PARCOが進めるオムニチャネル【現場レポその2:ECのミカタセミナーフェア】

ECのミカタ編集部

2016年10月18日(火)開催、ECのミカタセミナーフェア「パルコが教える!購買心理を踏まえた売上アップ方法」の現場レポート。その1のGlossom、ラクスに続き、その2ではパルコ・シティの講演内容をご紹介。その3では日本郵便、ecbeingと続きます。

「現場レポートその1」はこちら
https://www.ecnomikata.com/ecnews/11648/

パルコのオムニチャネル戦略とは

パルコのオムニチャネル戦略とは

講師:株式会社パルコ・シティ 村石 怜菜

 PARCOでは「いつでもどこでも、24時間PARCO」という考え方のもと、「オムニチャネル」を積極的に進めている。PARCOにとってオムニチャネルとは、「リアル店舗もECも、都合に合わせて『どちらも便利に利用したい』」というお客様のニーズに応じ、EC単体ではなくリアル店舗も含めて事業全体をスケールさせようとするものだという。リアル店舗とECいずれかにこだわるのではなく、ブランドや店舗自体のファンになってもらい、継続的なつながりを持ち、いずれかのチャネルで買ってもらうことが目的となる。

 オムニチャネルが注目される背景としては、スマートフォンの普及により、スマホを経由したメディア接触時間が増加し、情報収集の中心は完全にスマホとなっていることである。リアル店舗と言えども、スマホの影響力を無視できないのだ。むしろスマホの影響力を活用することで、お客様との接点を増やし、リアル店舗を盛り上げることもできる。

 そういった視点で運用されているのが、PARCOの店頭キュレーションEC「カエルパルコ」だ。もともとは出店型ECモール「ファッション通販【PARCO CITY】モール」を運営していたが、お客様のオムニチャネル化に対応すべく、カエルパルコへ移行した。

従来のECサイトと「カエルパルコ」の違い

 従来の出店型ECモールにおいては、運用の主体はあくまでもブランド本部であったが、カエルパルコにおける主体は店頭だ。ここが大きな変化と言える。店頭の売上を上げるためのECであり、リアル店舗のスタッフが「ショップブログ」で店頭の生の情報を発信していく。商品情報、セール情報、コーディネートや接客情報、スタッフ募集やスタッフのプライベートまで、店頭の生の情報が満載のウェブコンテンツとなっている。PARCO全18館で1ヶ月に更新される記事は約1万2千にも上るそうだ。

 カエルパルコでは、お客様は来店前から気になるお店の情報を、既に来店しているかのように取得することができる。これにより、24時間お客様の知りたいニーズに応え、接客することができるのだ。リアル店舗の売上はもちろん営業時間中になるが、カエルパルコではリアル店舗が営業していない時間帯において売上が伸びる傾向にあるという。PARCOの狙いが的を得ている結果と言えるだろう。

 また、ショップブログに掲載した商品は売れ行きが良くなったり、お問い合わせが増加したり、店頭では確かな手応えがあるという。カエルパルコの特徴は、あくまでも店頭の売上を上げるためという点だ。そのため、店頭にある商品が登録され、ウェブ注文もしくは取り置きにより、注文が入ると店頭の在庫を出荷し、店頭の売上として計上される。そのため、PARCOではこのオムニチャネルな接客に対応できるスタッフの育成にも力を入れている。

これからの接客はパーソナライズが鍵

 さらによりパーソナルな接客を実現するため、スマホアプリ「POCKET PARCO」を展開している。一般的にアプリの利用時間はWebブラウザより格段に長いといわれていること、PARCOのWebサイトのスマホ閲覧率は8割以上というPARCOの顧客層に非常に相性の良いツールと言えるだろう。

 また、アプリによりオンライン・オフラインをまたいだお客様の行動データを取得することで、お客様一人一人に合った接客を提供できるようになる。アプリで接触頻度を増やし、興味を引き、そこからリアル店舗・EC店舗どちらでも都合の良い場を利用してもらうという流れができているのだ。その流れを強化すべく、POCKET PARCCOにはAIを搭載し、お客様の趣味嗜好に沿った情報提示の精度を上げるようにしている。

 こういったPARCOの手法は、他の百貨店やリアル店舗が主体の事業にとっても非常に参考になるものだ。ICTを活用することでお客様との接点を増やし、今まで可視化しにくかったお客様の購買・行動データを収集することもできる。しかし、ECやアプリといったデジタル・ICTの領域でありながらも、あくまでもその主体は店頭にあると考えている。デジタルだけで完結するのではなく、デジタルによるマーケティングの結果をリアルの接客の場に落とし込み、お客様との最大の接点である店頭の力=ショップスタッフの接客バリューを最大化し、お客様のLTVを最大化すること、それがPARCOの目指すところだ。

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