売れる商品開発に必要な『トレンドの本質』を見極める目

幸田 八州雄

今、子供たちの世界では『妖怪ウォッチ』が大流行しています。筆者には小学3年生の息子がいますが、妖怪ウォッチのゲームに使用するメダルが、欲しくてたまらない様子です。

先日、そんな息子を連れて某商業施設に行ったら、妖怪ウォッチと書かれた商品がまとめられているコーナーがありました。息子はそれを目指して走って行ったのですが、すぐに戻ってきて、「妖怪ウォッチの商品はあったけど、文房具とお菓子しかなかった」と、つまらなそうに言いました。

あらら??・・・妖怪ウォッチは大流行のはずなのですが。

でも、よく考えたら当然のハナシで、妖怪ウォッチというのはアニメも人気ですが、子供たちが夢中になっているのは、ゲームで遊ぶことです。

ですから、DSのソフトやメダルは欲しがられますが、文房具やお菓子は「別に欲しくない(ゲームと関係ないから)」となるのは当たり前と言えば当たり前のことなのです。

妖怪ウォッチの本質は、ゲームで遊ぶ楽しさでしょう。キャラクターグッズが欲しいのではないと思います。これがもしキティちゃんならどうでしょうか??

キティちゃんの価値の本質はカワイイことであり、キティちゃんのキャラクターグッズを保有することには意味があります。女の子なら、カワイイものは欲しくなるが当然でしょう。

つまり同じキャラクターグッズでも、

●妖怪ウォッチのキャラクターグッズは本質的な価値を外れた製品、

●キティちゃんのキャラクターグッズは本質的な価値に当てはまる製品

と言えると思います。

ところが商品開発の現場では、この当たり前のことが、案外意識されていない事が多いような気がします。

例えば・・・数年前に、女性用のシャンプーでは「ノンシリコンシャンプー」が大ブレイクしました。ノンシリコンシャンプーが大ブレイクして以降、本当にノンシリコンシャンプーの商品が増えました。このノンシリコンシャンプーの大ブレイクをどのように理解すべきか。

シリコン剤不使用のシャンプーが流行っている。というのは、これは表層的な事実です。ノンシリコンシャンプーの台頭の本質にあることは、女性消費者の善悪の価値判断が

●鉱物油系 = 悪   /   植物由来成分 = 善

●化学合成成分 = 悪 /  天然由来系成分 = 善

●化学   = 悪   /  自然 = 善

●大量生産 = 悪   /  手作り = 善

というような安心安全・ナチュラルイメージ重視の基準になっていることではないでしょうか?

その価値観の中で、石油系の被膜剤であるシリコンが悪者になり、ノンシリコンが安心安全・ナチュラル感を体現したように思われたのではないかと思います。

※ちなみに上の価値観が正しいとは言っていません。あくまでも消費者の方がそういうイメージを持っているという意味です。

おそらくシャンプーに関わっている方にとっては、ノンシリコンがナチュラル志向の産物であることは、いわば常識ではないかと思います。

しかしながら、上のように整理をしてみた時に、単に『○△成分不使用のノンシリコンシャンプー』と書くだけではなく、様々な売れる切り口が思いつくのではないでしょうか。

鉱物油系が入っていないことはみんな言っています。でも、なぜ鉱物油系を使用しない方がいいか、きちんと説明している商品はほとんどありません。

あるいは植物性のナチュラル感を訴求するために、『○○種類の植物由来成分を配合』とはみんな言ってますが、製品の手作り感をアピールした商品は圧倒的に少数派です。

世の中のトレンドの表層部分ではなく、そのトレンドのベースとなる消費者の内面を、本質の部分まで遡って考えると、見落としていた、様々なヒントが見えてくるのではないでしょうか。


著者

幸田 八州雄 (Yasuo Kouda)

OEM化粧品のメーカーとして『物』を売るのではなく
『お客様の売れるをつくる』を方針に掲げ、商品プロデュース、
販売戦略、インフラの提案に至るまでお手伝いしております。

企業URL:http://www.tenshindo.ne.jp/