カスタマージャーニーマップの重要性と作り方
「クリック率は高いが購入されない」「リピート率が伸びないのはなぜ?」―その原因は、顧客体験の「ズレ」にあるかもしれません。カスタマージャーニーマップを使えば、顧客の行動や思考を可視化し、施策の一貫性を高めることで期待と体験のギャップを埋めることができます。本記事では、ペルソナの作成方法や効果的な活用方法について解説します。
カスタマージャーニーマップとは
「カスタマージャーニー」とは、顧客が商品やサービスを認知し興味を持つ→比較検討する→購入・利用する→第三者へ薦める、継続購入・利用するまでの一連の流れを指し、それらの過程を可視化し時系列にまとめた図のことを「カスタマージャーニーマップ」といいます。
カスタマージャーニーマップでは
「認知」→「情報収集」→「比較検討」→「購入」→「継続利用」
の各フェーズにおける
・接点
・行動
・思考
・感情
・課題、施策
を洗い出していきます。
カスタマージャーニーマップはなぜ必要か?
カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客の行動・感情・思考を見える化し、顧客に対する理解を深めることができます。これにより、単に「新規顧客の獲得」「リピート獲得」といった大まかな施策ではなく、より細かく精度の高い施策を検討・実施できるようになります。
▽商品を知らない顧客に対して
→認知フェーズでの効果的な広告やコンテンツ戦略を検討
▽比較検討中の顧客に対して
→購入を迷っているポイントを特定し、LPや商品ページ上での訴求を強化
▽購入後の顧客に対して
→満足度を高めるサポートやアフターケアを強化
広告配信やサイト分析においてクリック率やCV率などの結果は数値で見ることができますが、「なぜその結果なのか」まで知ることはできません。
カスタマージャーニーマップでは顧客が「どのフェーズにいて」「どんな思考・感情で」「何に対して課題・迷いを感じているのか」を見える化できるので、数値が低い理由を言語化し、顧客目線の本質的な改善策を検討するために役立ちます。
カスタマージャーニーマップの作り方―①ペルソナの作成
カスタマージャーニーマップにおいて顧客の思考や感情まで可視化するには、顧客の人物像を明確にする必要があります。
「会社員の20代の女性」がどう行動するかを具体的なイメージに落とし込むことは難しいですが、「28歳・女性・横浜在住・営業職・既婚・子供なし・年収450万円・趣味はキャンプ・主に使うSNSはInstagram、キャンプの様子を投稿している」という人物ではどうでしょうか?人物の解像度が上がり、各フェーズでの行動や思考までをイメージしやすくなります。
このように自社の商品やサービスを利用する架空の人物像(典型的な顧客像)を具体的にしたものを「ペルソナ」といいます。カスタマージャーニーマップ作成は、このペルソナを設定することからスタートします。
「20代・女性・会社員」と大まかに分類するターゲットと異なり、ペルソナの場合は
・基本情報(氏名、年齢、性別、居住地など)
・家族構成、人間関係
・職業、業種、役職、年収
・ライフスタイル
・趣味、関心事
・好きなエリア、ショップ
・価値観、目標
・情報収集方法
と、具体的に人物像を設定します。
そして、ペルソナはあくまでも「典型的な顧客像」であり「理想の顧客像」ではありません。ペルソナ設定の際、企業にとって都合の良い理想が盛り込まれてしまうと、実際の顧客との乖離が大きくなり、カスタマージャーニーマップの精度が下がり、正しい分析や最適なアプローチができなくなってしまいます。
現実に即したペルソナを設定するには、身近な人物から考えてみるのがおすすめです。自社の商品(もしくは競合商品)を利用している家族や友人などからヒアリングし、ペルソナに落とし込んでみましょう。既存顧客のデータからペルソナに落とし込む方法もありますが、ライフスタイルや価値観などは顧客データでは分からないので、インタビューやアンケートで情報収集すると良いでしょう。
カスタマージャーニーマップの各フェーズを洗い出す作業は、どこから着手しなければいけないという決まりはありません。次の②〜④の観点を踏まえて作成してみましょう。迷ったら「顧客の行動」から検討していくと作業がしやすいかもしれません。
カスタマージャーニーマップの作り方―②未顧客からロイヤルカスタマー(ファン化)までの道筋の設計
未顧客からファンになってもらうためには、各フェーズの施策を個々に考えるのではなく、一貫性を持たせることが大切です。一貫性とは、「顧客がブランドに対して抱く印象がフェーズをまたいでもズレない」「顧客の期待を裏切らない」ことを指します。
例えば、「女性・30代・子供あり・フルタイム勤務中」という人向けに「忙しくても時短でスキンケアできるオールインワン化粧水」を売り出す場合。
<一貫性が無い訴求の例>
・認知フェーズ:忙しいママのための時短スキンケア(広告)
・比較検討フェーズ:美容成分を贅沢に配合、ラグジュアリーなスキンケア体験(LP)
→「時短スキンケア」と「ラグジュアリー」という訴求のズレ
・購入フェーズ:今だけ50%OFF(クーポン)
→「時短」「ラグジュアリー」「お得」とバラバラな価値提案
訴求内容に一貫性がないと、「時短ケアという広告に惹かれてページを見たけど、どうやら時短ケアではなさそうだ」と顧客は離脱してしまいます。これは「この商品で時短ケアができるかもしれない」という顧客の期待が裏切られた状態です。
<一貫性がある訴求の例>
・認知フェーズ:忙しいママのための時短スキンケア(広告)
・比較検討フェーズ:忙しい朝もワンステップでしっかりケア。◯◯、△△配合で潤うツヤ肌に。「時短になる、これ一つでしっかり潤う」などのレビュー。(LP)
・購入フェーズ:今だけ!20%OFFで時短スキンケアをお試し(クーポン)
訴求内容に一貫性があるというのは、顧客の期待と体験のズレがないことを意味します。認知フェーズで感じた期待と体験が一致することで(or期待以上の体験を得られることで)顧客満足度が高くなり、ファン化・リピート化へと繋がっていきます。
カスタマージャーニーマップの作り方―③販売前のアプローチと、販売後のアプローチの設計
・販売前=顧客が商品を考える前の心理状態
・販売後=顧客が商品を買った後の心理状態
それぞれの顧客の状態に合わせた最適なアプローチを設計しましょう。
▼販売前のアプローチ
時短スキンケア商品の例の場合、この段階の顧客心理は「時短でスキンケアしたい」というニーズが顕在化しているか、顕在化していないか、という大きく2つに分類できます。
「毎日忙しいから、手軽に時短でスキンケアしたい」というニーズが顕在化している場合は、「これ1本で時短スキンケア」などの直接的な訴求が効果的でしょう。
一方で、ニーズが顕在化していない場合、
・「子供がいたらこんなものだろう」とそもそも悩みとして自覚していない
・「忙しい中でもスキンケアしたいけど、仕方ないか」と悩みは自覚しているが具体的なニーズまで発展していない
という可能性があります。
その場合には「家事育児に追われてスキンケアの時間がない。そんなママに…」「◯◯に変えたら忙しい朝に余裕が生まれた」など悩みを自覚してもらう訴求や、この商品でもっと良くなるかもしれないという期待感を訴求すると良いでしょう。
ニーズが顕在化している顧客と顕在化していない顧客では、アプローチ方法も内容も異なります。そのため、販売前のアプローチは顧客の心理状態、ニーズや悩みの自覚レベルに合わせて設計しましょう。
▼販売後のアプローチ
販売後のアプローチの目的は、顧客をファン化させることです。
「商品が良ければ何もせずともリピートするのでは?」と思われがちですが、実際には商品が良いだけではリピート・ファン化を促すには不十分なケースが多いです。
「商品の良さ」に加えて「感情に響く体験(感動)」を提供することが、リピート・ファン化には欠かせません。
例えば、「商品の良さ」+「(自分が)商品を良いと感じる」に加えて、「他の顧客も商品を良いと感じている(レビューやSNS投稿など)」という要素が加わることで、顧客は「良い商品だ」という自己評価が強化され、商品やブランドへの愛着や信頼感が高まります。
他にも、同梱物の工夫やペルソナの興味関心に沿ったコンテンツ配信、LINEやメルマガでのアプローチ、オンライン/オフラインでの接点など、商品以外の顧客体験を充実させ、顧客のファン化、リピート化を促しましょう。
カスタマージャーニーマップの作り方―④各項目の洗い出し
設定したペルソナを元に、「認知」から「継続利用」までの各フェーズにおける顧客の行動やタッチポイント、感情などを洗い出していきます。
前述の通り、洗い出しの方法や順番に決まりはありません。例えば「情報収集」フェーズにおいて、WEB検索のみか、SNSで探すのか、資料を取り寄せるのか、店舗へ見に行くのかなど、顧客の行動から効果的なチャネルを検討しても良いでしょう。
また、各フェーズにおいての顧客の思考・感情は、ポジティブな反応だけではなく、ネガティブな反応も含めて洗い出すことが大切です。その上で「他社より価格が高く即決できない」というネガティブな反応に対しては「機能面やサポート体制を訴求し価格への納得感を高める」などのポジティブな反応を促す施策を検討します。
カスタマージャーニーマップにもPDCAを
カスタマージャーニーマップは一度作成したら終わり、ではなく、施策の結果を元に常に改善・更新することが大切です。
例えば広告の場合、「このターゲットに響くだろう」「このキーワードなら高いCV率が見込めるだろう」という想定で配信し、配信結果を踏まえてターゲットやキーワードを修正します。一度配信設定して終わり、ではなく、常にPDCAサイクルを回しながら広告効果を最大化していきます。
カスタマージャーニーマップも同様です。最初に作るカスタマージャーニーマップは、「リアリティのある架空の設定」ですが、施策の効果や実際の顧客の行動を踏まえて修正することで、「今現在の顧客行動に即した内容」へとブラッシュアップされ、PDCAの精度が上がります。
・カスタマージャーニーマップは施策の検討/実行/改善のための「ツール」である
・最初から完璧なカスタマージャーニーマップは存在しない
・施策の結果を元に、適宜修正することが大切
ということに留意し、カスタマージャーニーマップを作成しましょう。
まとめ
カスタマージャーニーマップは、顧客が商品やサービスを認知してから購入・継続利用に至るまでの行動や思考、感情を可視化することで、顧客体験を最適化し、施策の精度を高めるための重要なツールです。カスタマージャーニーマップを効果的に活用し、売上やLTV(顧客生涯価値)の最大化を目指しましょう。
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