●NHK「あまちゃん」にみる、売れる商品と理想のCRM

幸田 八州雄

2013年の上半期に、NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」が放映されました。

物語の舞台となった東北地方への震災以降の注目度と、主演の能年玲奈さんの鮮烈な魅力と、脚本を手がけた工藤官九郎さんの斬新なストーリ展開とちりばめられたエスプリの数々。

さながら日本中が「あまちゃん」一色のようでした。さまざまなところで、朝の話題と言えば「あまちゃん」だったのを記憶しています。

筆者のfacebook上でも、あまちゃんの話題は本当に多く、あまちゃんの中でドラマ上、大きな事件があると、タイムラインに必ずと言ってよいほど話題がアップされていました。とまぁ、それほど大ブームを巻き起こしたあまちゃんでございました。

あまちゃんが大ブームを巻き起こしたということについては、おそらく日本中の共通認識でありましょう。

今回はこのNHKあまちゃんをテーマとして、売れる商品とCRMの関係について述べさせていただきます。ここで皆様に衝撃的な事実をお伝えさせていただきます。

あまちゃんの、次の(2013年下半期)の朝の連続テレビ小説である「ごちそうさん」の平均視聴率は、「あまちゃん」の最高視聴率よりも高かったという、驚愕の事実。
http://www.huffingtonpost.jp/2013/10/17/gochisosan-nhk-amachan_n_4119775.html


ちなみに私は「ごちそうさん」について、「関西の、オムレツが得意な洋食屋さんのお話」という以上の情報を持っていません。そういう方は結構多いのではないでしょうか?

私はNHK朝の連ドラのファンではなくて、あまちゃんのファンだったのです。ちなみに私(40歳・男・東京在住・単身赴任)の周囲も大体同じような心境だったのではないでしょうか。

私のfacebook上のタイムラインでも、あまちゃんが話題に上った回数は、多すぎてカウント不能でした。ところが「ごちそうさん」が話題にされていた回数はゼロ回です。本当にゼロ回なのです。

もしかすると筆者の見落としもあるかもしれませんが、私の目視と記憶の限りでは、本当にゼロなのです。通信販売のダイレクトメールのレスポンス率に換算してみましょう。

仮に筆者のfacebook上の友人が500人だと仮定し、これをリスト数だとします。そして筆者のタイムライン上にあまちゃんの話題が出たらレスポンス1だとします。そのように試算しますと「あまちゃんDM」500通の半年間のレスポンス件数(延べ)は100件を超えます。これは20%(延べ)を超える衝撃のレスポンス率です。

ですが「ごちそうさんDM」のレスはゼロ件。レスポンス率はゼロ。ゼロだと比較しづらいので、ちょっとゲタを履かせてレスポンス1件と考えると、500分の1ですから、半年間の期間レスポンス率(延べ)は0.2%となります。

レスポンス率20%とレスポンス率0.2%、実に100分の1。

このように考えますと「ごちそうさん」の平均視聴率が「あまちゃん」の最高視聴率を超えたというのが、いかに異常な出来事であるかご理解いただけると思います。では本題について述べさせていただきます。

なぜ「ごちそうさん」は「あまちゃん」よりも視聴率がとれたのでしょうか。その理由に筆者は、CRM(お客様との関係づくり)の本質を感じてしまうのです。

端的に申し上げます。なぜ「ごちそうさん」は「あまちゃん」よりも視聴率をとれたのかというと、それは、イノッチの力だとと思うわけです。それと有働アナも。

あまちゃんを見ながら思っていました。あまちゃんが8:15に終わると同時に、NHK「あさイチ」が始まります。そして、そこでイノッチと有働アナがあまちゃんの放送内容について、完全にイチ視聴者の目線で掛け合いのトークを展開します。イチ視聴者である筆者は、そこでイノッチと有働アナに共感しまくるわけです。

そして、いつの日か、筆者はあまちゃんファンであったはずが、イノッチと有働アナと、まるで友達であるかのような妄想や錯覚を感じ始めます。そして「あまちゃん」ファンはいつしか、イノッチと有働アナのトークをあまちゃんの一部だと感じ始めます。そして、分かっていたこととはいえ、寂しいXデーがやってきます。

あまちゃんの最終回です。当時あまロス症候群という言葉が流行りました。あまちゃんが終わってしまうことが寂しい。あまちゃんの終わりとともに心にポッカリと穴が開いてしまった方々のことです。

何を隠そう筆者も随分寂しい思いをしました。

さてそこで、その寂しさを誰と分かち合うでしょう? もちろん、毎朝、あまちゃんの喜びを分け合っていたイノッチや有働アナに決まっています。

そこで、イノッチと有働アナが寂しい気持ちを抱えながら、「ごちそうさん」の話をするのです。ストーリーに触れるのです。

「ごちそうさん」を見るでしょ? あまロス症候群の方なら。あるヒット商品(あまちゃん)が好きだったはずなのに、いつしかヒット商品そのもの以外のブランド価値や企業の姿勢など(イノッチ・有働アナ)を好きになっていて、ヒット商品は使用していないのに、その企業を好きになって、その企業の製品を使い続けている。

これはCRM(お客様との関係づくり)やブランディングそのものではないでしょうか? 筆者は「あまちゃん」と「イノッチ・有働アナ」の最高の連携の中に、歴史上まれに見るCRMとブランディングの成功事例を感じた次第です。

「あまちゃん」のように売れる商品が立ち上がったあかつきには、ぜひ価値を広げてCRMも成功させたいものですね(^^


著者

幸田 八州雄 (Yasuo Kouda)

OEM化粧品のメーカーとして『物』を売るのではなく
『お客様の売れるをつくる』を方針に掲げ、商品プロデュース、
販売戦略、インフラの提案に至るまでお手伝いしております。

企業URL:http://www.tenshindo.ne.jp/