2つの価値
商品には『基本価値』と『補助的価値』の2つがあると考えます。
『基本価値』とは、その商品に一番求められる価値と言い換えることが出来ます。その商品を購入することによって必ず満たされなければならない価値です。例えば、ケーキであれば『美味しい』、定食屋であれば『お腹がいっぱいになる』ということです。
『補助的価値』とは、『基本価値』ではないが、それを補助してくれる価値(※付加価値と言う人もいます)のことです。価値の本質ではないので、小手先であったりテクニック的になりがちですが、『分かりやすいので差別化しやすい』という特徴を持っています。例えば、先に出たケーキで言うと
・ケーキのデコレーションが可愛い
・素材にこだわっている
・ケーキを入れる手提げ袋が素敵
・ポイントカードがある
・誕生日月にプレゼントをくれる
しかし、これらの『補助的価値』は、どれだけたくさんあっても競合店に一瞬で真似されてしまいます。競合店が強くて頭が良ければ、自社の価値よりもっと良い価値を開発されてしまうかもしれません…。
つまり、『補助的価値』をたくさん創ることや提供することに注力するよりも、『基本価値をいかにして高めるか?』に時間やコストを使った方が得策ではないかということです。
勿論、パテシエが世界大会で優勝する腕前を持っている、というような『基本価値』を高めたり、その根拠・証拠になるようなケースは別です。これはもっとあった方が良いです。
現在では、世の中に存在するほぼ全ての商品・サービスは『平均点以上の品質』をクリアした『そこそこ良いモノ』です。しかし、実は時流の変化に伴ってそうではなくなってきている(低くなってきている)のではないでしょうか? と同時に、『基本価値』が平均以上のように見えるし、大差が無いと思い込んでいるので『補助的価値』で勝負せざるを得ない状況になっているように思います。
これは私見ですが、多店舗展開する大手小売店に行くと、こんな商品がこんな価格で売っているの!?と驚くことがあります。私にとっては、価格が商品価値を越えていないように見せるので、そのように思ってしまうのですが、『大手が売っているから』、『有名だから』、『誰もが持っている(使っている)から』という理由で、売り手も買い手も『実は商品やサービスの基本価値が低くなっている』ことを見過ごしているのではないでしょうか。
『国産だから安心…』という、日本の食の安全神話みたいなものですね…。今の時流でよくよく考えてみると、『基本価値』が低くなってしまっている、ないがしろにされている、という事が非常に多いのではないでしょうか?
自社の取り扱い商品の『基本価値』も平均以上だと思い込んでいないでしょうか?
1)(改めて)自社商品の基本価値って何だろう?
2)その基本価値は今の時流ではどうなっているのだろう?(高まっている?停滞?低下している?)
3)基本価値を更に高めるにはどうすれば良いのだろう?
4)基本価値を高める補助的価値って何だろう?
5)その補助的価値の中で今消費者が本当に必要としているものは何だろう?
このように、今一度胸に手を当てて自社の商品やサービスの基本価値を振り返ってみるのも良いものです。
言うまでもありませんが、『基本価値』も『補助的価値』も両方大事ですが、『基本価値』が低下したり無くなっているのに『補助的価値』を高める意味は無いのです。
ただ、大手メーカーが作っている家電製品のように、『基本価値』で差別化しにくい・出来ない場合は、『補助的価値』を磨くことは非常に重要です。しかし、その場合は『いかに競合他社とは違う視点(切り口)で』、かつ『消費者に本当に必要とされる価値』があるかどうかで勝負が決まるように思います。『補助的価値』は、家電製品の使わない機能のようにたくさんあれば良いというものでもないという点もポイントだと思います。