Rakuten Ad&Marketing DAY 2026レポート【後編】 ビッグデータのAIへの実装が加速
左から:楽天グループ株式会社 アド&メディアカンパニー マーケティングパートナー事業 ディレクター/楽天データソリューションズ株式会社 代表取締役社長/MIHA株式会社 代表取締役社長 田中利昌氏、株式会社I-ne(以下、I-ne) ビューティー&ウェルネス事業本部 本部長 上田隆司氏、楽天グループ株式会社 執行役員 アド&メディアカンパニー ヴァイスプレジデント/リンクシェア・ジャパン株式会社 代表取締役社長/楽天データマーケティング株式会社 代表取締役社長 石角裕一氏(所属・役職はイベント開催時点)
楽天グループ株式会社 アド&メディアカンパニーが2026年2月に開催した「Rakuten Ad&Marketing DAY 2026」。レポート後編では、楽天経済圏で発生する大量のトランザクションから生まれるデータを活用したマーケティングソリューションやその成功例が語られた、「Business Updates」と「Special Session」を紹介する。
マーケットデータの蓄積がソリューションを開拓
「Business Updates」セッションに登壇したのは、楽天グループ株式会社執行役員の石角裕一氏。テーマは「楽天のマーケティングソリューションが描く未来戦略のショーケース」だ。
石角氏は講演の前提として楽天モバイルの契約数が1000万回線を突破したことや「Rakuten AI」の活用により、「マーケティング領域で蓄積できるデータの量と種類が増えた」「広告配信のパフォーマンスが非常に改善した」と楽天経済圏におけるマーケティング環境の進歩を表明した。また、グループ全体での年間流通額は30兆円、累計の付与ポイントは5兆ポイントを超えたという。
データの深さと幅の広さが拡大したことで、「一定のラインを超えると鈍化する成長が、AIを活用することで進化のスピードが速まっている」と石角氏。データの深み、種類、量の増加は分析や考察などを飛躍的に加速させると語る。データの広がりが「未来購買予測」や「AI Chat Ad」などのソリューションを実現させてきた。

例としてユーザーとの対話型広告ソリューション「AI Chat Ad」は、「数分の会話をする中でユーザーのファネルを前進」させると同時に、定性的な情報の収集にも役立つと石角氏は述べた。あわせて、オフライン購買データをもとにユーザーへオリジナルのサンプル商品を送付できる「楽天ペイメント DM ID-POS 郵送サンプリング」の公開も発表された。
ビッグデータで広告効果を加速
石角氏が率いるリンクシェア・ジャパン株式会社から紹介されたソリューションはSEO・AIO・GEOを統合的に分析する「LinkSurge」だ。「GoogleもUXがAIシフトしている」と石角氏が述べる環境に適応する同解析サービスは、GoogleのAI OverviewsなどのAI要約に掲載されるために必要な情報を数値化して表示。米国では高い評価を得たという。
続けて紹介されたデータ運用の実例は、楽天広告と楽天ポイントの連携だ。一般的に楽天ポイントを付与するキャンペーンは購買に対して設定されやすい。しかし、石角氏が紹介した事例では、商品クリックに対してポイントを付与する取り組みを行った。つまり、短期的にCVR(購買転換率)ではなくCTR(クリック率)に振るポイント付与戦略だ。
このポイントキャンペーンの結果として、CTRが急上昇、CVRは下降し、広告経由の売り上げが増加。石角氏は多くの顧客から無視されていた状態と比較しての訴求力を強調した。その広告運用を裏方から支える「未来購買予測」は、過去の顧客行動から未来の購買行動を予測し、最も期待値の高いユーザーから順に広告を配信するソリューションだ。

加えて公開された新ソリューションが「RMP TV Ads(仮)」。テレビCMの視聴データと楽天のビッグデータを掛け合わせることで、テレビCMを起点とした高精度のターゲティングを狙う。運用には日本テレビとビデオリサーチが協力し、「テレビCMをデジタルの世界観で運用」するという。取引指標はインプレッションであり、最短15分後にレポートを得られるなど、デジタル特有のスピード感がある。
「未来購買予測」でROASが2倍になった事例
「Special Session」は、実際に楽天の広告ソリューションを利用して成果を上げた事業者と、提供者による対談形式で進行した。
セッションテーマは「購買データ✕AIが導く『未来の消費行動』」。登壇者は楽天グループ株式会社 アド&メディアカンパニー マーケティングパートナー事業 ディレクターの田中利昌氏と、株式会社I-ne ビューティー&ウェルネス事業本部 本部長の上田隆司氏だ。
「BOTANIST」や「SALONIA」などの商品を展開するI-neは、業務フローにAIを組み込み、購買データや顧客属性の分析を進めている。「SNSの情報を定期的に入力し、新商品開発時の壁打ち相手にしている」と上田氏。仮想の顧客からフィードバックを得ることで、仮説の検証や定性情報の収集に役立てているという。

2024年ごろからAI運用を開始したI-neでは、AI活用が浸透するにつれてデータの蓄積も進み、新たな利用方法を話し合えるようになっていったと上田氏は振り返る。そのマーケティングにおいては楽天市場、自社ECの両方で楽天が販促を担う。田中氏は「データ量は日本一」と自信を見せる。
紹介されたのは、「BOTANIST」と「SALONIA」を楽天グループサービスに一括配信する「Unified Ads」の運用事例。「未来購買予測」を用いて、購買の成約・不成約データから期待値の高いユーザーに広告を配信した。たとえば不動産購入者は3年前にベビー服を買っている、などが見える。
結果として「CVRが大きく向上し、同じ広告費で2倍以上の顧客から購入された」と上田氏。また、「ターゲティングの精度を高めるとボリュームが減る」問題も解決されたと語り、「楽楽プロファイル」を用いた解像度の高いペルソナ設計による工数削減や、OMO施策へのデータ活用にも期待を寄せた。
まとめ

数年前まで、ビッグデータや機械学習を活用できる人材は一握りだった。しかし、AIソリューションの普及は、マーケティング領域におけるデータ活用の敷居を急激に押し下げた。そして今、あらゆるデータがマーケターのもとへ集まってくる。マーケティングにおける力量は、勘や経験よりも、押し寄せる情報をさばき、目指す方向へと矢印を向けることが求められる時代なのかもしれない。


