1千万人を熱中させた『Pokémon GO』がECを滅ぼす【ドンマイコラム 勘違いオムニチャネルな脱線EC】

佐藤 英俊

©2016 Niantic, Inc. ©2016 Pokémon. ©1995-2016 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

ネットショップの教科書に依存し過ぎて失敗する(失敗しながら成長する)人のための、ちょっとやそっとでうまく行かないからってドンマイなコラム。

①1千万人を熱中させた『Pokémon GO』がECを滅ぼす

1千万人を熱中させた『Pokémon GO』がECを滅ぼす

 世界で1億人、日本で1千万人、瞬く間に浸透した『Pokémon GO』は、Twitterアプリを抜き、ポケモノミクスという造語さえ生み出しました。「9.11」や「3.11」ほど定着はしませんけど、日本のゲーム業界では「7.22」という符牒さえ飛び交いました。

・マクドナルドの集客に夢を見る

 なにしろ、とにかく大勢の人間を動かしたのです。プレイ中の82%の人が『Pokémon GO』の為に何らかの店を訪れました¹。51%は初めての店にも足を運びました。経済効果は計り知れません。訪問した内の86%が飲食店、多分マクドナルドに向かったのです。国内の調査でも、プレイヤの15.7%がついでにフードやドリンクを購入しました²。

 スマホとは、それまで人間が持ち歩くものでした。スマホゲームとは、どこにいてもプレイできるものでした。『Pokémon GO』とは、ポケストップと言っては、人間が動かされるものです。これこそは、O2O史上最大の成功事例に外なりません。

 実店舗の商売とは、ショッピングや買い物と言っては、人間が動かされるものです。ECとはどこにいても買い物できるものです。私たちは「ヒト」が動くのではなく、「モノ」が動く(黒猫が運ぶ)ことをありがたがっています。

 気付きましたか。『Pokémon GO』とECは、本質において実に相性が悪いのです(暴言)。『Pokémon GO』に飛びついたネットショップのみなさん、Don't mind Pokémon GO。

¹http://www.marketingprofs.com/charts/2016/30485/how-pokemon-go-players-engage-with-businesses-infographic?adref=nlt081816
²http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/081700063/081900003/?i_cid=nbpnbo_tp

・ポケモン・シフトがEC消費を減らす

 「ポケコイン」によって、買い物のお財布内シェアが小さくなることを懸念しているのではありません。お金より時間です。可処分時間のポケモン・シフトが起きると、お買い物に費やす時間が減ります。中でも、EC経由が減るのです。

 もし、昭和の専業主婦がネトゲ廃人になったら。それまでの「ちょっと遠いスーパーの特売品を買って調理」が、「近所のコンビニで惣菜を買ってチン」に変わりますね。同じことはECにも起きます。

 ECが古典的な「折込チラシ」認知と「特売」勝負に腰を据えたまま変化に挑まなければ、あるいは滅びてしまうかもしれません。不渡りを出してから、任天堂やアマゾンを恨んでも遅いのです。

 ECが成熟してきた今だからこそ、実店舗とネットショップの勘違いオムニチャネルに脱線しながら、EC談義をしてみませんか。ドンマイコラムの始まりです。

・店の入り口に立ったところから始まっている

 さて、「入りたくない店」を思い浮かべてください。

 これでは話が始まりません。やはり、必要なお金もかけて、魅力のあるビジュアルでお客様をお迎えすることは大切です。あまりにボロだと、商売に臨む姿勢を疑ってしまいますよね。

 また、安心・安全も大切です。切れた蛍光灯。錆びた手すり。饐えた臭い。靴跡のついたドア。私なら足が竦みます。ECなら、わかりやすいところに「買い物ガイド」を用意すべきですし、さすがになくなりましたけど、SSL非対応など論外です。「怖い思い」なら、実店舗もECも同じですね。

 しかし、違いもあります。

 ずばり、ネットなら「恥ずかしい思い」はしないというのはヒントです。気軽に入ってみることができるのです。マナーを勉強する必要もありません。

 つまり、入り口の一番目立つところに値段入りのメニューを掲げる必要などありません。

 このように、ネットショップと実店舗には共通点も多い一方、また違った条件もあります。

 いずれにしても、EC がある程度成熟し競争時代に突入した今だからこそ、再び実店舗に学びながら、皆さんと勉強や実践をしてゆければうれしい。


著者

佐藤 英俊 (Heyday Satoh)

一級小型船舶操縦士。潜水士。座右の銘は「Discover new horizons! - 新しい視野を発見しよう」です。「視野=水平線・地平線」という言い回しが素敵ですよね。しかも、複数形。つまり、水平線は一つではありません。丘に登れば、別な水平線を見ています。一緒に新しい水平線を目にしましょう。

世界で最初の「震度計」を世に送り出したという異色の経歴。その後、IT 系に転じ、日本で二番目に co.jp ドメインを取得。21世紀に入って起業。カリフォルニアに居を構え、日本発のマルチメディア技術をハリウッドと世界の映画産業に浸透させた。モノ作りや新規事業の実体験を活かしてクライアントの支援をしている。

長年の夢、まだ叶っていない夢は、吐噶喇列島を旅すること。

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