「カラーミーショップ byGMOペパボ」が振り返るEC業界20年の変遷とこれからの事業者支援
2025年2月、全国50000店以上の事業者に選ばれている国内最大級のECサイト構築サービス「カラーミーショップ byGMOペパボ(以下、カラーミーショップ)」が20周年を迎えた。GMOペパボ株式会社でカラーミーショップ事業を統括するEC事業部 部長 寺井秀明氏と、ECグループ マネージャー 太田優氏に、同サービス20年の歩みと今後の展望について話を聞いた。
モバイル化、コロナ禍に対応してきた20年
――過去20年間におけるEC市場の変化と、その変化への対応についてお聞かせください。
GMOペパボ株式会社 執行役員兼EC事業部 部長 寺井秀明氏(以下、寺井) カラーミーショップはレンタルサーバーの派生サービスだったため、提供開始当時は個人の方がネットショップを始めやすくするためのEC構築サービスでした。この20年間でECでの買い物が一般的になったのと同時に、ECを生業にする事業者も増え、さらに、個人でECを運営していた方が事業成長し、法人へと成長する例が増え、現在は法人を中心としたサービスへと変化しています。
カラーミーショップにとって一つの節目になった出来事は2020年からのコロナ禍です。買い物や外食ができなくなった時にインフラに対するトラフィックが一気に増えました。全社でプライベートクラウド、パブリッククラウド、エンジニアを総動員してサーバーの構成や追加投資、開発、ホスティングを自社で行っていることでの技術シナジーを活かして高負荷を乗り越えました。
GMOペパボ株式会社 執行役員兼EC事業部 部長 寺井秀明氏
――長年サービスを提供されている中で、特に印象に残っている出来事やユーザーの声はありますか?
寺井 それこそ、コロナ禍のお話ではありますが、京都で店頭販売が売上の大部分を占める事業者様が観光客のステイホームで大きな打撃を受けました。しかし、カラーミーショップを使ってなんとか収益と雇用を守ることができたそうです。 が、逆に言えば「カラーミーショップがなければ営業が続けられなかった」ともおっしゃってました。そのお話は非常に印象的でしたね。
また、日常業務の中でもうれしくなる瞬間があります。たとえば、カラーミーショップのスタッフがユーザー様のポップアップイベントに遊びに行ったり、社内で気になる商品を購入して「これよかったよ」とおすすめし合ったり、時には共同購入が起こることもあります。こうした行動が自然と生まれているのは、「ファンを増やすこと」というGMOペパボの文化が、メンバーの中に根づいているからこそだと感じています。
自分たちが本気でやっているサービスの熱量が、ユーザー様に届いていると実感できる瞬間は、何よりもうれしいですね。カラーミーショップを利用している優れた店舗様を表彰する「カラーミーショップ大賞」の授賞式でもそうした想いが交差する場面に立ち会えるのが本当に感動的で、私はいつもステージ横で号泣しているんです(笑)。
前回の「カラーミーショップ大賞」授賞式の模様
――スマートフォンやSNSの普及にカラーミーショップや事業者はどう対応していますか?
寺井 スマートフォンを使用して買い物をする人が増えたことはEC業界にとって大きな変化だったと言えます。カラーミーショップではInstagram経由での購入ができる機能連携をしたり、YouTube連携を強化したりと、スマートフォン用の仕組みを整えています。実際にYouTubeチャンネルなどでコンテンツ発信にチャレンジする方は増えていて、商品紹介の動画や製造過程、ブランドムービーなどのコンテンツ発信でファンづくりをされています。
2014年にスマートフォン用管理アプリを構築し、APIを広く公開したことで自社の基幹システムと事業者様をつなぐ提案を幅広く行うことができました。APIの公開当時はiPhoneへの対応でしたが、振り返るとAPIの基盤を整備できたことが大きかったです。
――決済手段の多様化や越境ECの拡大など、新たなニーズにはどう対応してきたのでしょうか?
寺井 カラーミーショップでは、事業者様のニーズに応じて柔軟に機能を強化しています。たとえば決済手段の多様化に対応するために、決済手段を拡充したり、「Amazon Pay」を月額使用料無料で提供しています。
また、検索流入の獲得がますます難しくなっている現在、広告に頼らずに自社の魅力を伝える手段として「コンテンツ発信」の重要性が高まっています。特に中小規模のEC事業者にとって、ストーリー性や商品開発の背景などを伝えることでファンを育て、リピートにつなげる工夫が欠かせません。
そのため、SEOに強く、同一ドメインで情報発信ができる「WordPressオプション」も無償化しました。集客力を高めたい事業者様を、より実践的にサポートしています。
「お客様の小さな要望に応える」姿勢を大切に
――「カラーミーショップ大賞」など、ユーザーを支援する企画の狙いを教えてください。
GMOペパボ株式会社 EC事業部 ECグループ マネージャー 太田優氏(以下、太田) 日々ものづくりやEC運営を真摯に取り組まれている事業者様に、前向きな気持ちで運営を続けてもらえるようなきっかけや、他の事業者との交流の場を提供したいという想いがあり実施しています。
カラーミーショップを利用してくださっている事業者様の中には、ECの売上につながる独自の運営工夫や、集客・商品づくりへのこだわりを持って、日々挑戦を続けている方がたくさんいらっしゃいます。しかし、現場からは「運営は一人で担うことが多く、孤独を感じやすい」「頑張っても、なかなか表舞台で評価されることがない」といった声をよく聞きます。受賞ショップ様にお渡しする表彰の盾は、事業者様にとって大きな励みとして、店頭や事業所などに飾っていただいているのもよくお見かけします。
「カラーミーショップ大賞」表彰の盾
また、私たちが交流の場を設けている理由は2つあります。一つは、Webサービスであるカラーミーショップのスタッフと事業者様が、直接顔を合わせてつながる機会をつくること。もうひとつは、事業者様同士がつながり、情報交換や日々の悩みを共有、時には励まし合うような関係を築くきっかけをつくることです。また、そういったつながりから、染め物とアパレルメーカーのコラボなどが生まれたこともあります。オフラインでのイベントでは、地域や業種が近い方が自然と会話しやすいよう、席順や構成にも工夫を凝らし、コミュニケーションが生まれやすい場づくりを心がけています。
――GMOペパボ全体の文化はカラーミーショップの成長にどのように影響しているのでしょうか?
寺井 たとえば、カラーミーショップのカスタマーサポートの満足度が約93%という高い評価をいただいているのもGMOペパボの文化の表れだと思っています。「ファンを増やすこと」という文化が、パートナーの行動に自然と反映されていて、私から細かい指示を出すことはないのですが、パートナー一人ひとりが自主的に「お客様の小さな要望に応える」姿勢を大切にしています。こうした姿勢の積み重ねが、カラーミーショップをご利用くださるユーザー様の安心感や信頼につながっていると感じています。
GMOペパボ株式会社 EC事業部 ECグループ マネージャー 太田優氏
太田 社内では「このショップ素敵だよね」とか「この商品、実は買ってみたんだ」みたいな会話がよく見られますし、カラーミーショップのユーザー様がテレビに出演されたときには、社内のチャットツールで話題になったりもします。そんな風景が日常的に生まれるくらい、ユーザー様との距離が近い空気があります。カラーミーショップでは 「Carty(カーティ)」(※) というコミュニティイベントを開催していて事業者様と直接お話できる場をつくっています。「実際に話せてよかった」といった声をいただくことも多く、私たちにとっても励みになっています。
※「Colorme Shop Users Party」の略称で、ECサイトを運営する事業者や、制作会社・デザイナーなど、ECに携わるすべての方の交流・情報交換を目的としたコミュニティ
これからのECは効率的かつ戦略的な露出がポイントに
――中小規模のショップオーナーがECを成功させるためのポイントは何でしょうか?
太田 限られたリソースの中でも成果を出すために、生成AIなどのツールを活用して業務を効率化すること。さらに、ブランドや商品の背景にあるストーリーをしっかり届けることが重要です。価格だけで勝負するのではなく、共感を生む情報発信を通じてファンをつくっていく。これが今後のECを成功させる鍵になると考えています。
寺井 事業者様が効率良く付加価値を生み出せるよう、生成AIを活用した運営サポートや、物流まわりの強化を進めています。また、 InstagramやYouTube、TikTokなど消費者の情報収集チャネルが広がるなかで、ただ商品を並べるだけではなく、どの媒体にどう露出するかといった「戦略的な魅せ方」が求められています。商品との接点を自然に作り、商品購入までの流れをスムーズに設計することが、これからのECには欠かせません。
――これからECを始めようとする人に向けて、カラーミーショップを選ぶメリットを改めて教えてください。
太田 カラーミーショップは、EC運営に必要な機能を完備しながらも月額費用や決済手数料を低く抑えているので、個人事業主の方はもちろん、法人の方にとっても「この価格帯でここまでできるんだ」と驚かれることが多いです。サポート体制も充実していて、電話でのカスタマーサポートに加え、各店舗にECアドバイザーがついて、売上の伸び悩みなどに対して改善アドバイスを行う「プレミアムプラン」も提供しています。初めての方でも安心して運営できる体制が整っていることは、これからECにチャレンジする事業者の皆さまにとってメリットだと思っています。
――今後の展望をお聞かせください。
寺井 「モノを売り買いする」という人の営み自体は今後も大きくは変わらないと思います。EC化率も引き続き成長していくでしょう。コロナ禍で明らかになったように、ECはもはや実店舗と同じように、事業の柱になる存在です。だからこそ、カラーミーショップが事業者様の成長をこれからも支え続けられるよう、私たち自身も進化を続けていきます。
APIと中間システムを関連業者と連携して拡充したり、AIの力を借りて運営の効率化を図ったりできる高機能の提供などで、より便利で生産性高くショップ運営がしやすい環境を整えていきます。 一定規模の会社が本格的にECを運用する時に選ばれるサービスとしても、今まで以上に満足していただけるような仕組みを作っていきたいと考えております。