ヤマトグループがタイで宅急便、合弁会社設立

ECのミカタ編集部

The Siam Cement Public Company Limited.(以下、SCC)傘下の SCG Cement-Building Materials Co., Ltd. (以下、SCG セメント-ビルディングマテリアルズ)とヤマトホールディングス傘下の東南アジア地域統括会社の YAMATO ASIA PTE. LTD.(以下、ヤマトアジア)は、タイ国内で宅急便サービスを提供するための合弁会社の設立に向け、8月25日に基本合意をした。※SCG=サイアム・セメント・グループ

タイ市場に注目!背景・設立の目的

 タイは現在、世界各国から自動車メーカーや電化製品のメーカーが工場を建設するなど、東南アジアの中でも製造拠点として重要な位置づけとなっている。それと同時に、スマートフォンの普及に伴い、 Eコマース市場が著しい成長を見せており、とりわけマーケットプレイス出店者に代表される個人間でのもののやり取りによって小口配送の個数が伸長している。

 SCGは、タイ国内セメント業界において No.1の売上高を誇る複合企業グループで、セメント建築資材、化学、梱包材や流通・物流事業などを幅広く行っており、同国上場企業の株式時価総額5位の位置にいる。2013年に創立100周年を迎えており、当初から王室財産管理局が最大株主となるなど、古くよりタイの経済発展の中核を担ってきた企業の一つだ。近年では、日系企業とも合弁会社を設立している。

 一方、ヤマトグループは 2010年にシンガポール、2011年にはマレーシアで宅急便事業を開始するなど、アセアン各国における国内小口配送ネットワークの拡充を進めてきた。同時にアセアン経済共同体の発足によって今後益々の増加が見込まれる国境を跨いだ物流に対しても、クロスボーダー事業を積極的に展開している。また、タイ国内ではタイヤマト運輸株式会社を1990年に設立し、主にロジスティクス事業やフォワーディング事業、海外引越事業を展開している。

 この度、両社でタイ国内での宅急便サービスを提供する合弁会社の設立に合意し、小口配送ネットワークを拡大していくことで、法人・個人の双方にとって最適な物流を提供し、より便利で快適な社会の実現に貢献していくとのこと。

いつから始動?合弁会社の概要

 SCGセメント-ビルディングマテリアルズが65%、ヤマトアジアが35%出資をして合弁会社の設立を行う。SCG のタイ国内でのB2B全国配送ネットワークに、ヤマトグループが日本で培った宅急便のノウハウを融合させ、タイ国内での事業展開を進めていく。

会社名:SCG Yamato Express Co., Ltd.
設立:2016年10月(予定)
事業開始:2017年1月(予定)
資本金:633 million Baht(1,893百万円)
株式及び出資比率:
SCG Cement-Building Materials Co., Ltd.:65%(411 million Baht / 1,230百万円)
YAMATO ASIA PTE. LTD.:35%(222 million Baht / 663百万円)
上場:非上場
事業内容:タイ国内の宅配事業 他
※1 Baht=2.99円で換算
 
 詳細は、今後両社で協議を重ね10月以降に実施予定の共同会見にて説明予定だ。

ヤマトグループのグローバル戦略

 ヤマトグループは、2010年よりアジア各地に宅急便サービスを展開し、アジア地域で小口配送ネット ワークとロジスティクス、フォワーディングを一体化したシームレスでスピーディーなクロスボーダー物流の提供に取り組んできた。

 特に東南アジアでは、TPPの大筋合意やAECの発足により、貿易の活発化はもちろん域内物流のニー ズが飛躍的に拡大する可能性が高まっており、ヤマトグループではラストワンマイルネットワークを強みとした物流サービスで確固たる地位を早期に確立するため、業務提携、及びM&Aを積極的に実施し、小口配送ネットワークの構築や、フォワーディング、ロジスティクスの機能強化をスピーディーに推進していく構えだ。

タイ市場の可能性、ヤマト進出で何が変わる?

 タイは、東南アジアのEC市場の中でも大きな成長を見せている。2014年の調査では(Bain & Company, Inc. 調べ)、そのEC市場規模は1,200億円、EC化率は2.7%と、勢いを感じる結果となっている。

 EC市場が根付くためには、決済と物流が整っていることが重要だと言われる。決済に関しては、タイは、キャッシュレス社会へと進化を遂げつつあると言われる。これはタイだけでなく東南アジアに共通することであるが、日本のEC市場がPCから始まったのに対し、東南アジアなどではスマートフォンの普及により、スマホをメインとするEC市場が形成されていることも関係があるだろう。例えば、LINE株式会社が提供するモバイル送金・決済サービス「LINE Pay」は、タイ全土で300以上のオンライン加盟店基盤を有している。

 そして物流に関しては、今回のヤマトホールディングスの動きである。シンガポール、マレーシアに続きタイでの事業展開ということで、東南アジアのEC市場の成長について、期待が持たれていることが分かる。

 このような動きの中で、タイのEC市場が盛り上がれば、それは日本のEC事業者にとって大きなチャンスとなるだろう。今、越境ECというと、日本では中国市場がメインだが、東南アジア市場の成長も見逃せない。決済や物流各社が動くというのは、それだけ見込みがあるということでもある。

 今回の合弁会社の事業開始自体は来年1月の予定とのことで、今後の詳細や動きは引き続き注目すべきだろう。


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