【第9回】半年でCVR6%超え 開店直後のECサイトでやったこと

酒匂 雄二

今回の様に、ご感想のメールを頂いたり、大きなセミナー会場で声をかけて頂いたりと日々ご縁のつながりを感じています。

タキシード、燕尾服、モーニングコート、フォーマルスーツ・・・

メイドインオオサカの紳士礼服を製造販売するフォーマル専門店ノービアノービオ。1952年に礼服の生地問屋として創業、今は製造から小売(ネットと実店舗)まで手がける、いわゆるSPA企業ですが、小さな小さな町工場です。

バブル最盛期、従業員230人 年商65億円、紳士礼服メーカーとして業界2位。バブル崩壊後、従業員20人、負債45億円、在庫は倉庫に14億円分。


年商65億から負債45億円、約100億円のジェットコースターを下りきった頃、服の「フの字」も知らない素人だった僕は楽天市場店のスタッフとして、この会社にやってきました。

順調に伸びていた頃、相次ぐ大手の参入で再び窮地に。首の皮一枚すらちぎれそうなとき、次々と訪れた出会いと気付きと・・・たくさんの先達に出会い、学び、SNSを使ってV字回復。

SNSは次々にピンチをチャンスに変えてくれました。

子供の頃から大好きだった僕の「ヒーロー」に自社のタキシードを着てもらえ、「僕より僕のことを知ってる日本一のファン」と抱きしめてもらえた・・・。

SNSをやってたら、売上が伸びて子供の頃から大好きだった方に約30年越しで対面が実現、これまでの想いを伝えることができ、夢がかなった瞬間。

スタッフ数人の小さなECサイトのごくごく平凡な僕に起こったウソみたいなお話。

これから記させて頂くことは特筆すべき秀でたスキルなど何もない普通の僕がやってきた、「今日から誰にでもできるお話」です。

このお話を通じ、皆さんのお店のコンバージョン率+0.1%~に少しでもお役に立つことができればと、経験した全てをお伝えしていきたいと思います。

【バックナンバーはこちら】
https://ecnomikata.com/column/20041/

商品を陽の当たる場所へ

写真は春の大山です。地元の方にすれば当たり前、普通、実はそれこそが宝物。鳥取県商工会連合会登録専門家として、足を運ぶに連れ、地方に眠っている資源に気付かされます。

8回目、鳥取県商工会連合会登録専門家を通して体験した鳥取のことから書き始めましたが、そのことがきっかけで1回目からお読み下さっていたという方からご連絡を頂き、7月の初旬に鳥取を訪問したとき、お会いすることができました。

ご対面の場で

「あのコラムには自社にないものがたくさんある」

そんな風におっしゃって頂いて、涙が出そうになるほど嬉しかったです。

今回の鳥取では2日間で7社を訪ね、早朝から経営会議、研修にも参加させて頂いたりもしました。商材や地域の個性を、ほんの少し日の当たる所へ出してあげれば、すくすく育つ。地方だからこそ、ECで世に出せば多くの人に手にしてもらえる、またその想いを強くしました。

「知らない」を「見たことある」に変え、「知ってる」に、そして「買ったことあるよ」に変える。それは「日の当て方」に違いないと思います。

このコラムも僕のような者が体験したそのままのことがどれほど役に立つだろうと思ってきましたが、ECのミカタさんを通じてたくさんの反響を頂くようになり、本当に皆さんに感謝新たにする日々です。

ECに長らく従事している方から、

「初心に立ち返ることができた」

というような感想を頂く一方で、今まさにECサイトの構築をされている方、これからECにチャレンジされるという方にも多くご縁を頂くようになりました。

そこで今回は、昨年ECサイトの立ち上げにご一緒した半年間の事例をご紹介したいと思います。

まずは作って、書いて、体に染み込ませる

半年でCVRが0.08%から6.10%へ。その間に投じた広告費用は10万円。

ご紹介するのはレディースファッションのECサイトの事例です。新しく立ち上げるブランドですから、知名度もゼロ。顧客もゼロからのスタート。

ブランドマネージャーはファッション業界経験豊富な方でしたが、ネットショップのご経験はゼロでした。

ECサイト立ち上げ初月のCVR(転換率)は0.08%。1000人やってきて購入者が1人いないレベルです。このお店が半年後CVR6.10%のサイトへと成長します。100人来れば6人が買って下さるサイトへと化けましたが、その間に投じた広告費は5万円×2回=計10万円だけです。


立ち上げ当初はデザイナーさんと一緒に、僕もコンテンツ更新をサポートしました。ショップスタッフに成り代わり、ブログを更新、facebookページの投稿も行いました。

まずはブログを更新し、SNSに載せることで着実にお客さんが来訪することを体感して頂くことから始めました。

「自分で書いた記事に含まれているキーワードの組み合わせで検索してくれている人がいる」

このことを立ち上げ直後に感じておくことは非常に大切だと思っています。これは、かつて「タキシード、ポイント10倍!」「タキシード20%OFF」みたいな、誰に向けての記事なんだというものを量産して、何にも売れなかった僕の体験から来るものです。

【最初から売ろうとしない】

ブログを始めて最初に体験してほしいポイントです。

「自分が書いた記事に検索でたどり着いてくれた人がいるんだ」

まずはその体験でいいんです。その積み重ねが、やがて

【この書き方をすれば見つけてもらえる。このキーワードの入れ方なら探している人に届く】

になります。

SEO、SEOと意識せず、まずは目の前にいる初めて出会った方に、自社の商品を丁寧に愛を持って説明するような書き方を心がけてください。

「安いでー!」「買ってやー!」というブログばかり書いていた僕が、お客さんと出会う中で気づき、お客さんから教えてもらえたことで、キーボードをポチポチしながら、「こう書いていれば、見つけてもらえる」「これは、こういうキーワードの組み合わせで引っかかるはず」を体感したからこそ、お伝えできることです。

この辺りのことは
【第4回】お客さんの「教えて」に向き合うコトでアクセスも売上も伸びた
でも触れているので、キーワード選定のご参考になれば幸いです。
https://ecnomikata.com/column/18406/


成果が問われる新規事業ではありましたが、立ち上げの数ヶ月、しっかりコンテンツ構築の時間を割いて下さったことで、腰を据えてブログやSNSに向き合うことができました。

この広告費ではない、人的・時間的にコストをSEOに割けるかどうかは中長期的にサイトの基礎体力に繋がります。僕がお手伝いさせて頂く場合は、この考えに寄り添って頂けるかどうかが、大きなポイントになります。

こちらのサイト、4月に立ち上げたECサイトのCVRは月を追うごとに着実に高まっています。まずは広告を使わず、自力でこの数字を作り出せているんだということを体験して頂きたかったのです。

CVR(転換率)は注文数からアクセス人数で割る数値ですから、当然アクセスが跳ね上がるとCVRは落ちます。

弊社でもテレビに取り上げて頂いたり、衣装提供させて頂いた著名人の方が自らのSNSで「ノービアノービオ」について触れて下さると当然アクセスは伸び、転換率は下がりますから、CVRが全てというわけではありません。

自社の平常時、基本となるCVRの数値を把握しておく、ひとつの指標として使っています。

こちらのサイトでターニングポイントとなったのは6月、商業施設でのポップアップストアが決まりました。このタイミングでECサイトの底上げとともに、催事店舗への集客も図るため、facebookとInstagram広告を同時に打ちました。

そこで意外な事実が浮かび上がってきました。

またしても、お店の思い込みを覆し突破口が見つかる

ここでも、お店の思い込みは違っていました。

facebookとInstagram広告においても出稿時のユーザーセグメントが非常に重要です。

6月に配信した広告では、ブランドが立ち上げの際に作られたブランドマップから±10前後の女性まで広げ、催事が行われる都内の商業施設まで公共交通機関を使い1時間以内で行ける範囲に絞りました。さらにファッションやショッピングなどの関心事でも絞り込みをしています。

出稿期間は2週間で5万円。広告費としては破格な方だと思います。

すると上図の通り、お店で想定していたよりも、若いお客さんが広告に強く反応、ECサイトへの来訪者も若い世代が多かったのです。

このデータをお見せすると、ブランドの担当の方々はブランドマップとのズレに少々落ち込まれていましたが、落ち込んでいる暇はありません。

逆に言うと大人女子向けに作ったブランドが、20代にも関心を持って頂いているのですから、その層により近づいていけばいいわけですよね。早期にこのズレに気づけたことが何よりの収穫で、今後のお店の加速力に影響していきます。

このようにお店の思い込みが商機をのがしている事例は意外に多く、コラム7回目にも書かせていただきました。

【第7回】思い込みやオゴリが商機を逃している
https://ecnomikata.com/column/19010/

頑なに売り手の思い込みの壁を作っていることで、商機をのがしていることは意外と多いのです。

こちらのお店ではすぐに対応を頂き、このデータとECサイトのアクセスデータを照合し、お客さんと同年代の女性スタッフさんをSNS、コンテンツの中心に据えて

【私はこう着ています。こういうコーディネートもできますよ。オンでもオフでも。】

という提案型へのコンテンツに切り替え、更にきめ細やかなコンテンツを書いていきました。


そして運命の7月、クリアランスセールのタイミングで一気に注文が入ります。

6月のCVRは3.87%と7月のCVRは6.10%に高まりました。

もちろんクリアランスセールが当たったことはありますが、リスティング広告もありません。ECモールでもありませんし、そこでの広告もありません。

アクセスのベースは、催事を含むこれまでの購入者、来訪者、そしてfacebookとInstagram広告で獲得できたお客さんとそのお友だち。SNSでは、この友だちの友だちというユーザーの広がりが非常に重要ですね。

お店の数字の変化が特に顕著だったのは6月の後半2週間から、7月に入った2週間です。

そのCVRは下図の通り。

お客さんと中の人をフィックスしてCVR3倍

お客さんと中の人をフィックスしてCVR3倍PCのCVRは2週間で3倍に。スマホのCVRは7.3%にまで伸びました。

アクセス数が伸びながらも、CVRも飛躍的に伸びています。

サイトに来訪しているお客さんの層をみて、そのお客さんと会話するかのように接客できるスタッフ。これはおそらく実店舗のアパレルショップならごくごく普通ですよね。

実店舗だから、ECサイトだから、という違いは接客において差はないのではないか、そんな風に思います。

そうすると、やはり狙い通り。スタッフの女の子が実際にオフィスで着ている着こなしをブログやInstagramに上げていくと反応がつぶさに出てきました。

冒頭の時系列の中の8月を観ていただくと、注文のグラフが8月半ばにピタッと止まっています。これは、春夏物をしっかり売り尽くし、お盆明けから始まる秋冬商戦に備え、しっかりきキャリー在庫を無くしたことを意味します。

8月、春夏の在庫が尽く頃、並行して、お盆明けから入荷する秋冬物の予告をして、お客さんに並んで頂くといった店舗と同じようなかたちです。

9月、トレンドカラーやトレンドデザインを取り入れた秋冬物のスタートダッシュを切り、10月にはもう一度facebookとInstagram広告を6月と同じ様に2週間5万円で打ち、しっかりお客さんに来店頂けるようになりました。


4月の開店初月、0.08%だったCVRは6.1%になり、しっかり半年で基礎体力をつけることができました。

ここで言う基礎体力は、リピーターさんの創出ももちろんですが、お客さんのイメージを持ってコンテンツを作り、そのお客さんにしっかり届けられる記事を作れるコンテンツ力の基礎でもあります。

こうなってくると、後はもうスタッフさんが自ら楽しんでコンテンツ作れるようになり、放って置いても、お客さんと交流して楽しむようにお店の運営ができるようになっています。

店頭で、お客さんと会話しながら好みや似合う色を提案している感覚にとらわれます。

実際に従事したスタッフさんが下記のようにおっしゃってくださいました。

「店舗とネットでは違うと思ってましたけど、どっちも同じですね。会話する感じでいいんですね。難しい~嫌だ~って思ってましたけど、楽しくなってきました」

まさにその通りですし、コンテンツを作ることが楽しい領域に入った方ならもう大丈夫。体に染み付き始めている証拠ですから。

実店舗もネットも、結局は人同士なんですよね。

コーディネート提案のコンテンツが充実したことにより、立ち上げ当初ブランドマップにあった想定客単価7,500円も、半年後には11,600円になりました。

2点、3点とセットで買われる方が増えている証拠ですね。そして、売れない時期が続くとつい手を出してしまいたくなる、不用意な値引きに走らず耐えてくださった成果です。


何度か、このコラムでも書かせて頂いているように、僕は広告を悪だとは思っていません。使い方と、その広告で得たデータをどう活かすかだと思っています。

今回のお店では半年間で5万円×2回、10万円の広告費を投じました。この店舗さんは催事もあったので、ECと催事をつなぐO2Oが狙いだったので、その考えに基づいた運用をしました。

皆さんのお店では商材や販売形態も異なると思います。そこで自社にはどういった展開がいいか、どういうお客さん(年齢・性別)なのかをしっかりとイメージして下さいね。

それを強くイメージできるようになるためには、コツコツとコンテンツを作り、サイトへのアクセス解析をすることが大切です。

デパートの物産展、展示会、ショールーム、催事、実店舗がある場合はさらに一捻り!ですね。

コンテンツ力を養うコツは
【第6回】SEOは「誰も自分のことを知らない」を受け入れてから始まる
で、詳しくご紹介していますので、そちらもご一読ください。
https://ecnomikata.com/column/18839/



第9回も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
ぜひぜひ今回のご感想・温かいお言葉をよろしくお願いします。
http://www.machicollege.jp/contact

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次回のお話は、モールと本店(自社サイト)とブログを見比べ大発見!
お客さんのニーズの探し方について具体的なご紹介をしたいと思います。

次回も宜しくお願いします!

→【第10回】「想像」と「妄想」がカギ?ロングテールで商機を掴む
https://ecnomikata.com/column/19588/

著者

酒匂 雄二 (Yuji Sakoh)

1977年大阪生まれ。
ネット通販会社、ゲーム会社を経て、2005年紳士礼服SPAの株式会社NFLに入社し、
タキシード・燕尾服などフォーマル専門店ノービアノービオの楽天市場店を担当。
現在はBtoB、実店舗・ECサイトを統括。

自社ECサイトは2017年、イーコマース事業協会(EBS)主催の
第9回全国ネットショップグランプリで準グランプリを受賞。

利益が残らない薄利多売・広告依存から脱却するためSNSを活用、
広告費をゼロにしながら売上を飛躍的に改善。

自社の成功事例を共有するべく異業種交流会「まちカレッジ」運営の傍ら、
中小企業やECサイトの支援、セミナー講演も多数。

大阪地域密着型クラウドファンディング「FAAVO大阪」も運営、
企業や団体の資金調達支援も行う。

・フォーマル専門店ノービアノービオ
http://www.novianovio.com/

・中小企業の勉強会・異業種交流会まちカレッジ
http://www.machicollege.jp/

・大阪地域密着クラウドファンディングFAAVO大阪
https://faavo.jp/osaka

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