ヤマトのフレイターが就航。2024年問題の活路は「空」か

大矢根 翼

2024年4月11日、ヤマトホールディングス株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:長尾裕、以下「ヤマトHD」)と日本航空株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:鳥取三津子、以下「JAL」)とスプリング・ジャパン株式会社(本社:千葉県成田市、代表取締役社長:浅見達朗、以下「スプリング・ジャパン」)が連携し、ヤマトグループが導入するエアバス A321-200P2F型の貨物専用機(以下「フレイター」)の運航を開始。最初の貨物を搭載して成田空港を離陸した。また同日、就航を記念して、成田空港、新千歳空港、北九州空港、那覇空港にて、就航記念セレモニーが実施され、官民から多くの来賓が出席。登壇者はフレイターへの期待と、人手不足による物流の停滞が懸念される2024年問題への取り組みについて語った。

減少するトラック輸送の担い手と、増加するEC貨物へのソリューション

2019年から始動したヤマトグループの空輸プロジェクトが、BtoB領域にも拡大しているEC需要を筆頭に増加する輸送の需要を受け、5年越しで実現した。すでにヤマトグループでは3機のA321-200P2F型の貨物専用機を調達しており、当初はこのうち2機を1日9便運用する。夏までに追加の1機が就航し、便数が増加する予定だ。

当初の航路は成田=新千歳、成田=那覇、成田=北九州、那覇=北九州の4路線。ヤマトHD 代表取締役社長の長尾 裕氏は、フレイターの役割について「地場の食品など、輸送時間の短縮が付加価値を生む商品の配送で販路の拡大に貢献したい」と語った。

左から成田国際空港株式会社 代表取締役社長 田村明比古氏・国土交通省 物流・自動車局長 鶴田浩久氏・日本航空 代表取締役会長 赤坂祐二氏・ヤマトHD 代表取締役社長 長尾 裕氏、スプリング・ジャパン代表取締役社長 浅見達朗氏・東京航空局 成田空港事務所 成田国際空港長 十河久惠氏・エアバス・ジャパン株式会社 社長 ステファン・ジヌー氏

2024年問題に関する記者からの質問に対しては時間をかけて輸送してもいい貨物と、スピードが重要な貨物で異なる対応をしながら、現場で働く人に還元されることが重要(ヤマトHD 長尾氏)と回答。

国土交通省の物流・自動車局長 鶴田浩久氏や成田国際空港長の十河久惠氏は、トラック運転手の担い手が不足する構造問題はいつか取り組まなければならない課題であると前置きした上で、持続可能な物流に果たす航空輸送の役割に期待を寄せた。

航空輸送がもたらすEC事業者への恩恵

日本航空と、実務を担当する日本航空子会社のスプリング・ジャパンは、安全第一を前提としつつ、航続距離と積載量の強みを強調した。エアバス社のA321-200P2Fは、小型機でありながら10トントラック5~6台分(28トン)の積載量を持つ。航続距離は約2000kmで、成田・羽田空港を中心として日本全国を網羅できる。

セレモニーではEC需要の増加が頻繁に言及され、越境ECの可能性も示唆された。全国から成田や羽田に空輸で集積された貨物は、日本における国際貨物の60%を取り扱う成田空港を拠点として取り扱われる。

成田国際空港の代表取締役社長、田村明比古氏は「成田の国際航空ネットワークに接続することにも期待している」と、越境ECの納期短縮と販路拡大を示唆した。コンテナは他の航空機への互換性もあるため、コンテナ単位でのスピーディーな越境も期待できる。

実際に貨物が取り扱われる上屋(※)でのコンテナ積載デモンストレーションでは、最新のX線検査装置や、貨物の搬入ラインが公開された。上屋は成田空港の貨物地区に位置する。貨物の取次がスピーディーに行えるため、素早い輸送が可能になる。

また、ヤマトグループの強みは陸送で培ってきた配送ネットワークとノウハウだ。フレイターと組み合わせることで、顧客のエリアと客層が拡大できるという。

荷物の積卸し、または、通関のために航空機から陸上へ、陸上から航空機への貨物を一時的に保管する場所

ヤマトのフレイター、第一便が出発

ヤマトのフレイター、第一便が出発セレモニー後には滑走路上でヤマトフレイターの貨物第一号が積載され、散水車によるウォーターサルートを受けて飛び立つ期待を関係者が見送った

2024年4月現在は2機4路線での就航だが、将来的には6路線21便までの拡張が検討されている。取り扱える国内向け商品のバラエティーが広がるだけでなく、越境も視野に入れている事業者にとっては大きなビジネスチャンスになるだろう。

働き方改革関連法によって稼働時間の制約が強まるトラック輸送。空輸は、陸送に頼っていた高付加価値商品を取り扱うECの突破口として期待が高まる。


記者プロフィール

大矢根 翼

2018年法政大学卒業後、自動車部品メーカーに就職。
ブログ趣味が高じてライターに転身し、モータースポーツメディア『&Race』を副編集長として運営。
オウンドメディアの運営、記事制作など、複数ジャンルで記事制作をメインに活動している。

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