どうする? 越境EC…AIインフルエンサーマーケティングを活用するには iKala Interactive Media Inc. CEOのセガ・チェン氏に聞く
新型コロナの規制・制限の緩和とともに外国人観光客も増え、東南アジアへの越境ECのニーズが再び高まりをみせている。だが越境ECを始めたものの東南アジアでの認知度を上げるのに苦労していたり、これから始めたいがどう展開していけばいいかわからず踏み出せないでいたりする事業者も多い。その解決法を、東南アジアで事業者向けのAIインフルエンサーマーケティングプラットフォーム「KOL Radar(ケーオーエルレーダー)」を提供している台湾のiKala(アイカラ) Interactive Media Inc. CEOのセガ・チェン氏に聞いた。
日本とは大きく違う、台湾のマーケティング事情
台湾のiKala Interactive Media Inc.は台湾最大のインフルエンサーマーケティングプラットフォーム「KOL Radar(ケーオーエルレーダー)」を提供する企業だ。現在、アジア6カ国・地域(台湾、日本、シンガポール、タイ、香港、マレーシア)、12の業界で事業を展開している。リアルタイムコンテンツデータは5億件以上、リスト内のインフルエンサー数は100万人以上、導入実績は4万ユーザー超え。独自の最先端AI技術を活用したデータに基づくキャスティングから交渉、効果測定など、インフルエンサーマーケティングに関わる全てのサポートを「ワンステップ」で提供しているのも特色だ。
iKala Interactive Media Inc.の日本法人であるiKala Japanのカントリーマネージャー、土屋隆司氏は東南アジア諸国、特に台湾は、マーケティング施策において日本と大きな違いがあると指摘する。
「日本では芸能人を使ったタレントマーケティングへの依存度が高く、大手ほどその傾向が強い。そのためインフルエンサーマーケティングへの信頼度がまだ低く、軽視されがち。しかし東南アジア、中でも台湾では、インフルエンサーマーケティングが主流であり、非常に効果が高いことも弊社の分析で数値化され実証されている。こうした実情を知らないまま越境ECを始めると、認知度を上げるのに苦労したり、無駄な時間やコストをかけてしまったりすることになりがちだ」(土屋氏)。
台湾の人々は、日本人の2倍もの時間、ネットを視聴している
台湾でインフルエンサーマーケティングが盛んな最大の理由が、台湾の人々のインターネット接続時間の長さ。Digital 2023 Taiwan統計によると、2022年の台湾人のインターネット使用時間は1日平均7時間14分(同年の世界のインターネット・SNSの1日平均使用時間6時間37分)。ちなみに日本のネット使用時間の平均は3時間45分なので、台湾の人々は日本人の2倍もの時間をネットの視聴に費やし、情報に触れていることになる。
こうした背景から、2019 ~2021年の台湾のインフルエンサーマーケティング広告費の成長率は136%に達しており、各産業においてインフルエンサーマーケティングへの支出額が年々増加している。EC通販サイトは支出額が最も多いという。
KOL Radarが独自のAI技術を活用し、台湾のFacebookとInstagramにおける2021~2022年の全てのPR投稿を集計したところ、過去2年間にPR投稿の総数は764万件に達していることがわかった。このように、台湾ではインフルエンサーのマーケティングへの活用が非常に活発であることがデータに顕れている。
「KOL Radarは、日本の越境EC事業者にこそ、使って欲しい」
iKala Interactive Media Inc.共同創設者兼 CEOのセガ・チェン氏も、越境ECにおける日本の事業者に対して同様の印象を抱いている。
「海外では日本製品は品質が高いという認識があり、非常に売りやすいので、インフルエンサーマーケティングの積極活用は有効だと思う。しかし日本の広告主はインフルエンサーマーケティングに対する理解がまだ低いと感じている」(セガ・チェン氏)
インフルエンサーマーケティングは、本当に効果があるのか、そのインフルエンサーの発信によって本当に売れたのかという判断指標がわからず、懸念を抱いているEC事業者は多いだろう。
「KOL RadarはAI分析でインフルエンサーの特徴や得意分野などをすべてデータ化しており、正確にわかりやすく提示できる。体験してもらえれば、インフルエンサーマーケティングに対する印象自体がかなり変わると思う」(セガ・チェン氏)
ChatGPTを搭載した新機能「AIインフルエンサー検索」を搭載
さらに心強いのが、iKala Japanが2023年4月25日にKOL Radarに、ChatGPTを搭載した新機能「AIインフルエンサー検索」を搭載した(中国語版・英語版は4月14日から、日本語版は4月21日から追加料金なしで提供開始)と発表したこと。これまでは単語での検索しかできなかったが、この機能ではテキストで検索できるように進化している。
KOL Radarにおけるマッチングのための最適な検索語の選定にはこれまで、知識や経験、合理的なロジックなどの工夫が必要だったが、今回のChatGPT搭載で、抽象的なフレーズでの検索が可能になった。例えば「25~35歳に人気の美容・スキンケアインフルエンサーを探して」「旅行好きでフォロワーが多く投稿頻度の高いインスタグラマーを提案して」といったテキストをそのまま入れるだけで、精度の高い情報が得られる。この解析力は、ChatGPTによるところが大きい。
「スマートフォンにも対応していて音声でも検索できるので、使っていて面白いという感想もいただいている。これにより、インフルエンサー検索に対するハードルがさらに下がると思う。今後はテキストさえ不要で、画像から検索できる機能も追加される予定だ」(セガ・チェン氏)
「日本のVTuberと組んで、広告を作ってみたい」
セガ・チェン氏に、日本での今後の展開を聞いた。
「私たちが提供しているサービスはさまざまな国で使えるので、日本企業がこれから越境ビジネスを始めたいと思った時に、最初に思い出してもらえるような存在になりたい。そして当社のサービスを多くの方々に使っていただきたい。また日本のVTuber(バーチャル ユーチューバー)はおそらく世界で一番大きいマーケットであり、とても成熟しているマーケットだと思っている。今、台湾のVTuberも弊社のインフルエンサーに登録する話も出ているので、日本のVTuberとも一緒に何かやれたらいいと持っている。例えば、日本のVTuberに台湾の広告に出てもらったり、東南アジアとかいろんなところで設定できたら面白いのでは」(セガ・チェン氏)。