EC事業者もクラファンベースにファン育成・販路拡大へ~CAMPFIREとマクアケに聞いた【前編】

佐藤周平

新たに自社商品を開発したD2Cの事業者にとって、クラウドファンディングは検討したい販売チャネルのひとつ。リスクを抑えてエンゲージメントの高い顧客を生み出す――近年では単なる資金調達としての場ではない、クラウドファンディング特有のビジネスメリットに注目が集まっている。

今回はEC業界相関図2024で掲載した「クラウドファンディング」のサービスをより実践的に活用いただくため、トレンドやEC事業者が注意すべきポイントを全2回に分けて紹介する。相関図に掲載した株式会社CAMPFIREの嶋崎真太郎氏、株式会社マクアケの松岡宏治氏に話を聞いた。

「EC業界相関図2024」のダウンロードはこちら
https://ecnomikata.com/knowhow/42928/

多様化するクラウドファンディング市場

クラウドファンディングのサービスの在り方は時代とともに変化している。日本における業界の黎明期(2010年代初頭)は、「ファンディング」の文字通り「資金調達」が目的となるケースが多く見られた。スタートアップ企業や著名人がプラットフォームの活用法をPRするなどして、クラウドファンディングの認知度は高まっていったという。

東日本大震災の発生直後には、街や事業を立て直すための寄付を募るスタイルが盛んに。新型コロナウイルスの流行時にも寄付型のプロジェクトは増加した。「クラウドファンディング」といえば商品やサービスなどのリターンが発生しない「寄付型」、このイメージを持っている消費者も少なくない。こういった社会的背景や、購買行動の“コト消費”への変化などの後押しもあり、クラウドファンディングという手法は広く知られるようになり、流通額も大きく伸長した。

現在ではクラウドファンディングを運営するプラットフォーマーは細分化。幅広いジャンルのプロジェクトに対応した「CAMPFIRE」、購入型に特化した「Makuake」を筆頭に、エンターテインメントにジャンルを絞ったサービスなど、プロジェクト起案者や消費者のニーズに合わせて多くの選択肢がある。

「資金調達の場」から「マーケティングツール」へ

変化する市場に呼応するように、事業者がクラウドファンディングを活用する目的も変わってきている。「クラウドファンディング=資金調達」といった従来のイメージは薄れつつあり、現在では広義の「マーケティング」に活用する事業者が増えている。

「当社では自社のサービスを、新しいモノや体験を応援の気持ちを込めて購入できる『応援購入』と定義しています。この仕組みは、エンゲージメントの高いファンを獲得しながら、自社商品を受注生産・先行予約販売に近い形で販売できます。ただ『資金を集めたい』というよりは、『商品は作れるけど、商品をどうしたら知ってもらえるか』を課題に感じている事業者様は多いです」(株式会社マクアケ 松岡宏治氏)

マクアケ社が発表している調査資料によると、同社のサービス利用後に感じたビジネスメリットとして、「資金集め」よりも「テストマーケティング」「販売実績づくり」「認知獲得」などを挙げる声が多かったという(※1)。

画像元:株式会社マクアケ

「〇〇円集まらないと、そもそも事業を立ち上げられない」という事業者のシェアは減り、目標金額に達していなくても起案者に資金が渡される「All in方式」が市場では主流になっていることも、マーケティング目的での利用が増えている傾向の表れといえる。

完全成果報酬型のクラウドファンディングの仕組みを利用すれば、ショップを構築するコストや高額な広告費をかけることなく多くの消費者にリーチできて、自社の商品やサービスのストーリーを訴求できる。購入から商品発送までの期間が比較的長いため、在庫を抱える前に需要予測を立てることができる。

「あるブドウ農家さんの事例では、最初の2回はまったく支援が集まらなかったのですが、サービスの打ち出し方の改善を重ねて、3回目の掲載で目標金額を大きく超えるほどに成功しました」(株式会社CAMPFIRE 嶋崎真太郎氏)

実施前の費用の持ち出しがほぼなく、失敗しても気軽に再挑戦できる。低リスクで始められるクラウドファンディングの特性を活かした事例といえる。

※1 出典元:【アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」、 0次流通市場に関する実行者調査を実施】 およそ7割の実行者が 「Makuake」の実績を活用し、一般販売を実施。 実績活用による販路の拡大や、ファン獲得の場として利用(株式会社マクアケ)

コアなファンを生み、ビジネスを成長させるきっかけに

マーケティングにおけるクラウドファンディングの特筆すべき強みは、ファンの獲得から育成までがスムーズに行える点だ。

「近年では寄付や援助といった使い方ではなく、『マーケットに向き合っていく』ための使い方に変わってきているのを感じます。クラウドファンディングは端的にいうと、一つのプロジェクトを通じて小さなコミュニティが形成できる場所だと考えています。常に販売しているECサイトとは異なり、期間限定の交流ができる場所という考え方です」(CAMPFIRE 嶋崎氏)

クラウドファンディングのサイトでは、動画や画像、文章などで新商品の魅力をアピールするプロジェクトページが基本となる。商品の持つストーリーや機能をしっかりと伝えることでユーザーの共感を呼び、支援してもらうために、プロジェクトページの充実は欠かせない。

「いわゆるECモールに掲載されている情報と違い、事業者が新商品やサービスを出品する背景や思いを伝えられます。そのため、共感して購入に至るロイヤルティの高い顧客が集まりやすいことが特徴です。またリターン到着のタイミングで商品や一連の体験についてレビューを書くことができるため、事業者はそうした声をもとにプロジェクトをさらに実施するなど継続的なコミュニケーションを図ることでファンとの関係性が醸成しやすいです」(株式会社マクアケ 松岡氏)

それに加えて、「CAMPFIRE」や「Makuake」をはじめとするプラットフォームで特徴的なのが、事業者がレポートを投稿できる機能だ。事業者は支援してくれるユーザーに向けて、直近の活動内容を報告したり、最新のお知らせをリリースできるようになっている。さらに購入者側にもコメント投稿機能は付加されており、それがインタラクティブなコミュニケーションを生む要因になっている。

実際に数多くのプロジェクトにおいて、情報を発信したい事業者と、応援したい購入者の双方からのコメントが投稿されている。注文から発送までのサイクルが早い通常のECとは異なり、リターンの提供までに一定の時間がかかるクラウドファンディングならではのコミュニケーションといえる。

また近年では、クラウドファンディングでの販売をスポット的なもので終わらせないための仕組みも充実してきている。例えば「CAMPFIRE」はビックカメラやマツモトキヨシと、「Makuake」はヨドバシカメラと協業して、各サイトで掲載された商品をリアル店舗で販売するサービスを展開している。

単なる資金調達の手段から、顧客育成や販路開拓などで新規ビジネスを支援するプラットフォームへ。進化を続けるクラウドファンディングは、EC事業者にとって有用なチャネルといえるだろう。


記者プロフィール

佐藤周平

WEBディレクション、ライティング、デザインからバックオフィス業務までやってきた雑食系。自身でECショップも運営しており、スタンスはかなりEC担当者寄り。取材にかこつけて、トップランナーたちからトレンドやノウハウを吸収しようとしている。

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