越境EC、商品が売れたらぶつかる「物流」「関税」の壁! アンチダンピング対策をプロに任せる理由とは
越境ECに参入する日本の事業者が最初にぶつかる「壁」のひとつが関税問題。アンチダンピングや関税率などに関する知識の有無が、EC事業者の売上・利益を大きく左右することも少なくない。円安傾向で関心が高まる越境ECで、関税トラブルを未然に防ぐにはどうしたらいいのか――。国際ロジスティクスサービスのプロフェッショナルである株式会社4PX EXPRESS JAPANに、ポイントやノウハウについて話を聞いた。
1.越境ECへの参入、「何を売るか」決めたらまず物流コストを算定
2.コスト算定、改めて参入! ところが税関で問題が…なぜ?
3.関税率は知っておくべき? エンドユーザー(消費者)にとっての関税とは?
4.なぜ変わる? 関税率の鍵は「原産国」だった!
5.アンチダンピング、BOND、HSコード…必要な対策を講じよう
6.これから始める事業者が関税に関して注意すべきこと
1.越境ECへの参入、「何を売るか」決めたらまず物流コストを算定
越境ECを始めるにあたり、EC事業者が最初にするべきことは「何を」「どの国に」販売するかを決めること。そもそも取扱商品が輸出できるかどうかを確認するのはもちろん、取引相手国の法規制や商慣習なども事前に知っておきたい情報だ。
販売する商品が決まったら、まずは輸出入申告に必要な「HSコード(HS番号、輸出入統計品目番号、関税番号、税番などとも呼ばれる)」を調べる。HSコードとは、HS条約という「商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description and Coding System)に関する国際条約」の分類番号。世界税機構(WCO=World Customs Organization)が管理する国際貿易における世界共通の分類番号のことで、この番号から商品にかかる関税率などがわかる。同じ商品でも取引する国や取り扱い数量によって関税率が異なるため、関税率がわかると、おおよその物流コストが計算できるようになる。
自社商品にかかる関税率を把握し、物流コストを算定することは、越境ECへの参入を検討する際には必要不可欠だ。
2.コスト算定、改めて参入! ところが税関で問題が…なぜ?
海外に商品を送ったり、海外から商品を取り寄せたりする際は、税関に対して輸出入を申告して許可を得る必要がある。ところが越境ECの場合、この税関でトラブルが生じることが少なくない。
例えばBtoCでワインを輸入する場合、数本程度なら特に問題はないが、これが数百本単位になると税関に「BtoB取引」と見なされることがある。たとえ個人で消費するのだとしても、税関がBtoBと判断した以上はライセンスを求められるし、通関手続きがストップしてしまうこともあるので注意が必要だ。
3.関税率は知っておくべき? エンドユーザー(消費者)にとっての関税とは?
海外からの輸入品に対してかけられる税金が「関税」であり、外国から安い商品が入ってくると、国内商品が売れなくなってしまうため、安価な海外製品に税金をかけることで輸入品の価格を調整し、国内商品との均衡をはかることを目的としている。
自国産業を守るための施策なので事業者側でコントロールできるものではないが、越境ECにかかるコストを考える上では、関税の知識は必要になる。基本的に商品を輸入する側が支払う税金であるため、コストの一部としてとらえるのがいいだろう。
なお関税を荷受人(消費者)が負担するか、発送人(事業者)が負担するかは、発送の際選択可能ですが、販売国や輸送ルート次第では大きく変わる。中国を例にすると、BtoC通関(税金発送人負担可能)と郵便通関(EMS-税金を荷受人で負担する仕組み)があり、それぞれの通関方法の規程によってメリットとデメリットがある。一概にどちらが良いとは言い切れないのが実情だ。
更に、BtoC通関(税金発送人負担可能)のルートを使用の場合はオンラインショップのサーバーが中国国内にあり、なおかつ税関のシステムとAPI連携できていなければ商売ができないという。
そこでおすすめしたいのが、アリババの越境ECプラットフォーム「Tmall Global」を使うこと。細かい規程があるので出品するまでのハードルは高いが、梱包から身分証番号取得、関税建て替えの過程を含めたラストワンマイルまで、ワンストップで人口14億人を超える中国のマーケットに自社商品を届けることができるメリットがある。
4.なぜ変わる? 関税率の鍵は「原産国」だった!
関税はまた、貿易において重要な政策のひとつにもなっている。基本的に関税率は大きく変動するものではないが、相手国との間に貿易摩擦が生じると、今までかかっていなかった物品に関税がかけられたり、関税率が上がったりすることがある。もちろんその逆もあり得る。
米中貿易摩擦により、中国製商品に対する通関手続きが以前にも増して厳しくなっている状況の中、特に中国製および一部の中国製の部品で製造された商品はアンチダンピングの対象になる可能性が非常に高い。
世界情勢によって変動があった場合は、従来の税率で通関できなくなるため、コストの変動から売価の調整方向をいち早く掴み、売上の減少を防止することが課題になる。
詳細:財務省関税局「原産地規則ポータル」
https://www.customs.go.jp/roo/origin/gaiyou.htm
5.アンチダンピング、BOND、HSコード…必要な対策を講じよう
欧米の企業が日本市場に向けて商品を輸出しようとする場合、日本国内の商社やメーカーと代理店契約を結んで営業活動を行うのが一般的だ。 また、逆に日本企業が海外へ商品を輸出する際は、同様に現地企業と代理店契約を締結するか、現地法人などを設立して販売活動をする必要がある。
例えば海外Amazonで商品を販売する場合、Amazonや現地倉庫会社とは代理店契約が結べない。企業は自力でパートナー企業を探さなければならないので注意が必要だ。特に米国輸入時に重要なのは「税関ボンド(Customs Bond)」だ。これは掛け捨て保険のようなもので、不測の事態が生じた際にすべての税金の支払いを税関に保証するもの。中国製のアンチダンピング対象の商品だと高額のBondを求められることもあるので、事前に確認しておきたい。
日本出荷、日本対応でも原産国が中国の商品でアンチダンピングが該当していることがよくある、そして政策も変わることがよくあるため、対応のスピードの速さも非常に重要です。
6.これから始める事業者が関税に関して注意すべきこと
メーカーが自社商品を輸出する場合は、国内で売れ筋となっている商品の販売を検討したい。日本での売れ筋商品は海外でも高く評価される傾向にあるため、まずは販売予定国でのニーズや関税率を調べることが大切だ。
自社で商品を製造しない卸売業者や小売業者であれば、食品は避けた方がよい。アメリカだと「FDA(Food and Drug Administration)」の認証が必要だし、保管・輸送などにもさまざまな制約があるため、もし選択できるのであれば食品は避けるのが賢明だ。
また、輸送会社はよく事業者と約款のみを締結し、実際に通関トラブルに遭遇すると、リスク回避のため途中で業務を放棄するケースがあるので注意したい。4PXの顧客でも、通関会社が業務を途中で放棄したことで、それ以上の対応ができなくなった事例もある。日本では考えられないことだが、海外では稀なことではない。
日本の事業者は日本の輸送会社に依頼し、その輸送会社が現地の通関会社に委託することがほとんどだが、事業者側がその通関会社の実績や通関力を把握できていないことが、こうしたトラブルが生じる原因のひとつだ。
4PXに任せれば、越境ECでの関税対策・コスト管理がしやすくなる!
越境ECにおけるフルフィルメントサービスを提供する4PXの強みのひとつが、世界各国の注文や在庫状況、配送ステータスなどを管理画面で一元管理できるOMS(オーダーマネジメントシステム)だ。このOMSに商品情報や原産地を登録すれば、利用者は取引相手国別の関税率や規制の有無、取引上のルールなども事前に把握できる。
登録された情報をもとに、4PXが商品情報をまとめ、現地の通関業者に連絡を入れる。もし登録した商品がアンチダンピング対象の場合、一部を変更することでHSコードが変わり、アンチダンピング対象から外れるケースもある。船が出航してからでは変更できないため、こうした業務は国際物流の専門家に任せたい。