進化するマーケティング技術・AI。 先端ECサイトで活きるWeb接客。今こそ導入を !

福島 れい

巷を賑わすロボットや人工知能、まだまだ遠い技術だと思ってはいないだろうか? 進化する技術、拡大する市場、増加する競合店がもたらす環境変化を考えてみよう。

拡大するEC市場

図1:2015年までに増加した競合店舗数
上記に加え、フリマアプリの普及や実店舗やメーカーがECサイトを運営するオムニチャネル化の進行、海外ECサイトの利用も一般的になっていることを加味すると、ここ数年でEC業界のプレイヤーは爆発的に増加していると考えられる。

図版の詳細はPDF版でご覧ください→https://ecnomikata.com/knowhow/detail.php?id=8524

 スマートフォンの普及によりインターネットの利用時間は増え、ECサイトで買い物を楽しむ人は、中高生からシニア世代まで急激に増加している。それと同時にECサイト側から提供されるサービスも利便性が高まる一方だ。例えば、配送に関して言えば、即日発送や翌日発送は当然のことのようになっているし、日中、勤めに出る人でも受け取りやすいようにとコンビニ受け取りが広がっている。決済に関しても商品を確認した後にコンビニなどから支払いができる後払い決済や、通信料をはじめとする他の料金と合算して支払う簡単決済など、様々な決済手段が選べるようになっている。このように利便性が向上するに伴って2008年に6・1兆円 規模だったEC市場は2014 年には 12 ・8兆円まで拡大し2020年には20兆円規模になると予想されている。

 市場拡大の要因となっているのはEC業界におけるプレイヤーの増加だ。2015年のYahoo!ショッピングの出店店舗数は37万店となり前年比54%増となった。また、2012年頃からは個人でも手軽に始められるかんたんECが普及し、今やBASEから20万店、STORES.jpから40万店が出店されている。そのほか、実店舗がECサイトも並行して運営するオムニチャネル化の進行やメルカリ、オタマートなどといったCtoC向けのフリマアプリの人気沸騰、さらには海外のECサイトから購入するユーザーも多くなってきた。これはユーザーから見れば選択肢が大幅に増加、ECサイトから見れば競合だらけの状態となっているのだ。

 その結果、ユーザーはあらゆる商品において特定のECサイトだ けを利用するのではなく、価格や送料が安いECサイト、場合によっては好みのサイトデザインが使用されているECサイトなどを利用するようになっている。現在のEC業界は、特徴的な商品を扱うECサイトであっても、差別化が難しいのが現状だ。

顧客との信頼関係を築くCRM

図2:CRMの考え方
図3:LTVの考え方
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 商品や価格で差別化がしにくくなっているため、顧客との信頼関係を築くことに重きが置かれるようになってきた。そこで今、注目されているのが、「欲しい情報を欲しい時に欲しい量だけ届ける」というCRMの考え方だ。

 顧客一人一人に合わせた接客をすることで満足度を高め、繰り返し購入してもらう。つまりLTV、顧客生涯価値を高めようということだ。LTVとは一 人の顧客が各ECサイトにおい て生涯で支払う金額のこと。一度だけ高価な商品を購入する顧客より、少額でも何度も繰り返し購入する顧客のほうがLTVは高くなる場合が多い。

 つまり、一人一人の顧客に対して「あなただけ」の対応をすることで、快適な買い物体験を提供し、ECサイトへの信頼を高める。これが結果としてリピート購入につながり、LTVが向上するというわけだ。 具体的に言えば、20 代の女性と60 代の男性では、求めている商品や情報、また、好みの色合いやデザインも異なる。それに対し、購入履歴や性別・年齢などの顧客情報をもとに、顧客一人一人に対して最適な接客を提供しようというわけだ。これにより長期的な目で見て、ロイヤルカスタマーが増えていくことになる。 とはいえ、顧客と対面することのないECサイトで、一人一人 の顧客に合わせた接客を実現するのはなかなか難しいように思われるだろう。しかし、昨今のマーケティング技術の進化や人工知能(AI)の台頭でそれらも困難ではなくなってきている。

進化するマーケティング技術・ 人工知能

図4:マーケティング技術・人工知能(AI)の活用事例
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 会話ができるロボットや自動車の自動運転、ユーザーの好みを自動で認識し、それに合わせた情報提供をするニュースアプリなどが盛り上がりを見せていることをご存じだろうか?実はこれらの技術はEC業界にも進出し、顧客一人一人に合わせた接客をするのに一役買っている。

 ECサイトでは、対面することのない顧客の特性を見極め、その人に合った最適な接客をするにはあまりにハードルが多く、困難を極めた。しかし最新のマーケティング技術では、顧客の特性を見極め、One to Oneで「欲しい情報を欲しい時に欲しい量だけ届ける」ことができるようになってきた。

 最新のマーケティング技術や、 人工知能がEC業界においてどのように活きるのか、これらを活用したサービスを特集する。 EC業界でもOne to One が主流になりつつある今、顧客の目は益々シビアになり、快適な買い物ができるECサイトを求める声は高まってくるだろう。その時、顧客を満足させられるECサイトとなっているのかどうかが鍵となる。今こそ、接客を見直し、顧客に選ばれるECサイトとなる時が来ている。

5つの買い物ステップに合わせた接客で ロイヤルカスタマーを作ろう !

 ECサイトを訪れたお客様はその買い物に満足しているのだろうか? 文字が小さくて見にくい。問い合わせに対する返答が遅かった。商品がうまく見つからない。購入の決め手がない。注文した商品が届かない。などといった問題は、多数の注文に対応するECサイト側から見れば些細なことでも、お客様一人ひとりにとってはECサイトへの信頼に関わる大問題だ。「お客様に合わせた接客」を強化しロイヤルカスタマーを生み出そう。

【STEP1:売り場づくり】

 ECサイトの印象を決めるサイトデザイン。全ての顧客に対して同じデザインを表示してはいないだろうか?年齢や性別、検索スキルや、趣味趣向などといった顧客の特性によって 心地の良いサイトデザインは異なる。こういった顧客の好みに合わせて複数のサイトデザイン を準備し、顧客に合わせて出し分けることができるサービスが普及し始めている。出し分けの際に利用するのが、顧客一人一人の購入履歴や属性など訪問の度に蓄積した顧客データだ。複数用意したサイトデザインと顧客データを照らし合わせ、快適な売り場環境を提供しよう。

【STEP2:問い合わせ対応】

 顧客からの問い合わせと言えば電話やメールが主流だったが、より気軽に問い合わせてもらおうとチャットの導入も進んでいる。問い合わせを受けた際に重要になるのが、早く・漏れなく・ 適切な対応ができるかどうかということだ。電話番号から照合して、過去の問い合わせデータをモニターに自動で表示するシステムや、 問い合わせメールを全スタッフで共有、一元管理ができるメールツール、問い合わせ内容までまとめて管理できる受注管理システムなど、より深い問い合わせ対応を実現するサービスが登場している。1件の問い合わせとして完結するのではなく、過去の問い合わせ内容やその際の対応、購入履歴などを紐づけた問い合わせ対応が求められている。

【STEP3:商品提案】

 今ECサイトで買い物をしているのはどんな顧客なのか、これを把握し、その人に合わせた商品提案ができるようになっている。閲覧履歴や購入履歴を活用すれば購入の決め手が、キャンペーンに惹かれたのか、トレンドのものだったからなのか、もしくは好みの色だったからなのかが明らかになる。 顧客一人一人異なる、購入の決め手に合わせて、例えば、個人個人に合わせたレコメンドメール、キャンペーンを知らせるポップアップ、トレンド商品を集めたバナー掲載などができるのだ。 顧客が必要としている情報のみを集めて提案できるため、顧 客は買い物をしやすくなり、購入率を高めることができる。顧客の好みや状況に合わせて多彩な提案ができる、まるでコンシェルジュのような存在が求められている。

【STEP4:商品購入】

 買い物のモチベーションは移ろいやすく、欲しい商品を見つけても購入に迷いが生じてしまうということはよくある。例えば、いざ注文しようと思ったら送料が高かった。そうして購入をやめてしまう顧客も少なくないのだ。そんな時「送料無料まであと500円!」と500円程度の商品が表示されれば、1品追加して購入する顧客は必ずいる。他にも、複数商品の購入に対してセット割引を提案したり、離脱しようとする顧客にクーポンを提案したり、実店舗で言う値引き交渉のような、迷っている瞬間に購入を後押しする提案もできるようになっている。買い物のモチベーションを高める施策を打ち、確実に購入に導く、ここでもひと工夫が欠かせない。

【STEP5:商品発送】

 顧客にとっては商品が手元に届くまでが買い物だ。いつ、どのような状態で届くのかというのもECサイトの信頼に大きく影響している。そうなってくると気になるのは、Amazonの存在だ。ほとんどの商品が即日出荷、最近は1 時間(一部地域限定)で届けるサービスも始まり、顧客からすればこのスピード感はもはやスタンダードとなりつつある。Amazon以外のECサイトであってもいかに早く、ミスなく出荷するか、しっかり対策を打っていく必要があるのだ。この時、役に立つのが、注文を受けたあと完全に自動で商品を出荷するシステムだ。人の手を介さないため、深夜や休日であっても素早く正確に出荷され、商品と共に信頼を届けられる。このように注文を受けた後の対応も重要な差別化要因となるのだ。

<ECのミカタ通信 2016 SPRING vol.11より抜粋>


記者プロフィール

福島 れい

ECのミカタ編集部に所属するバドミントンと和服、旅好きの記者、通称れーちゃん。ミニ特集「アパレルECの未来(https://goo.gl/uFvr2C)」等、これからEC業界がどんな風に発展していくのか。に注目しながら執筆しています。2017年の執筆テーマは、”私にしか書けない記事をタイムリーに”。

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