【第四回】お客様が喜ぶなら何をやってもいいんだよ〜さくらフォレストが説く[接客の極意]

田上 薫

前回までのコラム

【第一回】「声」で繋がり、心が繋がる、その秘密。〜さくらフォレストが説く[接客の極意]
http://ecnomikata.com/column/10014/

【第二回】未経験者があっという間にプロフェッショナルへ〜さくらフォレストが説く[接客の極意]
https://ecnomikata.com/column/10366/

【第三回】お届けするのは「商品」だけだと思っていませんか?〜さくらフォレストが説く[接客の極意]
https://www.ecnomikata.com/column/10963/

自分らしい『おもてなし』を追及する

 これまで、未経験から約3ヶ月でお客様対応のプロになる秘密、あえてマニュアルを作らない理由についてお話してきました。

 さくらフォレストのスタッフ全員に等しくある「個人裁量権」ですが、個人裁量権があるということでスタッフが勝手なことをするのではないかと危惧される方もいらっしゃるかもしれません。今回はどうしてそこまで個人裁量権にこだわるのかをお話したいと思います。

 お客様応対をする中で、自分の好きなことにチャレンジしている人もいます。

 さくらフォレストに入社して3年目の高木は、コールセンターのチームリーダーとして日々奮闘中です。新卒での入社のため、オペレーター経験が全くない状態での入社でした。彼女は「先輩やお客様に育ててもらって、今の自分がある」と話します。

 そんな高木は幼少期から絵を描くのが好きだったそうです。1年目からお客様にお手紙やハガキを書くときは自分の絵を添えるようになりました。

※写真は家族へ宛てたイラストです。お客様へお届けしたイラストは掲載することが出来なかったのですが、温かい雰囲気が伝わればと思います。

 そんな彼女の姿を見た先輩スタッフから「一緒にお客様にプレゼントするカレンダーを作らない?」と声をかけてもらい、入社して半年ほど経ったころより、お客様にプレゼントするイラストの制作に携わりはじめました。

 一番初めにとりかかったカレンダーの制作では、季節に合わせたイラスト12枚を先輩のお手伝いをしながら制作しました。翌年には12枚のイラストを一人で完成させました。アイデアから制作まで、お客様応対の業務をしながらです。

 制作とお客様応対の兼業は大変だけれど、自分の好きなことを仕事にさせてもらえることで「ハリ」がでて良いと話しています。

 先輩に背中を押されてはじめたイラストの仕事ですが、カレンダーやはがきを見たお客様から「かわいい」「癒される」といったご連絡をいただくようになりました。

 高木がイラストを描いていることはスタッフ全員が知っているため、お客様からのお声がある度に高木に直接伝えたり、また高木自身もお客様応対をする中で

「もしかして、イラストを描いているのはあなた?」

とお客様から声をかけて頂きそこから関係性を築くという、他のスタッフとはまた違ったお客様との関わり方の可能性を見せてくれます。

 毎年お客様からカレンダーについての嬉しいお声が届くため、「年賀状や暑中見舞いのハガキにも手描きのイラストがあると温かみが出て喜ばれるのでは?」と、お客様へお届けするハガキへ載せるイラストを描きはじめ、お会いしたお客様へ似顔絵をプレゼントしたら喜んでいただけると自ら提案し、実行しています。

 もちろん、お客様から自筆のお手紙やお礼のプレゼントが届く程、お喜びいただいています。

非効率が生む信頼関係

※写真は家族へ宛てたイラストです。お客様へお届けしたイラストは掲載することが出来なかったのですが、温かい雰囲気が伝わればと思います。

 そんな高木に、最近「イラストの後輩」ができました。自分らしい仕事のやり方を、高木が前例として姿勢を見せている結果だと思います。楽しそうに仕事に向き合う姿に、魅かれるのは当然ですよね?

 こうした「お客様に喜んでいただくための仕事のやり方」についても、スタッフ一人ひとりに判断と決定権があります。

ただ 、そうすると自分のしたい仕事ばかりするスタッフが出てくるのではないのか、という疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。

 1人ひとりが、自分らしいお客様との繋がり方をすることで、沢山の前例を作ることができます。

「お客様のためなら、何でもやっていいんだよ」

 そう口で伝えるだけでは足りなくて、実際にお客様に喜んで頂くために自分が何ができるかを考えて実行している先輩がたくさんいることと、やりたいと思ったことを口にできる現場の空気感がとても大事だと感じます。

 現場でもミーティングの中でも、発言しやすい雰囲気作りを意識しています。

 その基盤になっているのが朝礼ではないかと思っています。さくらフォレストが一番大切にしている「感謝の朝礼」は、毎朝一人一言ずつ「昨日、自分が感謝だなと感じたことについてショートスピーチをしていく」ものです。

 ショートスピーチというと準備をしているイメージが浮かぶかもしれませんが、朝礼で話す内容についてはすべてアドリブです。これを一人ずつ言っていくので、1回の朝礼が1時間~2時間かかります。

 同僚や親や友人に感謝することもあれば、昨日の出来事や天気、自分が考えたことなどの近況報告をすることもあります。

 要は何を話してもいいのです。自分の話を、その場の全員が否定せずに聴き、たまに質問してみたり茶々を入れてみたり。

 また自分にとって嫌なことが起こった時も、その場で話すことですっきりして気持ちを切り替える人もいます。

 クレームをいただい時も「●●から、こんなことを感じ勉強になりました。」という人や、「このことがあったので、●●に気づかせてもらいました。」という人もいます。

 こうして毎日朝礼をしていると、話をする練習はもちろんのこと、話を聴く練習にもなります。今、一緒にいる仲間がどんなことを考え、何に悩み、何を嬉しいと感じているかが、朝礼の時間によくわかります。
みんなの話を聴くことで、違うことを考えているけれど、同じ目的のために集まった仲間だということを毎日確認することができます。

 朝礼では何を言っても否定されることがありません。たとえ「毎日楽しくない、会社に来たくない」と発言したとしても「どうしてそんなことを言うんだ!」と言ったりはしません。

 たいていそういった場面では会長も社長も、その場にいるスタッフも「いいねぇ」とニコニコしながら話を聴きます。

「朝礼で感謝が聴けることに感謝」

 こういった内容の感謝を聴くこともあります。感じていることを話してくれることはつまり、心を開いてくれているということ。そういったことをとても嬉しく思うのです。

 そうやって話をしているスタッフたちを目の当たりにして、新しく入った方たちも「何でも発言して良いんだ」と認識をして自己開示をしていくのだと思います。

 お互いに信頼しあっているからこの朝礼ができるのか、この朝礼があるから信頼が生まれるのか、どちらが先なのかはわかりません。

 非効率ではないかと言われることもありますが、時間をかけるだけの価値を感じているからこそ10年以上もこの朝礼を続けています。

 どれだけ人数が増えても、この朝礼は絶対に続けていくことでしょう。

 毎日の朝礼を通して作られる「何でも発言していい」という空気感は、業務の現場でもミーティング中にも流れています。

 結果的に、小さな気づきやアイディアを口にしやすくなるのではないかと考えています。

次回は…

 次回は、そういった「何を言ってもいい」という空気感から生まれた「突拍子もないけれど、成果をあげている採用方法」についてお話しさせていただきます。

 今回もお読み頂きありがとうございました。


著者

田上 薫 (Tagami Kaoru)

1988年宮崎県生まれ、鹿児島県育ち。短期大学を卒業後、株式会社ココシスさくらフォレスト事業部(現在:さくらフォレスト株式会社)へ入社。これまでコールセンター部門として、主にクライアント2社に携わり、延べ7万人以上のお客様とお話しをしている。今年からはコールセンターという基礎に、CRMセンターとしても枠組みを広げていっている。

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