【第7回】大繁盛飲食店から学ぶ商いのキホン~EC素人集団 「米・雑穀のみちのく農業研究所」~

長濱 洋平

 今回私たちは、思考を変えて、EC店舗さんではなく実店舗さんから成功の秘訣を学ぶべく、宮城県仙台市国分町の大繁盛飲食店にお話を伺ってきた。

 札幌と仙台で合わせて30年以上続く大人気ジンギスカン焼肉中田社長のこだわり、魅力とは?

※バックナンバー
【第1回】さらばヘビメタ~借金との出会い~
https://ecnomikata.com/ecnews/backyard/8794/

【第2回】3万円の中古の原付バイク
https://ecnomikata.com/column/9084/

【第3回】金髪・ロン毛・1児の父
https://www.ecnomikata.com/column/9476/

【第4回】奇跡の山賊
https://www.ecnomikata.com/column/10169/

【第5回】子育てと起業と三畳一間
https://www.ecnomikata.com/column/10662/

【第6回】茂木和哉と考えるECを通した地域活性とモノづくり
https://www.ecnomikata.com/column/11173/

登場人物  
 中田氏→「サッポロ生肉やジンギスカン」社長 中田博さん
 ロングビーチ→「米雑穀のみちのく農業研究所:長濱洋平」
 ※敬称略

大繁盛店実店舗飲食店に学ぶ・地上戦に学ぶ

大繁盛店実店舗飲食店に学ぶ・地上戦に学ぶ

 前号、茂木和哉氏「きれい研究所」。この対談で私は成功店舗には通ずる事がひとつあることを発見しました。対談にてきれい研究所会長柴田氏が「ECをやるな!」「ECをやる前にもっとやることがあるだろう?」というお言葉が私の心に深く刺さった一言でありました。

 その意味は「ネットバブル時代にECに出店すると何でも売れる時代風潮が1997年ごろあった。その時から失敗する人は共通して接客の心を持たずしてキーボードに向かった、成功者はディスプレイの先にあるお客様の笑顔を妄想し続けた者。

 ECも実店舗も根源は同じで、大切なのはお客様への満足度をいかに向上させることを努力し続けられるかが鍵?」という答えに自分なりにたどり着きました。そこで今号はECをちょっとだけ離れて足元を見直す、商売の基本を見直す為、仙台の大繁盛飲食店、店舗様に協力をお願いし「商売の成功の軌跡と秘訣」を取材させていただきました。

仙台・国分町「サッポロ生肉やジンギスカン稲荷小路店」中田博社長

仙台・国分町「サッポロ生肉やジンギスカン稲荷小路店」中田博社長

 国分町稲荷小路に連日満席で予約無しでは勿論入店できず、一日4回転する(満席4回)物凄い人気店がある。その店の店主は広告・クーポン券は一切発行せずこの人気を不動のものにしている。それがサッポロ生肉やジンギスカン 稲荷小路店(022-724-3222:仙台市青葉区国分町2丁目10-10)だ。

 代表の中田社長(札幌産まれS31.2.17.60歳)はこのジンギスカン専門店を札幌で10年・仙台で21年目創業31年のベテランの飲食店経営者であり、国分町では誰もが知っている飲食店。

 中田社長がジンギスカン店を始めたきっかけは30年前に出会った「アイスランドラム」。これは地元札幌の人間は臭みのあるジンギスカンは食べ慣れているからさほど抵抗感はないが他の地域の方にはジンギスカン専門店は難しいだろう。そんな思いの中ある日突然運命的にこの「アイスランドラム肉」に出会って商売を始めることを決断したという。

 だがしかし、その素材を提供する売り手にこの繁盛店の秘密が隠されてることに私は深い裏があることを疑った。その答えは中田社長の「人柄」だ。理屈でいえば、同じ肉を仕入れてお店をやれば誰でも繁盛店ができるだろう。ところがそうはいかない。

 この「アイスランドラム」に魂を吹き込んだのはきっと中田社長の商売に対するひたむきな「姿勢」と「人柄」なのだと思う。

5年前のあの日「勇気=笑顔=人柄」

5年前のあの日「勇気=笑顔=人柄」

 ここまで「人柄」と断言するには私には確証がある。実はさかのぼること5年前の3月11日。東日本大震災、あの夜、町中が停電しすべてのライフラインが無くなったその時に中田社長は真っ先に店を開け、一見さん常連さん関係なく店にあるものすべてを振る舞った。

 しかも一銭の話もすることなく・・・。

 その時の言葉が忘れられない。たまたま店前を通りがかった私に「洋平君休んでいきなよ、うちは七輪の炭焼きだからみんなの役に立てて嬉しいよ!」すると店内は帰宅困難の方で満席。私はこの社長の一言と勇気と行動・笑顔が今の大繁盛店への成功の裏付けなのだと感じてやまない。

 つまり中田社長は地震で帰れない人々が最も今困っている、欲しがっていることは何?を瞬時に誠実に対応したまでで、とはいえそれを即実行出来る勇気ある人があの大震災の最中どのくらいいただろうか?

 ECに置き換えると常に何か困っている、探している人の気持ちを妄想をし続けてディスプレイの向こう側で喜んでもらえることを考えていつもページ作りをしているだろうか?「これやったらお客さん喜ぶよな?」と常に考えていることがこの中田社長の勇気ある行動から学ばせて頂いた。

 きっと日々の営業でその思考を訓練し続けていたからとっさにこの行動が産まれたのだと思う。そして中田社長にとっては至ってシンプルな行動だったのだろう。

 そんな中田社長は現在60歳。ゴルフはシングルの腕前。「商売=生きがい」「お客様=起爆剤」と中田氏はいう。そんな中田氏にこんな質問をしてみた。

ロングビーチ「中田社長にとって今まで人生で最もピンチだったときはどんな時ですか?」

中田氏「人生これまでピンチピンチだったよ。でもピンチはチャンスと自分を信じて今日までやってきたよ。人はオギャーと産まれてきたことがピンチをチャンスに変えるという生命の宿命にさらされていて、それを乗り越え産まれてきたからにはすべての事をチャンスに捉えなくっちゃね。。。すべての物事にに通じる事はピンチのない成功・リスクを冒さない成功なんてないんだよね。」と中田氏は言う。

 若さみなぎるその原動力を是非とも共感してほしい。ぜひ仙台にお越しの際はこの「サッポロ生肉やジンギスカン」と創業31年以来の大ヒット商品の「ねこまんま」を食していただきたい。
▼動画はコチラ



 「ECは空中戦、実店舗は地上戦」この表現はとても好きだ。一見別々のフィールドで戦っているようではあるが、実はよく考えて頂きたい。飛行機やヘリコプターは地上がなければ最後は着陸ができないのだ。燃料が切れたら墜落するのである。ではECをやる上での燃料とは何だろう?私は「妄想」だと思う。そしてそれを「競想」することだと思う。お客様の喜ぶこと、笑顔に絶え間なく挑戦していきたいと思う。

  現在全国で会社の組織の一員としてECをやっている方には特に自分の買い物をするときの癖をよく見直して頂きたい。きっとそこに売れる店づくりのヒントが隠されている。

 そして先日、某人気店をいくつも受け持つプロECが言っていた中で刺さった言葉がある。

プロEC「ECはやるだけではなくその後の始動チェックが重要、実は車の運転もサイトの更新も後方確認が大事なんだ。」と言う。

 かたや繁盛店を作った飲食店経営者は常に「バックをみる」という。つまり、「食べ残し」だ。これがお客様のメッセージであることを常に伺って確認している。いずれも後方確認だ。

 商売の根本は地上戦も空中戦もいつの時代も実は変わらないところにある。

「ピンチのない成功はない。ピンチをチャンスに変え後方確認をし続ける。」


著者

長濱 洋平 (Youhei Nagahama)

1974年1月23日宮城県産まれ。お米のサラリーマンを経て現在の株式会社東穀を設立。
PCでアンダーバーの出し方すら知らない素人がECを始めて5年で楽天市場ショップオブザイヤーを受賞。そして今年も受賞し、2年連続受賞。現在43歳。