【第三回】お届けするのは「商品」だけだと思っていませんか?〜さくらフォレストが説く[接客の極意] 

田上 薫

前回までのコラム

【第一回】「声」で繋がり、心が繋がる、その秘密。〜さくらフォレストが説く[接客の極意]
http://ecnomikata.com/column/10014/

【第二回】未経験者があっという間にプロフェッショナルへ〜さくらフォレストが説く[接客の極意]
https://ecnomikata.com/column/10366/

あえて今月のお届け日を延期する提案をする?!

私たちは、ご質問やご要望のご連絡を下さった方に、ご様子のお伺いをするように心がけています。
例えばここ最近の体調のこと、ご利用のペース、お一人でご利用なのかご家族でのご利用なのかなど……。
お話しの中で今の利用ペースがお客様に合っていないと思った時は、ご利用ペースの変更を提案させて頂きます。
お届けを早めたり、個数を増やす提案をさせて頂く事もありますが、場合によっては「今月のお届けはお休みをしましょうか?」と提案をすることもあります。

販売する立場の者がわざわざ販売を延期する提案ですか?!と驚かれることも多いため、そんな提案をする理由についてお話しさせて頂きます。

さくらフォレストでは最初のやり取りから、どれだけ長くお付き合いをしていけるかという 「生涯顧客」の考え方を大切にしています。
商売チックに言うとLTVですが、私は生涯顧客という言い方の方が好きです。
私たちの商売の目的はお客様に健康になっていただき、人生を楽しんで頂くためです。
健康や美しさは一朝一夕で手に入るものではないと考えていますので、今年1年で何回購入してくださるかということも大事ですが、お客様の人生が豊かになっているかということを意識するようにしています。
人生が豊かになるようなお買い物をして頂きたいと考えた時、買った商品が届いた後、私たちの本当に届けたいものを届けられると思っています。

お客様にとって一番良いことを実践していく。言葉だけ聞くと「一番良いことって?」と難しそうに感じてしまいますが、実践していることは分かりやすくとても単純です。

正解を人に求める「マニュアル人間」を作らない

さくらフォレストではトークスプリクトやサービスマニュアルを作っていません。そう話すと、サービスにばらつきがでるのでは?と心配されることも多々あります。

私たちは、サービスにばらつきがあっても良いと考えています。商品やサービスマニュアルの数ではなく、お客様の数だけサービスの種類があると考えているからです。
言葉だけでのやりとりをする中で、ご要望の向こう側を探るということの重要性を感じています。
ご要望は直接伝えられることもありますが、中には言葉で伝えられないご要望もあります。

研修で効果的なサービスの手法や言葉の言い回しを伝えたとしても、お客様に向きあう姿勢やサービスの本質的なところを理解しないままなら”こう言われたら、こう返す”という機械的な応対になってしまうことが目に見えています。
また、前例がないようなイレギュラーな場面で慌ててしまったり。安心させる立場である私たちが慌ててしまってはいけませんよね。
これでは本末転倒です。私たちの目指す”お客様個人に合わせたサービス”というものからかけ離れたサービスを提供することになってしまいます。

お客様と接する時々で、自分なりに最善を考えて実践する。サービスの正解不正解はお客様の中にしかないと考えています。
もし、お客様に合ったサービスができていなかったと分かれば、そこから先輩にアドバイスをもらったり、自分でアイデアをして学んでいくことを重視しています。
自分で考えることを身につければ、前例のないようなイレギュラーな場面でもお客様に寄り添ったサービスが出来ると信じています。

マニュアルが存在しない代わりに、社員もリーフさんにも一人1か月5,000円、サービスの為の個人裁量予算を設けています。社内で「わくわく予算」という名前で浸透している制度です。

具体的にどういった場面で使われるかと言いますと、特別な理由でお届け日数に余裕がない場合に航空便を使って商品をお届けしたり、お客様へお誕生日プレゼントを送ったりと個人が「良い!」と思えることを最速で実行していく為のものです。

たったコレだけで!お客様の反応が変わる!

これは同じチームで3年間一緒にコールセンターのシゴトをしていた、中山さんという女性から教わったことの一つです。

中山さんは25年以上対面の接客に関わっていました。宝石の販売にはじまり、今扱っている健康食品よりはるかに高額な商品をお客様におすすめしていたそうです。 人生の大先輩であり、お仕事や接客に関しても大先輩です。

社内では中山母さんという愛称がついているほど、母のように深い愛情でスタッフやお客様と向き合ってくださいます。
そんな中山さんのことを慕うスタッフも多く、社内で還暦のお誕生日会を開いたところ、チームの垣根を超えてたくさんのスタッフが集まりました。

お客様からも「あなたなら」と言われることが多い中山さんに、何か気を付けていることがあるのか聴いたことがあります。

「人が好きだから相手の話はちゃんと聴きたいし、こちらが正しい時でもなるべく逃げ場を作ってあげるようにしている」
「クレームはお客様の期待だから、その期待をどう取り戻りしていくか。そこに集中して応対している」

優しい笑顔でそう話してくれたことをよく覚えています。
お客様とのやり取りでは、当然行き違いが生まれることもありますが、そんな時中山さんはいつも「まずは相手を受け入れなくちゃだめよ」と言われていました。

言いたい事を言わせてもらえなかったと感じるとストレスを感じてしまう。自分を受け入れてくれない人とはお話しをしようと思えないから反発してしまう。

自分の話を聴かない人の話を聴きたいと思う人はいないはずです。

トラブルが起こった時ほど、お伝えすることも伺う内容も多くなりますが、お互いがお互いの正当性を主張すると、どんどんお客様のストレスも私たちのストレスも大きくなっていきます。

ポストに投函するタイプの配送方法で商品をお届けする場合に「荷物が届いていない!ポストにもなかった!」というご連絡をいただくことがあります。

相手を受け入れるということを意識していなかった頃は、発送と到着の履歴を画面上で確認の上それを案内して応対終了としていました。

「〇月×日に発送をしており、〇月△日にポストへ投函しております。もう一度ご確認ください」
といった調子です。

そうすると
「ポストの中は見たけど無かった。どうして私が責められないといけないの?」
とお怒りになったり
「届いてないなら要りません」
とその場で商品をキャンセルされるというケースが起こっていました。

中山さんの応対を参考に「相手を受け入れる」ことを意識しはじめてから、そういった二次的なトラブルは激減しています。

今は
「荷物がないと商品が使えなくて困ってしまいますね。すぐに商品を再送させていただきます。〇月×日に発送をしている商品の所在については、確認してまたご連絡致しますね」
という風にお伝えすることを意識しています。

届かないとご連絡をくださるのはつまり商品がお客様の生活に密着しているということですし、前回お届けした商品がなくなってしまいお困りになっての連絡である場合も多いです。

お客様がお急ぎでない場合はもう一言「もしかしたら、ご家族の方が受け取ってらっしゃるかもしれませんので、万が一商品が見つかりましたらご連絡ください。来月分に充当させていただきますね」とご案内しています。

こう伝えてお怒りになる方は、ほとんどいらっしゃいません。

また、無意識にでも「受け入れられた・話を聴いてくれた」と感じたお客様は、商品が見つかっても見つからなくても、後日改めてご連絡をしてくださる確率が高いのです。

「確認したら、商品は届いていました。来月分に充ててください」
「荷物が届きました、助かりました」

トラブルがないのが一番ですが、人は誰しも完璧でないので絶対にトラブルが起こらないようにとは言えません。

人を責めない風土があるため、失敗した場合もすぐに「じゃあどうしようか」と頭を切り替えてお客様の信頼回復に努めるのではないかと感じています。



次回は・・・

個人裁量の注意点、そして、社内での効果性・お客様とのエピソードを紹介させて頂きます。
今回もお読み頂きありがとうございました。


著者

田上 薫 (Tagami Kaoru)

1988年宮崎県生まれ、鹿児島県育ち。短期大学を卒業後、株式会社ココシスさくらフォレスト事業部(現在:さくらフォレスト株式会社)へ入社。これまでコールセンター部門として、主にクライアント2社に携わり、延べ7万人以上のお客様とお話しをしている。今年からはコールセンターという基礎に、CRMセンターとしても枠組みを広げていっている。

さくらフォレストHP http://sakuraforest.co.jp/
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