オムニチャネルを加速するのはシステムではない!販売員の接客力を活かす秘訣
今回はECとブログが融合した「カエルブログ」を例に挙げて、これからのオムニチャネル時代の接客の在り方、店頭の「接客力」を活用する秘訣を考えてみたいと思います。
「ケースから読み解くオムニチャネル」
Vol.1 http://ecnomikata.com/column/detail.php?id=4941
Vol.2 http://ecnomikata.com/column/detail.php?id=5130
Vol.3 http://ecnomikata.com/column/detail.php?id=5396
「カエルブログ」とは? 買える+ブログ!
「カエルブログ」とは、その名の通り「ブログ」掲載商品がそのまま「WEBで購入(カエル)」か「店頭お取り置き予約(持ってカエル)」ができるサービスです。ショッピングセンター(SC)向けのサービスとして、パルコでは「カエルパルコ」という名で2014年5月から導入されました。
カエルブログの仕組み
① 販売員が商品情報(商品名/商品画像/価格/カラー・サイズ・在庫数等)を入力し、ブログを投稿する。
② SCのWEBサイトに「カートに入れるボタン」と在庫・バリエーション情報付きのショップブログとして表示される。
③ お客様から注文が入ると、販売員が商品をピッキングし、店頭から出荷。「店頭お取り置き」の場合は、お客様来店時にレジでお会計。
SCのビジネスモデルとマッチした「カエルブログ」
SCのビジネスモデルは「SCを開発する→出店テナントと賃貸借契約を結ぶ→家賃、または売上に応じた営業料収入を得る」という不動産業です。そのためSCは、出店テナントの商品・在庫情報を保持しておらず、SCが(店頭在庫を活用する)ECを運営することは困難だと言われていました。そこで、販売員が運用する店頭ECへ発想を転換し、誕生したのがカエルブログです。
店頭の「接客力」を活かす秘訣
1.頑張った成果は店頭の売上に
メディアが多様化した昨今、企業もブログやSNSに注力し、顧客接点の拡大を図っています。この潮流はリアル店舗にも波及していますが、店舗に活用してもらう段階でつまずいている企業が多いようです。その原因は、効果を実感しにくいから。通常業務で多忙な販売員にブログを活用してもらうためには、効果を実感できる仕組みが重要です。
「カエルブログの売上=自店の売上になる」という仕組みが、カエルブログを活用するモチベーションになっていることは間違いないでしょう。カエルブログ導入の際に、本部の方から「店舗に負担を掛けたくない…」という声を耳にしますが、実際は「売上に貢献するのであれば、すぐにでも実施したい!」という店舗がほとんど。店舗は売上やお客様のためになることであれば、とてもポジティブに取り組んでくれます。
2.リアルタイムに反応が実感できる
・朝、カエルブログの管理画面を見たら、昨夜閉店後に受注が入っていた。
・商圏外のお客様から注文が入るようになった。
・自社ECサイトで売切れの商品をアップしたら、すぐにカエルブログで売れた。
これらは実際に販売員に聞いた、カエルブログ導入で嬉しかった点です。時間・商圏を問わず、お客様が増えることが販売員のモチベーションアップに繋がることがうかがえます。また、今までブログの指標はPV数が主でしたが、カエルブログでは受注という形で反応が実感できるようになり、なぜ売れたのか、どうしたら多くの人に読んでもらえるようになるのか、試行錯誤し、新たな視点でブログを書くようになります。店舗にブログを活用してもらうには、反応が実感できるこうした仕組みが必要不可欠です。
リアル店舗の最大の強み。それは、お客様・商品に最も身近であること
オムニチャネルというと、在庫データや顧客データの連携・統合といった壮大でシステマチックな対応を想像しがちですが、お買い物体験をするのは生身の人間であることを忘れてはいけません。ネットで下調べして買い物に行ったら、販売員に勧められた別の商品も買ってしまった、という経験は誰しもあるはず。自社の“人の力”とITを掛け合わせ、いかに最大化していくのかが、オムニチャネル戦略の要になります。事業としてのECサイトが頭打ちな今、事業ではなく機能としてのECの形が増えていくことでしょう。
次回は、カエルブログから見えてきたオムニチャネル時代の接客スキルを解説したいと思います。