食品特化ECカート導入で急成長!初年20万人利用「かわうそ市場」の成功要因とは?
コロナ禍の流通断絶で売り先を失った20万匹の養殖カンパチ。なんとか消費者に届けたい――。1次産業の流通変革を強いられた壮絶な状況で立ち上がった「高知かわうそ市場」は開設1年で 20 万人が利用する人気産直 EC サイトへ急成長を遂げた。直面した食品産直ECの課題や成功のポイントについて運営会社パンクチュアル社にお話を伺った。
コロナ禍で苦しむ事業者を救え
―「高知かわうそ市場」とはどのようなECサイトなのでしょうか。
高知県須崎市の生産者・メーカーの産品を直送でお届けする食品産直ECサイトです。特に人気なのは、水揚げされたばかりのブリやカンパチを生のままお届けする鮮魚商品。2020年4月のオープン以来、延べ20万人を超えるお客様にご利用いただいております。
―立ち上げの経緯を教えてください。
新型コロナウイルス感染症の拡大で飲食店やホテル、料亭などが休業に追い込まれ、これまで卸売りに頼っていた漁業の生産者たちは販路を失いました。地元の生産者たちを何とかしたい。そんなきっかけで、須崎市役所の支援を受けながら、ご当地キャラ「しんじょう君」のグッズ販売サイトを急遽作り替えて「高知かわうそ市場」はスタートしました。
―当時はコロナ第一波で日本中が不安な時期でしたよね。
確かに先が見通せない時期でした。だからこそ、地元事業者のために、一刻も早く販売サイトを立ち上げる必要がありました。サイトをオープンしたのはオファーを頂いてから約2週間後。細かいことは走りながら考えていこうと、生産者も自治体も僕らもとにかく必死でした。
日時指定ができずトラブルも
―事業をスタートした当初は、どのような課題がありましたか。
元々はご当地キャラのグッズ販売用サイトだったので、開設当時は無料のカートシステムを利用していました。徐々に販売量が増えてきたため、より高機能なカートシステムに切り替えたのですが、鮮魚を取り扱う関係で配送日時の指定ができない点に悩まされ、再度切り替え検討を余儀なくされました。
かわうそ市場では、受注した商品は生産者から直送で購入者に届けられる仕組みです。その際、生産者や商品ごとに出荷できる数量が異なったり、受注後の生産者への情報連携が煩雑で人為的ミスが生じたりすることも少なくありませんでした。
―どのような対応をされていたのですか。
当時はまず注文を受けた後、お客様に配送希望日を確認し、発送可能日と調整した上で実際の発送日を決めていました。ただこのやり方だと、商品発送までにかなりの時間を要してしまいますし、お客様と連絡が取れず希望日に商品が届けられないトラブルが発生することがよくありました。また、大量の注文が入った際に処理が追いつかず、発送が遅れることもありました。「詐欺だ」とクレームが入り、SNSでは炎上騒ぎが起きるなど、結果として多くのお客様にご迷惑をお掛けすることになってしまいました。
課題解決に「aishipGIFT」を導入
―こうしたネガティブな状況をどのように乗り越えたのですか。
使用していたカートシステムを、食品系産直ECサイトの運営に適したものに変更する判断をしました。さまざまなカートを比較した結果、ロックウェーブ様が提供する食品/ギフト特化機能が充実したECサイト構築クラウドシステム「aishipGIFT」が最も理想に近かったため、すぐに導入することになりました。
―aishipGIFTの導入で何がどう変わりましたか。
一番大きな変化は、受注時に配送日時指定が可能になったことです。商品ごとに、その日に出荷できる在庫や発送リードタイムが設定できるため、購入者が受取日を指定すると生産者には出荷日が自動で伝えられる仕組みで、以前のような煩雑なやりとりが不要になりました。日時指定ができないことによる批判も多かったので、そこが改善できたのは大きなポイントでした。
日ごとの出荷数量や配送希望日の厳密な管理、温度帯によって発送が異なる場合の送料計算、出荷管理など、食品産直ECサイト運営に欠かせない管理機能が充実していて非常に満足しています。
―システムの導入サポート面はいかがでしょうか。
食品系サイトの事例が多数あり、知見も豊富なので、操作のみならず活用についての細かなサポートを頂き助かっています。当初はシステムカスタマイズが必要かと思いましたが、うまくリードしていただき、標準機能で全て対応できました。また、産直ならではの機能的課題に親身に耳を傾け、新機能の検討をしていただけることも満足しています。さらにアクセスの集中が予想されるキャンペーンでは一時専用サーバーへの可変対応もでき、大規模アクセスも安心できました。取引にかかる雑務や人件費を減らすことができたので、総合的にコストも下がり、カートシステム変更は大成功でした。
地方に眠った“宝”を全国に発信
―生産者や事業者にポジティブな変化はありましたか。
これまで商品を卸すのが当たり前だった生産者が、「高知かわうそ市場」を通して消費者に直接商品を届ける喜びを感じられたのは大きな変化だと思います。養殖カンパチのブランド化にも成功しました。ホームページやTwitterに寄せられた「めちゃくちゃおいしい!」という消費者の声をお届けすると、涙を流して喜んでくれる漁業関係者も少なくありません。
―新しい取り組みはありますか。
これをきっかけに須崎市の野見漁港に、新たに加工場を作る話が進んでいます。実現すれば、目の前の海で水揚げされた魚を活け締めし、購入者が食べやすいようにカットしたり、味付けしたりして、鮮度を保ったまま全国の消費者にお届けできるようになるでしょう。
―今後の目標や展望について教えてください。
「高知かわうそ市場」が成り立っているのは、間違いなく生産者の努力があってこそ。おいしいけどPRが足りなくて、まだ知られていない商品は全国にたくさんあるはずです。当社はそういったものを発掘してネットで販売するお手伝いをしながら、地方活性化に貢献していきたいと思います。
今後は「aishipGIFT」にある「のし・ラッピング機能」や「定期購入機能」を活用し、産直の本格的なギフトや継続購入などの、新たなサービスにも挑戦したいと考えています。また、この成功フォーマットを利用して、他の地域での産直サイトの立ち上げも視野に入れています。