30周年「スクロール360」見据える越境ECの可能性

福島 れい

株式会社スクロール360の設立30周年記念パーティー開催

 10月24日、物流や通販システムをはじめとするダイレクトマーケティングソリューションを展開する株式会社スクロール360の設立30周年記念パーティーが行われた。冒頭、取締役社長 杉本泰宣氏より、スクロール360並びにスクロールグループの変遷の紹介、今後の展望が語られ、その後取締役 海外ソリューション戦略室 室長 高山 隆司氏より越境ECソリューションの紹介があった。

 海外ソリューションは、スクロールグループの「豆腐の盛田屋」の商品「豆乳石鹸」が爆買いされたことをきっかけに中国で直接販売できる仕組みを構築し、それを越境ECを希望するEC企業にスクロール360が提供していくスキームとなっている。高山氏は中国でのEC物流の現状やスクロール360と連携した中国の物流会社「潤豊物流」や中国国内でのプロモーションや日本語サイトの翻訳・ローカライズを手掛ける「成都インハナ」の紹介がされた。

「海外・越境ECの現状に迫る!」パネルディスカッション

 海外ソリューションの紹介に続き、「海外・越境ECの現状に迫る!」と題したパネルディスカッションが行われ、有限会社スタイルビズ 代表取締役 村山 らむねさん、インフォマークス株式会社 代表取締役社長 天井 秀和さん、株式会社JIMOS DMS事業部長 兼 ホールセールス事業部長 川部 篤史さんが登壇した。

有限会社スタイルビズ 代表取締役 村山 らむねさん
 村山さんは、為替や中国の税制改革は越境ECにとって逆風であるとしながらも、計測サイトで調査すると、Amazonや楽天市場に海外からのアクセスがかなりあることを挙げ、越境ECはまだまだ成長すると話す。その一方で越境ECに対応していない場合、海外からのアクセスの割合だけ、機会損失が発生している可能性があるとも指摘した。

 村山さんが様々なEC企業を取材する中から、海外進出の成功事例として口コミとリピーターで子供靴を多数売り上げる「ミキハウス」や六花亭と白い恋人の同梱を強みとする「北海道お土産探検隊」などを紹介した。ミキハウスについては、中国の富裕層は子供の靴にお金を掛ける傾向が強いことを受け、国内価格の1.7倍にて販売し、昨年の独身の日で4万足の子供靴、2億6000万円を売り上げたのだという。また、北海道お土産探検隊は実店舗の写真などをサイトに掲載することで信頼性を高めていることが成功の秘訣だという。

株式会社JIMOS DMS事業部長 兼 ホールセールス事業部長 川部 篤史さん
 川部さんは、中国国内のEC市場が急速に拡大していることを挙げ、中国への越境ECの可能性を示唆した。中国のEC市場の特徴として、情報収集環境は、日本のそれと大きく異なっており、SNSの隆盛や「百度」を中心とした検索サイト事情から、中国で売上を伸ばすためには、中国の情報サイト上に情報を露出することが重要だとした。また、中国市場では動画サイトのプロモーションが盛んで、動画を使ったプロモーションも効果が見込めると話した。動画のプロモーションを購入につなげるには、現地サーバーを持ちアクセスにかかる時間を短く抑えることや、中国語になじみやすい商品名にするなどの工夫が必要だと指摘している。

インフォマークス株式会社 代表取締役社長 天井 秀和さん
 天井さんは、東南アジアのEC市場について現状5500億円規模だが、2025年には8.8兆円の16倍に成長すると予想されており、成長市場として大きな可能性を秘めていると話した。東南アジアの特徴として近距離に市場が集まっており、越境ECが当たり前で、進出にあたっては国を選ぶというよりも全域をカバーするような考え方が適しているとした。その中でも特にキーとなるのは急速に成長しているインドネシアだという。 また、出店するモールについては、圧倒的な勝者がおらず、いわばモールの戦国時代となっているため、複数のモールに出店すべきと話した。
 
 日本国内、海外ともにEC市場は拡大を続けている。成長市場に乗り込み売上を伸ばすためには、物流面をはじめとするECの基盤をしっかり整えておくことも非常に重要だ。長く物流ソリューションを提供するスクロール360の力をかりるのもいいだろう。


記者プロフィール

福島 れい

ECのミカタ編集部に所属するバドミントンと和服、旅好きの記者、通称れーちゃん。ミニ特集「アパレルECの未来(https://goo.gl/uFvr2C)」等、これからEC業界がどんな風に発展していくのか。に注目しながら執筆しています。2017年の執筆テーマは、”私にしか書けない記事をタイムリーに”。

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