ECサイト購入フォームの重要性とカスタマイズのポイント

松元貴志

株式会社Brandism松元です。
見落としがちなECサイトの購入フォームについてお話させていただきました。

購入フォームに問題があれば本来買うはずだった顧客が離脱し、他社の商品を買ってしまうこともあります。はじめてEC事業に取り組まれる方や購入率がなかなか上がらない事業者野方は必見です。

EC事業運営において重要なポイントはランディングページ(LP)のコンバージョン率(CVR)を向上させることです。コンバージョン率とは、ランディングページに訪問した人の中で何%の人が購入完了するかという指標です。そして、コンバージョン率に寄与するポイントとして見過ごしがちなのが購入フォームです。

購入フォームとは、氏名、住所、電話番号に加えて、クレジットカードなどの決済情報を記入するものです。

ランディングページを見て、購入したいとユーザーが思っても、個人情報の記入が面倒であったり、仕様がわかりにくい場合は離脱を起こしてしまいます。

特に、インターネットの買い物は衝動的に行われることも少なくないため、購入フォームで離脱してしまった場合、二度とサイトを訪れないこともあります。

取りこぼしを少なくするためにも購入フォームを最適化し、コンバージョン率を上げることを意識する必要があります。

EFO(Entry Form Optimization)とも呼ばれますが、購入フォームを最適化できる仕様になっているカートを選ぶことが重要です。

今回は購入フォームのカスタマイズの観点から、ECカートの選び方をご説明いたします。

購入フォームが重要な理由

購入フォームは、カートごとにデフォルトの設定が決まっております。カスタマイズすることもできますが、ECカート会社によって提供されているフォームを基に改良することになります。

購入フォームで離脱が起きる事例

実は気づかないうちに購入フォームの記入で離脱している例がたくさんあります。「記入しようと思ったら、どのように記入したらよいかわからなかった」「購入ボタンを押したら未記入の場所があると表示されたがどこが未記入かわからなかった」「職業や年齢など答えたくない質問が多かった」「購入確認画面へ進んだが、送料がかかるとは知らなかったので購入を辞めた」など様々なパターンがあります。

他にも商品を購入しようとして、購入画面に移動している途中で離脱してしまうことが珍しくありません。総合EC通販サイトの解析を行うと、ECサイト上の買い物カゴにモノを入れたとしても、購入フォームに個人情報を入れている間に離脱したり、最後の購入確認画面で離脱したりする割合が高くなります。買い物カゴにいれてから50%の人が途中で離脱するECサイトもあります。

スーパーで一度カゴに入れたものを元の売場に戻して購入をやめるという行為に比べて、ECのサイトでは買おうと思ったものをやめようとすることへのハードルが低いです。

そのため、購入を検討し、購入フォームに移動したらできるだけ負担をかけずに購入していただくようにすることが重要です。

おすすめはLP一体型

100点以上の商品を取り扱っている雑貨サイトを除くと、EC上では販売しているランディングページ上で購入まで完了することが望ましいです。

特に、wifi環境下ではなく自身の携帯電話の回線で買い物をする場合、購入画面にページが遷移するだけで読み込みに時間がかかることによるストレスで購入をやめてしまいます。

必需品ではない買い物はちょっとしたことがきっかけで購入される/購入されないという行動が発生するため、細かいところにも注意を払う必要があります。

昨今は格安simの利用者も多く、電車での移動中で読み込みに時間がかかり、買い物体験にストレスを感じているユーザーも少なくありません。

商品ページと個人情報を記入するページが一体となっているLPの一体型であれば、購入を検討してから離脱する確率が低くなるため定期購入を導入している場合はおすすめです。

エンジニアがいなくても購入フォームのカスタマイズできることが重要

購入フォームはランディングページ(LP)と同じくらい多くの試行錯誤を経てベストなフォームを作ることになります。

例えば生年月日1つとっても、生年月日タブを選択したときに1900年が表示されていると、1970年まで探すのが大変です。例えばデフォルトで設定される生年月日を変更することが簡単なECカートを選ぶことが重要です。50代購入者が多い商品では最初から1970年に設定しておくことが可能となります。

他にも外出先のカフェや電車の中で買い物をしようとするときに、クレジットカードの裏側の3桁の番号(セキュリティコード)を確認するのはめんどくさいのではないでしょうか。お客様ができるだけ手軽に購入できるようにカスタマイズしてくことが重要です。

最短配送日の設定も、祝日か平日かによって自動で設定を変更することや、平日は13時で当日配送を打ち切りたいといった倉庫とも関わる設定をする必要があります。特にコロナ禍や自然災害時は配送が滞ることも多くあるため、即時に表示される配送日を変更する必要があります。エンジニアがいなくても以上のような設定ができるECカートを選ぶことをおすすめしています。

決済方法についても多様な選択肢の導入ができます。例えばAmazon Payは個人情報の入力の手間がなく購入できる手法として幅広いECサイトで導入されています。どの決済方法があるとお客様にとってよいかもテストすることができます。

薬機法で罰せられないため重要になる購入フォームの表示

特に購入フォームや購入完了画面には、定期購入の場合は定期購入である旨や、税込み価格での正しい金額を表示する必要があります。

特定商取引法第11条第5号、省令第8条第7号には「商品の売買契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び金額、契約期間その他の販売条件」という説明があります。

定期のつもりで購入していないのに、定期購入になっていたというクレームを消費者庁に連絡するお客様も中にはいらっしゃいます。実際にはランディングページに定期購入の旨、書いていたとしても連絡がいくので購入確認画面や購入フォームにしっかりと書いておきましょう。

海外製サービスの購入フォームは自由度が低いためEFOがやりづらい

海外製のECサービスが増えてきていますが、購入フォームの最適化がやりにくいものも少なくありません。

住所の記入や配送日設定などの細かな部分が追いついていないところがあります。英語のものを翻訳して作られているため不自然なところがまだまだあるのが現状です。

購入フォームをエンジニアなしで作り上げていくためには、日本製で日本人の購入習慣やEC商習慣にのっとっているものを選択することがおすすめです。

チャットボットの導入は必須

チャットボット型の購入フォームが流行しています。チャットボットは特にモバイルで購入する場合にのみ表示される事が多いです。PCでは表示せず通常の購入フォーム設定にしている事業者が多いです。

チャットボットを導入するかどうかについては、一部の例外をのぞき必ず導入することをおすすめしています。

モバイルにおいてはチャットボット型の購入フォームが購入の確率があがることが多くのEC事業者で証明されています。ランディングページコンバージョン率が3%で、月1000万円の売上の事業者がいるとします。

コンバージョン率が0.1%伸びるだけで売上が33万円、コンバージョン率が0.5%伸びると167万円の売上増加になります。導入コストを考えてもチャットボットによってコンバージョン率があがる現状をみるとすぐに導入してみるとよいでしょう。

チャットボットには、コンバージョン率改善以外にも導入するメリットがあります。チャットボットの中で「ついで買い」を目的とした商品紹介をすることができます。

ユーザーはランディングページ自体をしっかり見ているようでよく見ていません。しかし、チャットボットに購入中は、チャットボットに表示される情報をよく見ています。チャットボットの流れで、一緒に買うことをおすすめすると購入確率があがります。購入金額があがるので、クロスセル施策を実施することができ、LTVの上昇につながります。

実際に売れているサイトの購入フォームをチェック

実際に良い購入フォームをチェックしてみましょう。Dr.Stickというタバコの代替品にあたる嗜好品のECサイトになります。
https://ec.dr-stick.shop/lp

モバイルサイトでチェックしていただけるとわかりやすいのでモバイルにてフォームを開いてみてください。

あと何項目を入力したらよいかが一目でわかります。また記入完了した箇所は白に、未記入の箇所がオレンジとわかりやすくなっています。

カタカナの箇所に漢字をいれると、入力しなおしの必要があるなど、細かな対応も設定されています。

住所も郵便番号をいれると、番地からの入力になるため手間が省けます。

お支払い情報が後払いがデフォルトの設定となっていますが、後払いの購入者が多いか、もしくは、クレジットカードがなくても買えることを訴求するために後払いがデフォルト設定となっているのかもしれません。

1項目ごとにテストを重ねてフォームができていきます。特に嗜好品の場合は、何かのきっかけで購入をやめる可能性があるため、ストレスなくスムーズに買い物が終わることが求められます。

ぜひ今回のDr.Stickを参考にしてみてください。

お客様が迷わない購入フォームづくりのポイント

購入フォームを考えるうえで2つの観点から考える必要があります。1点目は配送のために必要最小限の情報だけ集めることです。例えば、女性向け商材であれば性別を記入する必要すらありません。氏名のふりがなも必要ないかもしれないですし、パスワード記入を2回させる必要もありません。

2点目はデータ分析のために情報を集めることです。配送だけ考えると年齢は不必要ですが、購入者のデータ分析をしたい場合は年齢や職業を集めておくと今後のマーケティング施策に役立つでしょう。しかし、データを集めたいばかりに記入量が多すぎると、離脱が起きますので、集めたい情報は最小限にしておきましょう。

ある程度の購入者が出てきたタイミングで購入フォームを変更して集めたい情報を集めることをおすすめします。例えば、定期購入領域を中心にEFOに定評のある「ecforce」では購入フォームの変更が簡単にできますのでPDCAサイクルを高速で回すことが可能です。

購入フォームは決済部分も関わるので慎重に扱う必要がありますが、エンジニア不要で様々なテストができる点が「ecforce」は支持されているようです。


著者

松元貴志

早稲田大学創造理工学研究科経営デザイン専攻修了。新卒でユニリーバ・ジャパンに入社し、ヘアケアマーケティングブランドの従事。人材関連会社を創業し、人材会社に売却。その後、代表を務める株式会社メジオにてD2C事業を開始。アパレル事業からヘアケアの定期通販事業まで展開。現在は創業した株式会社BrandismにてD2Cブランド立ち上げを支援。

https://brandism.co.jp/