日常の「不」に着目してヒット商品を考える方法

幸田 八州雄

毎日の生活の中で出会う商品に、いろいろな不満足を感じることがあります。

 ・こんな機能があったらイイのに
 ・こんな機能は要らないのに。
 ・使い勝手が悪い。
 ・量が多すぎる。
 ・量が少なすぎる。
 ・高くてもイイから1個だけ売ってほしい。
 ・デザインが恥ずかしい。
 ・収納スペースをとって邪魔になる・・・。

いろいろあると思います。

マーケティングや商品開発の本などを読むと、お客様の感じている『不』こそ、絶好のアイデアの宝庫であり、ビジネスチャンスであると書かれています。

これはベーシックな考え方ですが、まさにその通りだと思っておりまして、僭越ながら筆者も、商品を開発するときは、「お客様の感じている『不』はないか??」といつも考えています。

『不』から商品を開発した実例を一つお話しさせていただきます。

おそらくこのコラムをお読みいただいている全ての方が一度はお世話になったことがある商品ではないかと思います。マスクの話です。

身内の自慢話のようになってしまい大変恐縮なのですが、弊社社員に50歳のオジサン(失礼!)がいるのですが、この方の昭和な感じが理由だと思いますが、社内で【軍曹】と呼ばれています。以下軍曹で統一させていただきます。

今から約20年くらい前、不織布を製造するメーカーに勤めて軍曹は、工場勤務のパートの女性からある不満をぶつけられました。工場で作業をする際には、品質管理上、マスクをつけて作業をします。女性の不満は、そのマスクのことでした。

その方は割とお化粧が濃い(失礼!)方だったらしいのですが、「マスクをして作業をしたら、マスクに口紅がべったりついちゃうのよ!気持ちが悪いから、せめて1日2枚マスクを支給してもらえないかしら」

そう言われた軍曹は、「もうちょっとメイクを薄くしたら、多分問題は解決するんじゃないかな?」と言えるわけもなく、会社の総務に掛け合ったそうです。「マスク2枚欲しい人がいるんだけど・・・」と。

しかし総務の回答はNG。「1日1枚で我慢してください」と言われてしまいました。

・・・と、ここでイキナリ軍曹に、あるアイデアが降りてきました。

きっとひらめきとはこういうことを言うのでしょう。

さて、ここで当コラムをお読みの皆様にアタマの体操です。
下のQを是非お考えになってみてください。商品開発の疑似体験です。

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Q.軍曹がひらめいたのは、どんなアイデアでしょうか?

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さて、いかがでしょうか?

いろんなアイデアを思いつかれたと思いますが、軍曹はここで『マスクを立体的な形状にしたら、口紅がマスクにつかないんじゃないか?』と考えました。

その頃、マスクと言えば平たい形をした板状のモノしかない時代でした。

そしてその日から軍曹の試行錯誤が始まりました。そしてその結果、自社の不織布を使用した立体的なマスクが技術的に完成しました。そのアイデアと技術を、取引先であったユニ・○ャー○様に提案したところ、採用となり、○ニ・○ャーム様より日本(世界?)初の立体型マスクとして発売されたそうです。

それ以来、なぜ今まで立体ではなかったのか?という勢いで日本中のマスクは立体化していきました。今、特に冬場はみんなマスクをしている人が多いですが、例外なく立体型のマスクをしています。日本のマスクの形状を変えてしまうって凄いですね。

身内自慢で恐縮ですが、軍曹に敬意を表したいと思います。

ちなみに、軍曹は、このアイデアで当時の勤務先から○万円頂いたそうです。

その金額ズバは申せませんが、居酒屋で5回飲んだら消えてなくなるくらいの金額ということだけは、ホノめかしておきましょう(^^)


著者

幸田 八州雄 (Yasuo Kouda)

OEM化粧品のメーカーとして『物』を売るのではなく
『お客様の売れるをつくる』を方針に掲げ、商品プロデュース、
販売戦略、インフラの提案に至るまでお手伝いしております。

企業URL:http://www.tenshindo.ne.jp/