越境ECで成功するための、物流選びのポイントとは?
「海外販売をしているが、どの物流サービスが自社に合っているか分からない」「商品を安全に、確実に届けたい」「発送の手続きを効率化したい」など、越境ECの物流面に改善策を探している事業者は多いのではないだろうか。
世界220の国や地域に配送を行うフェデックス エクスプレス(以下、フェデックス)の営業部 マネージングディレクター 清澤正弘氏と、同社のサービスを活用して国内企業の越境ECをサポートする株式会社デジタルスタジオ(以下、デジタルスタジオ)の代表取締役 板橋憲生氏に取材し、越境ECで成功するために物流面で押さえたいコツや、海外展開に必要な準備などについて伺った。
国内企業の海外展開をサポートする、国際配送と販売のエキスパート
――まずは両社の事業概要を教えてください。
清澤氏 フェデックス エクスプレスはアメリカに本社がある国際航空貨物会社です。手の平に乗るような小さなものから設備機器など大きなものまで、さまざまな貨物を自社の物流ネットワークで1日平均約650万個配送しています。
板橋氏 デジタルスタジオは海外向けネットショップASP「Live Commerce」とそれを活用した販売プラットフォーム「Discovery Japan」の運営を通して、国内企業の越境EC事業をサポートしながら、自社でも越境EC販売を行っています。販売先は全世界200カ国、メインはアメリカ、ヨーロッパ諸国です。
自社に最適な物流を見極めるために、複数の業者を使う手も
――越境ECの商品発送において押さえるべきポイントは何でしょうか。
清澤氏 ポイントは3つあります。
1つめは、特に現在の国際輸送で重要なのですが、仕向け地に確実に送れるか、どのくらいの日数で届けられるのかを確認することです。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、過去には一部の国際物流サービスが停止しました。現在も業界全体で影響が残り、また最近ではロシア・ウクライナ関連の影響も出てきています。越境EC事業者の皆さんは常に最新の情報を参照するようにして下さい。
2つめは、料金、スピード、品質の観点から、自社商品に最適な物流サービスを選ぶことです。1社の物流企業を使うことで、世界中どこにでもベストな方法で送ることができるとは限りません。商品を送ろうとする仕向け地によって、物流会社の得手不得手があることがあり、実際に使ってみないとわからないことも多い。そこでおすすめなのが、複数の物流企業を併用し検討することです。この先コロナのような非常事態が起きたときのことを考えても、複数の物流企業と関係を持っておくことはリスク回避のメリットもあります。
3つめは、購入者のメリットを考えて物流会社を選ぶことです。国内配送と同様に、スマホで商品の配送状況を確認できたり、受け取り時間や方法を変更できたりする利便性の高い国際輸送サービスを選べば、顧客満足度は上がりリピート購入にもつながります。
輸送スピード、価格、品質のトータルでメリットが大きいフェデックス
――デジタルスタジオ様では、越境ECをどのようにサポートされているのでしょうか。
板橋氏 当社の「Live Commerce」では、海外販売に必要な物流、決済などのシステムを全て備えたECサイトを提供しています。事業者側は、感覚的に操作できる管理画面に商品の画像とテキストを登録すれば、簡単に越境ECをスタートし、運用やマーケティング活動を行うことが可能です。
今、海外で売れているのは、趣味関連の商品、例えば釣具、ギターやアンプなど、日本ですでに実績のある商品。これから海外展開するなら、日本で消費者の関心をつかみ、Amazonや楽天市場のレビュー、メルマガ購読者数、Facebookのファン数などを充実させておくとよいと思います。
販売先としては、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ヨーロッパ諸国などは右肩上がりで市場が伸びており、「Discovery Japan Mall」も利用者がここ1年半で10万人ほど増えています。この勢いはコロナ後も変わらないでしょう。
――フェデックス様のサービスを利用している理由をおしえてください。
板橋氏 新型コロナの影響が主な理由です。以前は海外配送といえばEMSという考えで利用していましたが、一時はサービスがストップしてしまいました。そこで調べてみると、EMSでアメリカまで1週間以上かけて届けていたものが、フェデックスだと翌日に届き、料金体系も地域によってはフェデックスのほうがEMSより安いケースもあると知り、目から鱗でした。
実際にフェデックスを使い始めて一番驚いたのは、商品が早く届けられるようになったことです。最大のマーケットであるアメリカに対して、例えば釣り具だとEMSで1週間〜10日かかっていたものが、フェデックスではお客様が水曜、木曜に購入すれば週末には受けとって、新しい釣具で釣りに行けるほど、速くお届けできるようになりました。東南アジア諸国だと、翌日の午後3時には届けられるのでお客様も驚くほどです。
また海外発送の際、通常はインボイスや送り状のラベルを1個1個手書きするか、物流会社のサイトに遷移して作成する必要があるのですが、フェデックスとシステム連携することで、「Live Commerce」のサイト上でこうした書類を作成できるようになりました。
出荷も窓口に並ぶ必要がなく、オンライン手続きで集荷に来ていただける点もありがたいですね。配送状況を見ていると、17時に集荷の場合、22時にはすでに成田空港を出ていたりするので、その速さに驚きます。
フェデックスの輸送オプションの「輸送準備サポートサービス」も利用しています。フェデックスに商品をまとめて送るだけで、出荷用の書類や運送状の作成代行、ケース梱包からの仕分け、海外発送に合わせた再梱包など、手間のかかる部分を代行してもらい本当に助かっています。
国内で送るときは簡易な梱包でも問題ありませんが、海外配送ではもっとしっかりとした梱包が必要になります。特に利用しはじめの頃は、釣具の出荷が1日200件とかなりの量があったのですが、そうした事情に合わせてしっかりサポートしていただいたのは心強かったですね。単価の安いものから高級品まで対応していただけるのもありがたいです。
海外配送というとEMSをイメージされる方が多いと思いますが、フェデックスの一連のサービスを使うことで、越境ECのスタートは格段にスムーズになると思います。最初は、国際輸送に必要な書類、例えばインボイスの作成ひとつとってもわからない点が多いと思いますし、在庫管理も含めて物流業務をトータルでアウトソースしたほうが結果的にコストパフォーマンスもよく、リスクも軽減できます。
安定したサービス提供、ITインフラの充実、大型荷物への対応も
――フェデックス様が、デジタルスタジオ様に協力できた要因はどんな点だったのでしょうか。
清澤氏 3つあります。1つは新型コロナの影響下にあっても、我々はサービスを継続できていることです。フェデックスは物流会社であり航空会社です。自社の貨物機、物流施設と配送車両で独自の物流ネットワークを築いています。この2年半の間それを上手く調整することで、影響を最小限に抑えて物流を動かし続けてきました。
2つめはITインフラが整っていることです。デジタルスタジオ様のサイトに、想定配送日や料金などの情報がリンクできるAPIが提供されており、見積もりや書類準備がオートメーションで完結できることも大きいと思います。
3つめは、デジタルスタジオ様の扱う売れ筋商品が大型であり、フェデックスの輸送の強みを活用いただける物品だったことです。たとえばギターなら梱包まで含めると20〜30kgにもなり、釣具は分解しても長い。そこで重さ、大きさ、長さの制限が少なく、料金面でもニーズに合った提供ができるフェデックスがお役に立てたと感じています。
今後も越境EC向け配送サービスを充実させ、市場の拡大に貢献したい
――今後の展望をお聞かせください。
板橋氏 自社で手がける「Discovery Japan」は、新規ユーザーの伸びと相関して各国の売り上げも非常に高い成長を見せているので、今後もそこに注力していきます。データサイエンスAIを活用したレコメンドなどの機能や、フェデックス様をはじめとする各種APIの最適化など、「Discovery Japan」でよい結果が出たものについては「Live Commerce」の既存のお客様にも提供し、引き続き越境ECの拡大に貢献していきたいですね。
清澤氏 今後も越境EC事業者のサポートに注力していきます。サービス面では、越境EC向けに新サービスのFedExインターナショナル・コネクト・プラス(FICP)を開始し、越境EC事業者が活用している様々な発送業務支援や管理システム等との連携も強化しています。
また、越境ECでは中小企業や地方に拠点がある企業も多いと思いますが、特に地方の事業者向けには、フェデックスをより使っていただきやすい価格帯になるような取り組みも進めています。
市場は世界的にも成長していますので、フェデックスでは昨年から貨物便を新ルートで運航したり増便したりして、越境EC事業者の輸送ニーズに合うよう、自社の物流ネットワークの調整を続けています。越境ECでの販売を検討している事業者や、物流に関する悩み事がある方は、ぜひご相談ください。