UGCを掲載するだけでは売れない!UGCの運用が大切なワケ

村岡 弥真人

SNSやレビューサイトなどに投稿される「UGC」をECサイトやLPに掲載することでCVRや売上が向上するEC企業が増えています。しかしながら、単にUGCをサイトに掲載するだけでは購買を後押しすることは難しく、生活者が何を求めているのかを想定し、そのインサイトに合致する流れの中で適切なUGCを掲載し、成果に合わせて最適化し続けることが必要です。そこで今回は、UGCを運用することの重要性や、運用する上で押さえるべきポイントについて解説します。

「UGCを運用する」とは?

「UGCを運用する」とは、UGCを生成→ECサイトやLPに掲載→効果に基づいて最適化→そしてまたUGCを生成する…というPDCAサイクルを回していくことを指します。マーケティング業界ではこれを「運用型UGC」と呼んでいます。

「運用型広告」において、ユーザー属性・チャネル毎に訴求やクリエイティブの運用を行うように、本来UGCも目的・場面に応じて成果の出る見せ方や内容は大きく異なるのです。そのため、 UGCも成果を定量的に把握した上で、目的・場面に応じて出し分けや入れ替えを行うことによって成果につなげることが可能となります。

なぜUGCを運用する必要があるのか

しかし、まだ多くの企業が「UGCツールを用いてサイトに掲載する」止まりになっており、本来UGCが持つ価値を最大限に生かし切れているとは言えません。改めて、この運用が重要な理由について解説します。

①UGCの摩耗
前回の記事でもお伝えしたように、サイトにUGCを掲載し、CVRが一時的に改善したとしても、時間の経過と共に改善率は徐々に低下することが、我々が提供するUGC活用サービス「Letro」の実績からも明らかとなっています。3社の平均CVRを調査した際には、掲載初月を1とした場合、3ヵ月目には0.7倍にまで低下していました。

運用型広告においても、同じ広告クリエイティブを使い続けると徐々に効率が低下する(摩耗する)のと同じく、UGCも利用量に応じて、効果が徐々に下がることがこの結果からも言えるでしょう。一方で、UGCの運用を行うことで8割以上のEC事業者がCVR1.2倍以上に改善するという実績も存在しますので、成果を維持するためにも、掲載するUGCを定期的に差し替えたりするなどの手を打ち続ける必要があるのです。

②UGCは万能ではない
LP①でCVRを1.2倍向上させたUGCが、訴求軸が異なるLP②に用いても同様の成果を出せるとは限りません。広告クリエイティブが、対象に合わせて掲載する文言や画像を考案・制作するのと同様に、対象層に応じて効果的なUGCは異なるのです。

具体的には、潜在顧客層向けと顕在顧客層向けで、高い効果を発揮するUGCには異なる傾向が見られることが多くあります。商品に興味を持ってもらい、その魅力に気づいてもらう必要がある「潜在顧客層」には、視覚的にインパクトのある画像や動画を用いて、まずは商品に興味を持ってもらえるようなUGCが効果的でしょう。一方で購入を促すための具体的な情報提供が必要となる「潜在顧客層」には、テキストレビューを用いて、実際に商品を利用した際の効果や変化を示すことが効果的でしょう。

UGC運用において、EC企業がやるべき3つのこと

UGCの運用で成果を上げるためには、以下3つの要素を押さえる必要があります。

①継続的なUGCの生成~収集する仕組み作り
UGCを運用するためには、継続的なUGCの生成が欠かせません。既存顧客からテキストレビューやSNS投稿が生まれる仕組みを取り入れる、SNSキャンペーンやギフティングなどを通じて商品の利用者によるUGC投稿を促すなど、「常に新しいUGCが生成される仕組み」を構築する必要があります。また、ツールやシステムなどを用いて、生成されたUGCを即座にキャッチできる仕組みも重要となります。
※景品表示法に違反しないように依頼の仕方や表示方法に十分に注意しましょう。

②UGC活用の効果を数値で測定できる仕組み作り
UGCによる成果を「なんとなく」測るのではなく、しっかりと計測できる仕組みを構築して定量的に測ることが大切です。無料で利用できるA/Bテストツールは複数存在しますので、自社のノウハウやリソースに合わせて、適切なツールを選択すると良いでしょう。

③UGCの運用を回し続ける体制作り
UGCの生成→掲載→効果測定→そしてまたUGC生成…というプロセスを、複数チャネルを横断して行える人材や組織体制が必要です。まずは、サイト運用・LPOを担当される方がトライし、小規模なテストから実施するのが良いでしょう。このテスト結果によって、どのUGCが最も効果的であったか、どのチャネルで最も反響があったか、そして生活者が何を求めているのかを理解することができます。こうした結果を蓄積していくことでより制度の高い運用が行えるようになります。

EC企業のUGC運用事例

最後にUGCの運用を行ったことで成果が上がったEC企業の事例をご紹介します。

1. AI通訳機「ポケトーク」
ポケトークでは、「ポケトーク=通訳・翻訳機」だけでなく、「実際に言葉の壁を越えることで、お客様にはどういった変化があるのか?」「どんな体験がもたらされるのか?」をサイト上で伝達するためにテキストレビューの活用に着手しました。

まずはじめにテキストレビューをより充実させるために、製品利用者からレビューが生成される機会を設計し、「利用シーン」や「『ポケトーク』を利用した際の具体的な体験」についての感想が発信される仕組みを構築。収集したテキストレビューは、オンライン上で活用可能なテキストレビューコンテンツにして「ポケトーク」の購入につながる各ページに掲載しました。その後も、CTR/CVRを計測しながらテキストレビューを運用していくことでCVRを1.32倍に伸長することに成功しました。

2.「再春館製薬所」
再春館製薬所では、従来行ってきたネット広告やテレビCMの広告出稿だけでは顧客獲得が難しくなる中で、テキストレビューやInstagram投稿をはじめとするUGCの運用施策に着手し、顧客獲得効率を改善しています。

新規獲得用LPでは、お客様からの喜びの声として、「ドモホルンリンクルをはじめたきっかけ」や「使用した際の感動体験」が表現されたInstagram投稿を掲載。CTRやCVRをはじめとする定量データや、UGCから見えてくる顧客インサイトをもとに、UGCの掲載位置や表示するUGC、UGC上部のバナーの運用を行うことでCVR1.51倍を実現することができました。現在では、UGCをCVR向上のコンテンツとしてだけでなく、顧客体験を向上するためのコンテンツとして活用の幅を広げています。

まとめ

今回は、UGCの運用の重要性について解説しました。広告の出稿単価が高騰し、顧客獲得の難易度が上がり続ける中で、広告費を抑えながら顧客獲得件数の増加を可能にする施策がUGC活用であり、既に多くのEC企業がUGCの運用を行うことでその価値を実感しています。ご紹介した重要ポイントを踏まえ、ぜひ一度自社のUGC活用を見直してみてください。


著者

村岡 弥真人

大手ガラスメーカー勤務を経て2012年にアライドアーキテクツ入社。2014年よりSNS広告に特化した広告代理事業を立ち上げ、自社最大の事業まで事業拡大を行う。2016年にUGC Centric Creative Platform "Letro"の提供を開始、Facebook及びInstagramのオフィシャルパートナーに。2017年より自社プロダクト事業全体の統括を行い、ベトナムの開発子会社2社の経営も兼任。2018年CPOに就任。2021年取締役就任。