“ベルメゾン品質”を物流に 多様化した顧客満足度を満たす千趣会のワザ
「ベルメゾン」を運営する株式会社千趣会。カタログ通販のリーディングカンパニーである同社はそのノウハウを生かし、外部クライアントの物流業務を一手に引き受ける3PL事業を強化している。クライアントとの窓口になる法人事業部の井上智之部長と、物流パートナーとして現場作業を担う千趣ロジスコ株式会社の岡田正幸社長に、千趣会の3PL事業の特長や強みについて話を聞いた。
複雑化・多様化・高度化した荷主のニーズに応える
――まずは両社の事業概要と関係性について教えていただけますか。
井上 当社は「ベルメゾン」を展開するカタログおよびネット主体の通販企業です。わたしの所属する法人事業部では通販事業者向けに①フルフィルメント、②プロモーション、③商品開発・供給などのサービスを提供しています。ベルメゾンで培ったBtoC通販事業のノウハウを活かし、集客から業務支援まで一貫してサポートできることが特徴です。
岡田 千趣ロジスコは、千趣会グループの物流事業を担う会社です。栃木県鹿沼市と大阪市西淀川区の2ヵ所に物流センターを構え、自社商品の物流業務を行っていましたが、2020年1月からは外部からの物流委託にも対応する3PL事業を展開しています。
千趣会法人事業部が外部から受託したフルフィルメントサービスの依頼は基本的にすべて当社が引き受けており、近年はアパレルや化粧品、ギフトの取り扱いが増えています。
――ロジスティクス業界は「2024年問題」や「2025年問題」など大きな課題を抱えています。御社はこれらによって引き起こされる“倉庫クライシス”に対して、どのような対応をされていますか。
井上 労働時間の上限規制に関する2024年問題や、超高齢化社会の到来でもたらされる労働力不足に代表される2025年問題はこれから起こる問題ではなく、すでに現場で起きている問題です。例えば当社でも人材確保・維持のために人事制度や給与体系を見直したり、繁閑の差を埋めるために機械設備の導入を検討したりしています。
岡田 物流倉庫の現場でも、求められるサービスの質やレベルは年々高度化しています。ECだから包装は簡易的なものでよいということはなく、百貨店レベルのギフトラッピングを求められることも多々あります。荷主様のポリシーやこだわりに応えるため、倉庫業務は非常にノウハウが必要なビジネスに変わりつつあると感じます。
井上 荷主様のニーズが複雑化・多様化しているのは事実ですよね。求められるサービスにスピード感を持っていかに対応していくか――。これは当社だけではなく、物流倉庫業界全体の課題と言えるかもしれません。
多能工化で“ベルメゾン品質”の物流サービスを
――荷主の複雑なニーズに迅速に対応するため、御社ではどのような工夫をしているのですか。
岡田 当社ではスタッフひとりひとりがマルチスキルを発揮できるように“多能工化”を進めています。すべてのスタッフがピッキングや仕分け、梱包、発送業務などを同じ水準でできるようになれば業務が標準化され、より高いレベルでサービスを提供できるようになるためです。
具体的には2週間ごとにジョブローテーションしながら、OJTで業務内容を学んでもらいます。一時的に生産性が落ちることもありますが、中長期的な視点で見ればこれがもっとも効率的なやり方だと思います。
井上 お客様の中には1社で9ブランドを展開し、ブランドごとに包装の仕様やリボンのかけ方に細かい指定のある事業者様もいらっしゃいます。このようなご要望に対してすべて機械でシステマチックに対応するのは難しいですし、ブランドごとに専任の担当者を配置するのも非現実的ですよね。
この場合、多能工化した従業員が複数いれば、限りある人的資源を繁閑や仕事の進捗に応じてアサインできます。属人化を防ぐという意味合いでも、すべての従業員が高いレベルで同じ業務ができるというのは大きなポイントかもしれません。
――その他、御社の強みや同業他社との差別化ポイントはありますか。
岡田 「ベルメゾン」を中心とした長年の通販事業で培った物流品質に関しては、3PL事業でも高くご評価いただいております。多様な商品を同時に扱える経験値の部分でも“ベルメゾン品質”が活かされています。東西2ヵ所に商品センターを設けていますが、これはBCP対策の観点からも喜んでいただいています。
井上 DMや商品同梱、カタログ同送、Web広告などの各種プロモーションや商品開発(OEM)、ベルメゾンの仕入ルートを活用した商品調達・供給など総合的な支援ができる点もご評価いただいております。
45年を超える「ベルメゾン」の歴史の中で、当社は常に事業者に伴走して参りました。クライアントと一緒に成長したいという想いは創業時から変わっておらず、事業者側の気持ちと物流倉庫側の気持ち双方を理解しながら事業を展開できるのが千趣会の強みです。
岡田 お客様のさまざまなご要望にお応えする中で、当社でも化粧品製造業許可や高度管理医療機器販売業の許可などを取得し、業務の幅を広げてきました。そういう意味では、当社もお客様に成長させていただいていると言えるかもしれませんね。
売上拡大に貢献する物流業務の外部委託
――目標や計画、今後の展望などがあれば教えてください。
岡田 人手不足や効率化への対策は今だけではなく、今後も継続的に取り組むべき業界全体の課題です。当社としても汎用性のある機械や業務改善につながる設備に関しては積極的に投資していく姿勢に変わりはありません。
ただし、当社ではピッキングや梱包などのすべての工程で自動化を目指しているわけではありません。重要なのは人と機械がうまく役割分担しながら、全体最適を図ること。機械に任せるところは機械に任せ、人手をかける部分はしっかりと人手をかけるべきでしょう。
人と機械の役割分担ができなければ、せっかくのロボティクスが無駄になってしまうので、こうしたことも考慮しながら設備投資をして将来に備えたいと思います。
――物流業務をアウトソーシングしたい、またはすでにアウトソーシングしているがうまくいっていない事業者に向けて、何かアドバイスやコメントをいただけますか。
岡田 商品の製造から物流まで、そのすべてを自社でまかなうとなると、コストとスタッフの負担が大きくなってしまいます。自社のリソースや人員を売上アップのための施策に集中させる必要があります。そのためにもぜひノウハウを活かしたご提案ができますので、ご相談お待ちしております。
井上 EC市場の拡大で、売上が急伸したメーカーも多いと思います。倉庫が手狭になったり、発送業務が煩雑化・複雑化したりしたことで、物流業務の外部委託をお考えの際は、ぜひ千趣会の法人事業部に一度ご相談ください。