいたのが、あのビジュアルです。数千もの「いいね」とリツイートをいただきました。「どうやら新しいスキンケアブランドが出るらしいよ」という話は広まったと思います。

――やはりSNSは大事ですね。

我々のような新規事業の立場だと、もう逆にSNSしかないんじゃないかな 、というくらいです。軍資金が潤沢なら話は別ですが……。あまり費用をかけずにできる部分でいうと、SNSなどで自分たちの想いや気付きを素直に伝えた方が共感を得られると思います。お店でも企業でもそうですが、面白い配信をしているところは強いですね。

商品づくりで陥りがちな“自己満足”の罠

――実際に「LOGIC」のブランドを立ち上げてみて、本業のクライアントワークにも活かせる学びがありましたか。

事業を起こしてみて難しかったのは、「いかに自分の思い入れや思考を入り込ませないか」ということでした。ブランドにおける原体験や“why”の部分は、作り手の想いでもOKです。ただ、100%自分でコントロールできてしまう自社ブランドの場合、どうしても商品づくりに趣味・嗜好が入りやすいなと。当社はクライアントワークという特性上、かなりドライな思考を持っていると自負していますが、「相手にどう見てもらうか」「どう伝えるか」を考える時に、自分たちの好き嫌いがかなり邪魔になりました。

もうひとつは、「意思決定に時間をかけてはいけない」ということです。自社ブランドだと、こだわろうと思えばいくらでもこだわれます。ただ、実際にローンチされるまでは、それが受け入れられるかどうかはすべて仮説です。こだわった分だけコストがかかり、機会損失も生まれます。時間をかけて準備した商品やサービスが失敗した時のダメージは計り知れません。最初に決めたコアの部分さえブレなければ、プロダクトはまず市場に出してみて、反響が良くなかったら随時アップデートして、徐々に調整をしていくのがいいのではないでしょうか。

消費者=批評家へ。変化するブランドと顧客の関係性

――ブランドと消費者が直接コミュニケーションを取る機会も増えたと思います。EC市場が伸びている今、ブランドに対する消費者の意識に変化は見られますか。

良くも悪くも、消費者とブランドの距離は縮まっています。プラスの面でいうと私たちの想いをお客様が広めてくれるところですね。今回も知らず知らずのうちに「LOGIC」をおすすめしてくれる方が数多くいらっしゃいました。何が刺さって何がダメなのか、クリエイティブや商品を作るうえで、大いに参考になります。

消費者としての感想を述べる場だった口コミは、今ではさらに進化して、批評をするツールになってきています。コミュニケーションにおいて、消費者に対してより正直に、丁寧に考えていく必要があります。

――実店舗と違い、ECでは直接のコミュニケーションが難しいと思いますが、今後どのようにブランド訴求を行っていこうと考えていますか。

ブランドを作っていくうえで、ECだけで全てを完結するのは難しいと考えています。お客様とのタッチポイントはオンライン・オフラインを問わずどんどん作っていく予定です。ポップアップストアなど、実店舗で商品を体験いただく機会も用意していきたいですね。

また、商品をアップデートするため、お客様の声を集めるための施策にも取り組んでいきます。サンプルを集めた体験会を開催したり、いただいたお声を何らかの形でオープンにして、改善につなげていく企画を考えています。

LOGICのECサイト


記者プロフィール

西村 勇哉

メディア運営事業部 編集チーム所属
見た目はヒョロイのに7歳から空手を習っています。
他にも水泳、サッカー、野球、弓道の経験有り。
たまにメルマガに登場しますが乃木坂46の話しかしません。
連絡先→nishimura@ecnomikata.co.jp

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