国内ECでは当たり前な 細やかなサービスが 越境ECでも必要
国内のEC需要が飽和になる前に、今後、需要の増加が見込まれる海外販路を開拓しようとするのはECの売上を上げたいショップにとっては自然な事だ。そこで手軽に海外へアプローチできる越境ECという話になるが、越境ECをビジョン先行で捉えてはいないだろうか?中国に現地法人も構える株式会社アップシェア代表取締役の稲井田顕章氏に越境ECに欠かせないものについて伺った。
海外でも日本でもECに必要な サービスやノウハウは変わらない
私たちは延べ日本国内数十社に対して中国を中心とした海外販路開拓のお手伝いをしてきましたが、海外ECで売上を上げる為に必要な事は実際日本でのビジネス手法とあまり変わりません。売れるサイト、売れるビジネスの条件とは『良い商材を販売し、売れる価格設定がされており、販売チャンネルに信頼性があり、豊富な商品情報量に加え遡求がうまく、且つ、カスタマーサポート体制がある』という国内ECでもショップ様が当たり前に注力されている部分だと思います。しかし、いざ越境となると販売戦略やマーケティングが不十分だったり、そもそも海外カスタマーをサポートする体制がないなど、越境する国の風習や習慣を理解しない販売手法でスタートしてしまっています。『越境ECは国内とは別』だと思い込み失敗している例がたくさんあるのです。
現地の流行りや商習慣を知る事が大切
現在、今後の重要市場として中国向けにECを始めようとするショップ様はたくさんいます。しかし、中国の一般ユーザーの消費感覚、今の流行などをしっかり知った上で越境ECを始めるショップ様は少ないのが現状です。中国で好まれる色使いや、キャッチコピーなどを使用する事や、購入前の質問や値引き交渉が当たり前な国なのでチャットオペレーションを整備するなど、その国の商習慣を知らないと、せっかくサイトをリリースしても、売上に繋がっていかないのです。ECでやるべき丁寧なサービス構築は日本国内と一緒です。まずは、ショップ様が、日本で培ったノウハウを越境ECでも取り組む事が大切なのです。その上で、海外向けにローカライズした戦略・体制を組むとよいと思います。
では、いざ越境ECをスタートしようと思っても、サイト制作や翻訳、広告露出、運営体制の構築、マーケティングなど、非常にコストが掛かります。自社に最適な人材がいない例も多いでしょう。しかし今後、越境ECは欠かせない販売チャンネルの一つに必ずなります。最近ではコストを抑えた越境EC用のプラットフォームもあったり、当社のような日本と現地両方でサポートできる会社がありますので、上手に利用しながら動き出して頂きたいですね。
私たちは越境EC全般の業務を委託で行っております。企業や行政の越境ECもお手伝いしているのですが、やはり今、越境の大きなハードルになっているのが物流コストです。物流のコストが下がればもっと越境ECが当たり前になるでしょう。是非、長期的視野に立ち、貴社の海外事業として、越境ECをご検討されるとよいかと思います。
<ECのミカタ通信 2015AUTUMN vol.10より抜粋>