イーベイ・ジャパン代表が語る“コロナ禍における越境ECデマンドの変化と、新しいビジネスチャンス!
イーベイ・ジャパン株式会社の岡田雅之社長は10月21日、オンライン開催となった「リユース・テック カンファレンス for 2020」において、「コロナ禍における越境ECデマンドの変化と、新しいビジネスチャンスについて」と題し講演した。eBayを通じた越境ECのポテンシャルや中古品との親和性など、その成長性について語った。
日本の人口より多いバイヤー数
「海外からの需要と日本の販売数のギャップに可能性を見出した」という岡田社長。IT企業で働いていた自身も、その可能性から同社に入社したという。
現在、eBayは190ヵ国・地域へ販売し、バイヤー(お客)数は1.83億人と日本の人口を超える。常時出品数は14億点で、年間取引額10.3兆円と世界最大級のマーケットプレイスだ。49ヵ国と地域にオフィスを設置し、米国、英国、ドイツ、オーストラリアが4大市場。米国eBayに出品すると世界中に展開できる。
日本のセラー(出品者)が扱う商品では、ハイブランドの中古品、日本の著名メーカーの新品、オタク系・コレクター商材の人気が高い。商品のうち、6割程度は中古品だ。コロナ禍でも好調で、eBayの各国オフィスの中で日本は断トツの成長率だ。コロナ感染拡大の初期はプラモデルやパズル、生活必需品など巣ごもり消費の需要を見込んだが、3~4月にトランプ政権が各家庭に支援金給付を始めると、家の外でも使用できる商品が売れ始めた。今年4~6月の売り上げでは特に、アパレル・ファッション、フィルムカメラ関連、腕時計・宝飾が前年同期比20~30%増となった。
コロナ禍で大きく変化したのが配送だ。セラーの多くが日本郵便のEMS(国際郵便)を利用していたが、コロナの影響で旅客便が飛ばなくなったため、サービスの停止や一部中止が続出した。イーベイ・ジャパンではDHL、FedEx、UPSに折衝し、クーリエ(国際宅配便)を日本郵便に近い料金で利用できるようにした。現在ではEMSに加え、クーリエを利用し事業継続するセラーが増えた。クーリエ活用で輸送時間が短縮するケースも多く、米国内の事業者が販売しているのでは、とクレームがあるほど。販売の好調要因にもなっている。
岡田社長はeBayの本質を「オタクが運営し、オタクが集まるマーケットプレイス」と表現する。米ソルトレイクシティのカテゴリーマネージャーの部屋の壁は「キン肉マン」のコレクションで埋め尽くされ、スニーカーのコレクターも多く、エンスージアスト(熱狂的な支持者)に支えられている。バイヤーに、なぜ日本から買うのかを聞いたところ、偽造品の心配がない、品質が良い、日本からしか買えない、という答えが占め「当たり前のことが評価されている」という。結果として、良い購入体験をしたお客が多く、実に8割がリピートにつながっている。
偽造品撲滅は米国本社も力を入れている。スニーカー、高級腕時計の真贋保証サービスが更新され、近くハンドバッグについても実施する計画だ。
日本の中古商材の潜在規模は「1世帯当たり70万円相当の眠れる不要品がある」(2018年、みんなのかくれ資産調査委員会調べ、ニッセイ基礎研究所監修)と言われる。米国はeBayが行った調査で40万円相当。そのうち20%程度がECなどオンライン化されている。日本にはまだまだ多くの「眠れる資産」があるのだ。
一方で日本のセラーがeBayで売るメリットも多い。その一つが、日本で売るより海外の方が高く売れる=「内外価格差」の大きさが魅力だ。講演では「マミヤ」のフィルムカメラ、トレーディングカードで「ポケモンカード」、ビデオゲーム、釣り具で大物狙いのリールなど、価格差が20万円前後となった事例を紹介。フィルムカメラは世界的なアナログ回帰のトレンドから需要が高まっていることや、トレーディングカードは一回の海外送金に「100万円の壁」があり、本来ならもっと高く売れる可能性があることも、加えて説明した。またeBayのカテゴリーで最大規模の自動車オートパーツは、ジャパンドメスティックモデル(JBM)など検索が多く、需要はあるが、日本からの出品が少なく、有望だという。
チャンスも感じながら、越境ECに踏み出せない人も多い。そこでイーベイ・ジャパンではサポートを充実させている。eBayセラーとしてのスタートはeBayのサイトでアカウントを作成することから始まる。このまま販売を開始することもできるが、イーベイ・ジャパンのサイトでeBay販売サポートを通してセラー登録すると①トラブルの時、日本時間に日本語でサポート、②出品可能枠の拡大、③初期設定の案内といったサポートが受けられる。また、セラー専用の「セラーポータル」サイトには売り上げ管理や、何をしなければならないか、設定に漏れはないかなど、運用のための情報が得られる。自力で頑張ることも可能だが、こうした日本向けのサービスを受けることで、心理的ハードルも下げられる。
また今年に入ってイーベイ・ジャパン公認コンサルタント制度を拡充。初級・上級、法人・人、システム開発の受注などレベル、形態、内容、地域によって、全国11人のコンサルタントの紹介が可能だ。
米有力コンサルティング会社によると米国の越境EC浸透率は昨年が15%。それがコロナ禍の4~6月で30%まで拡大したという。「米国市場はeBayをはじめ、ECが大幅に成長している。日本の商品、とりわけ中古商材の注目も高い。来年以降も確実に拡大していくので、チャレンジして欲しい」という。