「リピート率の追求」が生んだグルコサミンのヒット

福島 れい

ECのミカタセミナーフェア開催!

 2016年7月27日、「ECのミカタセミナーフェア ~単品リピート通販ノウハウ~」を開催した。今回、セミナーフェアのテーマとして「リピート通販」を掲げたのは、EC市場が拡大するのに伴い、競合店も増加、その結果、顧客獲得にかかる広告費が増大しているという現状があるためだ。

 一度購入したお客様へ丁寧な接客を行い、次回も購入してもらうことで、多額な広告費をかけずとも顧客を獲得できるリピート施策。会場では、基調講演として「グルコサミン」や「青汁」で人気を集める株式会社世田谷自然食品(以下、世田谷自然食品)をはじめ、リピート施策に強みを持つサービスを展開する4社が講演を行った。会場にお越しになれなかった方のために、その一部をお伝えする。

 ここでは、パート1として「株式会社世田谷自然食品」と「スタークス株式会社」2社の講演より、”One to One接客の重要性”について。続くパート2では「ピコもん株式会社」と「株式会社リスティングプラス」2社の講演より、多様化する選択肢に迷う顧客を誘導して売上を伸ばす方法について。パート3にてLTV最大化を実現するためのマーケティングオートメーション活用についてお伝えする。

すべての基準は「長野県に住む70歳のおばあちゃん」


 「ぐるぐる~ぐるぐる~グルコサミン♪」と歌いながら、年配の方がにこやかに膝を回しているCMをご存じだろうか?この温かいCMは基調講演として登壇した世田谷自然食品のヒット商品「グルコサミン」のPR。今でこそ有名なグルコサミンだが、そのヒットに至るまでには数々の試行錯誤の積み重ねがあったと、広報渉外担当部長の池田 昌弘氏は語る。

 グルコサミンがヒットするまでに世田谷自然食品が取り組んできたことは、ただ一つ「リピート率を追い続ける」ことだという。その際に使う数値は基本的に「CPOとLTVのバランス」のみ。かっこいいテクニックを使うのではなく、顧客からどう見えるのかを考え、One to Oneのコミュニケーションを行っていく。これが世田谷自然食品の基本姿勢だ。そのうえで、講演内で紹介されたリピート率を高めるための具体的な施策を3つご紹介したい。

 まずは、「社内の温度を伝える同梱物」。同社が制作する同梱物は全て社内の担当者が自分で汗をかいて作ったものなのだという。なかでも人気の「世田谷かわら版」には、その担当者宛に「うちで取れたみかんを送るね。」「○○さん、この漢字はちゃんとここをはねないと。」等というお便りが届くのだとか。同梱物でありながら、One to Oneのコミュニケーションツールの1つになっている。

 そして、「最初の数か月で勝負をかけるDM」。やはりリピート率が高いのは最初の購入から数か月であるため、ここに勝負をかけてDMを投資する。

 さらには「リピート率をいつまでも追いかける風土」だ。例え広告を打ってCPOが悪かったとしても、次はどうなるかわからないよねと風土があるそうで、効果の高いものが見つかるまで、広告・同梱物・DM・スクリプトなどのA/Bテストを1年で500個も行っている。少額で多くのテストを繰り返し、最短距離を行く。これが世田谷自然食品の必勝法だ。

 こうした施策を説明する池田さんの講演から感じるのは、「リピート率を高めるために、世田谷自然食品は本気」であり、そのために「お客様を心から大切に考えている」ということだ。制作物をはじめ、社内の判断基準は「長野県に住む70歳のおばあちゃん」がわかるかどうか。いつでもお客様目線を徹底している姿勢が伺える。テクニックに頼るのではなく、良い商品を、良いサービスで届ける。リピート施策の基本は、ここに尽きるのだろう。


次ページでは、お客様対応をより丁寧に行うための方法についてスタークスの講演をまとめる



問合せ対応でファンを作る3つのステップ

問合せ対応でファンを作る3つのステップ

 世田谷自然食品に続いてお伝えするのは、同じくOne to Oneのコミュニケーションが重要だと語ったスタークス株式会社 今田 孝哉 氏の講演から「問合せ対応でファンを作る3つのステップ」についてだ。

 講演序盤、今田氏は顧客が他店舗に乗り換える理由として最も多いのは「自分が企業に相手にされていない、大切にされていないと感じたから」であるというデータを挙げ、クレームをいうのは氷山の一角であり、クレームがこないからと言って、顧客対応が十分ということにはならないと耳の痛い指摘をする。そのうえで語られた顧客対応でファンを作る3つのステップは以下の通りだ。

 まずステップ1は「ミスをなくす」こと。返信漏れ、入力ミス、二重返信、返信したが届いていないなどは、問合せ件数が増えてくると発生しがちなミスだ。大量のメールの中でミスが発生したのはたった1件だったとしても、それで1人の顧客を失うことになってしまう。ミスのない対応で顧客との信頼関係を築きたい。ミスをなくすための手段としては、「未対応」「対応済み」の2つのBOXにシンプルに分けることが考えられる。

 ステップ2は「スピード対応」。チャットやLINEが普及したことで、すぐに返信を求める顧客が増えているのだ。問合せを受けてから対応するまでの時間は短ければ短いほど良いのだ。今田氏によると対応スピードを上げるためには、数字を見える化することが必要だと言い、「対応時間」「送信数」「オペレーターごとに対応時間」「種類ごとのメール数」などの計測を勧める。また、数字の見える化とともに、テンプレートの使用や社内コミュニケーションの効率化の必要性も訴えた。

 ステップ3は「顧客の期待を上回るOne to One接客」だ。問い合わせに対し、単純な回答を返すのではなく、顧客をしっかりと理解した対応ができれば、定期購入停止希望の連絡であっても、配信頻度やタイミングを代えて継続につなげることも可能だと事例を挙げて説明した。

こうした3ステップを、GmailやOutlook等のメーラーで完璧に対応するのは難しい。そこで活用すべきツールとして「Re:lation(リレーション)」を紹介。GmailやOutlook等のメーラーが個人間のやり取りを目的としているのに対し、多数のメールに複数人で対応することを目的としているため、顧客対応の質を高めるのに適したツールなのだ。


 一度購入したお客様に繰り返し購入してもらうのは、決して簡単なことではない。しかし、世田谷自然食品とスタークスの講演はちょっとした工夫が、顧客満足を高め、リピートを生むのだと感じさせるものであった。

パート2では、インターネット上に多くある選択肢のなかから、自社を選んでもらうための方法をお伝えする。

 次回のECのミカタセミナーフェアはスマホ対応をテーマに、8月30日(火)に開催。基調講演にはSHOPLIST(ショップリスト)を迎え、売れるスマホECの最新トレンドに迫ります。ご興味のある方はこちらをご参照ください。


記者プロフィール

福島 れい

ECのミカタ編集部に所属するバドミントンと和服、旅好きの記者、通称れーちゃん。ミニ特集「アパレルECの未来(https://goo.gl/uFvr2C)」等、これからEC業界がどんな風に発展していくのか。に注目しながら執筆しています。2017年の執筆テーマは、”私にしか書けない記事をタイムリーに”。

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