【4月1日スタート】景品表示法の課徴金制度(下)

木川 和広

【連載コラム】これだけはおさえておきたいECの法律問題
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士 木川和広

第11回:【4月1日スタート】景品表示法の課徴金制度(上)
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/8133/

第12回:【4月1日スタート】景品表示法の課徴金制度(中)
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/8187/

前回、前々回と、景品表示法の課徴金制度の概要についてご説明しました。3回目の今回は、消費者庁が今年1月29日に公表したガイドライン「不当景品類及び不当表示防止法8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」から、重要なポイントを抜粋してご説明します。

課徴金対象期間

課徴金の対象期間は、原則として、優良・有利誤認表示を行った期間です。ただし、誤認表示をやめた後も6か月間は誤認表示の影響が残っているものという仮定の下、その6か月間に誤認表示の対象となった商品やサービスの取引があった場合には、その最終の取引の日までが課徴金対象期間になります。一方、誤認表示をやめた後6か月間を経過した後に取引があった場合でも、課徴金対象期間は6か月を経過する前までとなります。

例えば、平成27年1月1日から6月30日までAという商品について誤認表示をしていて、その後もAの販売を続けていた場合、平成27年12月31日までが課徴金の対象期間になり、平成28年1月1日以降は、課徴金の対象期間になりません。

一方、誤認表示をやめた後6か月を経過する前に、「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを解消する措置」を講じた場合には、その措置を講じた日が課徴金対象期間の終期になります。内閣府令では、日刊新聞に誤認表示があったことを掲載する方法などが、この「解消する措置」に当たるとされています。

上記の例で言えば、平成27年6月30日まで誤認表示をし、その後、7月31日に日刊新聞に誤認表示があったことを謝罪する広告を出した場合、7月31日が課徴金対象期間の終期になります。

課徴金の対象となる商品やサービス

全国的に販売されている商品であっても、誤認表示の対象が一部の地域で販売される商品に限定されている場合には、その地域で販売された商品の売上のみが課徴金の算定対象となります。例えば、ある全国チェーンのスーパーが外国産うなぎの加工食品を販売していたとして、北海道版のチラシにだけ「国産うなぎ」という誤認表示をした場合、課徴金の対象となるのは、北海道内の店舗で販売されたうなぎ加工食品だけということになります。

また、同様に、都内に10店舗を運営する呉服店が、通常価格20万円で販売している振り袖について、「銀座店限定セール。通常価格50万円が今だけ20万円」といった二重価格表示(有利誤認表示)をした場合、銀座店で販売された振り袖の売上だけが課徴金の算定対象となります。

なお、課徴金の算定対象となる「売上」には消費税相当額も含まれます。したがって、内税の場合には表示価格、外税の場合には表示価格に消費税を加えたものが、「売上」になります。

相当の注意を怠った者でないと認められる

事業者が、課徴金対象行為をした期間を通じて、それが誤認表示に当たることを「知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められるとき」には、課徴金の納付は命じられません。

ガイドラインでは、ワイシャツを製造販売している事業者が、「通気性が従来製品の10倍」と宣伝していたものの、実際にはそのような通気性がなかったという場合が例として挙げられています。この場合、実績があり信頼できる検査機関に通気性試験を依頼し、通気性が従来製品の10倍であるという試験結果の報告を受けていたものの、その後、その検査機関による再試験の結果、試験結果に誤りがあったことが明らかになったため、速やかに上記の宣伝をやめたとすれば、「相当の注意を怠った者でないと認められる」とされています。

もっとも、試験結果に誤りがあることを知った後、「速やかに」誤認表示をやめなかった場合には、課徴金対象行為をした期間を通じて、「相当の注意を怠った者でない」とは認められないことになります。つまり、気が付いたらすぐに誤認表示をやめなければ、課徴金対象期間の全てについて課徴金を支払わなければならなくなるということです。したがって、既にチラシを刷ってしまったからとか、広告を出稿してしまったからという理由で誤認表示を続けると、せっかく誤認表示をしないように注意していても無駄になってしまうのでご留意ください。

以上、3回にわたって、景品表示法の課徴金についてご説明しました。いよいよ4月1日から制度がスタートしますが、実際の運用状況についても、このコラムでフォローしていきたいと思います。

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著者

木川 和広 (Kazuhilo Kikawa)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャル・カウンセル
国際的な案件も含め、EC関連企業の法律問題を幅広く取り扱う。
(木川弁護士プロフィール)https://www.amt-law.com/professional/profile/KLK