組織とWEBサイトを統合する時の基本思想 ~カメラのキタムラ EC成長の道のり~

逸見 光次郎

逸見光次郎の連載コラム「カメラのキタムラ EC成長の道のりと今後の展望」
第3回:「流れを良くすると仕事がはかどる?」
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/7000/

第4回:「仕事をもっと楽しく、そして儲かるようにしよう!」
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/7078/

第5回:「EC専門子会社ピックオンの統合と、キタムラEC事業部の発足」
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/7164/

組織の統合

2012年9月、EC専門子会社ピクチャリングオンライン社(香川県高松市。通称:ピックオン)と株式会社キタムラ商品EC部ネット物販部、ネットイメージング部(横浜市港北区新横浜)を統合し、EC事業部を発足する事が決定しました。期日と全体の形が決まったら、後はどうやって動きやすい組織にするのか、それを考えるのが大事です。

それまでにも手探りながら、縦割りではなく、お客さまに対して横串を刺した、機能別組織になるように組織を組み替えていましたが、整えるちょうど良いタイミングです。

私の中の大原則は、営業部隊と管理部隊に物理的に分けないこと。分けて距離が出来てしまうと、営業は、出荷やサポートなどの苦労が見えなくなり、管理は、作業効率優先となって“売る事”を忘れてしまいます。新横浜に営業部隊を集中し、高松を管理部隊にしたらどうか、という意見が多い中、この事だけは譲りませんでした。今まで20年近いEC・店舗業務経験の中で、商品・販促・カスタマーサポート・物流・会計・総務・システム等々、あらゆる業務を担当してそれぞれの視点からの各部署の見え方を経験していたからです。

いつも商品担当とカスタマーサポートが直接言い合ってる位が健全な組織だと思っています。距離が出来ると会話もなくなり、最後には責任の押し付けあいになります。そこで図のように新横浜と高松双方にまたがる商品部を置き、業務を分担してもらいました。

もうひとつ。キタムラは小売なので基本は店舗別売上管理となりますが、ECは部門別指標に重きを置く事にしました。本店、楽天店、ヤフー店、アマゾン店とそれぞれ店長は置きますが、モール3店の店長は基本同じに。何故なら売上を競って同じ倉庫在庫をモール3店の店長が取り合ったら、価格を下げあって利益が減るだけだし、モール店は各モール企業の方針や施策が大きく利益に関わるので、同じ人間が楽天、ヤフー、アマゾンの話を聞いていた方が何かと便利だからです。

最初は手探りでしたが、本店・モール3店、宅配・店受取という売上・目標指標は各店舗として持つものの、各担当者はカメラ・中古・用品・ソフト商品・家電・時計など商品部門単位で数字を見る事を重視し、バイヤーとの連携、店舗との連携が取りやすい形に発展してくれました。

いずれも経験と感覚による方針だったので、最初はバタバタして皆に迷惑をかけましたが、だんだん意図を汲み取って、形にしてくれた事には感謝しています。

WEBサイト統合と、キタムラeモール化計画

社長の浜田さんとの合意は、この際全て一本に統合してしまおう、でした。最終的にeモールという形への統合を描きはじめたのもこの頃です。ECだけではなく、キタムラのお客さまから見てわかりすいように、キタムラのネットサービス+店舗という観点で、各サービスも会員も一本化出来るように整理が始まりました。

まずは図の通り、重複している楽天店やネットイメージング(プリント)店を統合、モール3店をデジカメオンラインからキタムラネットショップに改称していきました。“キタムラ”に統一する事で、全国直営900店舗が持つ安心感をネットでも感じていただき、店受取が出来ないモール店でも“キタムラ”と知っていただき、利用を増やす為です。前述の通り最初は各店舗毎の売上へのこだわりが強かったですが、徐々に会社全体を見て、EC各店舗+実店舗を横通しにした部門毎の売上・利益の最大化を意識して動いてくれるようになりました。

その中で課題は、単なるサイト統合から、システムの一本化へと進んできました。当時はピックオン側はABROAD→ECオレンジ、キタムラ側はコマース21というパッケージを使っていました。それ以外に中古はPOS系システム、イメージング(プリント)は自社および富士フイルム社の複数システムとなっており、会員体系もピックオン会員とキタムラネット会員を会社統合時に統合したものの、各サイトを自由に歩き回れる(シングルサインオン)機能にはなっていませんでした。

ECのシステムは常に改善が必要です。いわゆる会計などの基幹系システムで設計に1年、構築に2年かけるのとは違い、ECでは大規模なら3ヶ月に一回、小規模なら週に1回は改善を行いながら、常に完成度8割というのが理想だと思っています。常に完璧を目指してしまうと、時間もお金もかかるし、検索ロジックの変化やデバイスの変化など、環境の変化についていけなくなるからです。

またECの開発によくある納期遅れはシステムの責任だけではなく、営業含めた要件定義の甘さも原因だと考えます。その為に、全体を把握して業務設計を行うSEは内製化し、営業側はよくシステムを理解し、より細かい要件定義が出来るようにならなければならないと考えていました。

そうした様々な課題の解決をはかるために、キタムラeモール化計画を考えました。その開発とリリースについては、次回にお話させていただきます。

本年の連載はここまでとなり、次回は年明けです。年賀状はぜひキタムラで(笑)
皆様よいお年をお迎え下さい。

(第七回へ続く)


著者

逸見 光次郎 (Koijro Henmi)

学習院大学文学部史学科卒。
1994年 三省堂書店入社、神田本店、成田空港店、相模大野店、八王子店勤務。
1999年 ソフトバンク入社。イー・ショッピング・ブックス(現:セブンネットショッピング)の立ち上げに関わる。
2006年 アマゾン入社、 ブックスマーチャンダイザー。
2007年 イオン入社、ネットスーパー立ち上げ後、グループ全体のネット事業戦略構築を行う。
2011年 キタムラ入社、EC推進本部副部長、ピクチャリングオンライン代表取締役会長を経て、執行役員EC事業部長。
2015年 経営企画、オムニチャネル推進担当。
2017年 3月よりローソン、マーケティング本部本部長補佐