アスクル17年5月期 決算〜LOHACO 火災問題収束で再出発!技術とデータで挑む革命

石郷“145”マナブ

 アスクル株式会社(以下、アスクル)は、2017年5月期の決算発表会を実施した。それによれば、2017年5月期の連結業績概要は、次の通り。売上高335,914百万円で、前年同期比106.6%でこれは過去最高額となり、売り上げ純利益は22.8%で前年同期比0.5%プラスとなった。販管費は67,890百万円で火災で代替えセンターを設置したことによる固定費と一時的な物流生産性の悪化が影響している。

 営業利益は8865百万円、経常利益は8866百万円で、それぞれ104.1%、103.4%と増益を達成した。その他、特別利益として、受取保険金49億円、特別損失として、うち火災の影響として112億円を計上している。結果的には、当期純利益は、火災の影響を吸収しても、黒字確保に至った。

 事業別に見ると、売上高はBtoB事業は104.8%で、LOHACOは期初計画480億円だったが、火災の影響により、390億円、前期比118.8%となっている。

 彼らの話を聞いていて、基本的には、アスクルの強みである物流を火災前の状態にし、かつそのジャンルでは攻めの姿勢を見せて、AVC( ASKUL Value Center)を筆頭に、大いに通販にまつわる業界を賑々しくさせてくれそうな予感がある。

 代替えセンターAVC( ASKUL Value Center)日高などを立ち上げた。ただ、そこにとどまることなく、同社は出荷能力の拡大として、2018年2月をめどに、AVC関西を立ち上げるとした。これらは物流生産性の回復も念頭に置いており、オーダー一行あたりの労務単価も下がっていくとしている。これによって、2019年5月期には過去最高益を上回る利益水準で、V字回復をしていくとした。

既存のツールと最新の技術で新たなビジネスを創出する

 それは、勿論、LOHACOにおいてもそうだ。AVC日高は特に、アスクルとしては初のLOHACO専用のセンターであり、これにより在庫商品の品揃えの大幅拡大、売れ筋の変化と、キャンペーンなどにも臨機応変に対応できる環境、夜間受注の特性を生かした新たなピッキング方式を取り入れるなどで、LOHACO独自の個性を生かす物流に38億円の投資をするとしている。

 いうまでもなく、出荷能力は9月までで完全回復を果たすだけでなく、2018年5月期には火災前に比べ、160%超を目指すとしている。また、商品数も2018年5月期には火災前に比べ、倍増させるとした。

V字回復を担う ASKUL Value Center

 それだけではない。いわゆる従来の倉庫の概念から逸脱し、データなどを活用した新たな役目を果たすことになる。このAVCでは、データセグメントにあわせ、チラシ、メーカーサンプルを同梱するなどのビッグデータを活用した広告販促の事業を拡大させて、また、外部事業者からのフルフィルメント受託による収益の拡大で、新たな収益を創出するというのだ。

 かつ、自社グループのドライバーを増員させ、配達時間を細やかに設定できる「Happy On Time」などのサービスを充実させる。先ほど少し触れた通り、ビッグデータとAIにも意欲的で、思うに、「小売」「物流」という従来の考え方を、ボーダレスに関連づけできるもの結びつけて、新たな価値を創造する印象を持った。
 
 また、LOHACOはメーカーと商品を開発するマーケティングラボの企画を重視し、一方で、このLOHACOというフィールドをマーケティングプレイスの場所としても提示して食品や家電など、あらゆるカテゴリーに跨る形で、80ストア、160万アイテムを新たに展開していく。

LOHACOの財産、Yahoo!の財産、技術への敬意、その先に見るECの未来

 アスクルというBtoBで培ったノウハウを着実に、LOHACOというBtoCに生かしており、かつ、ヤフーグループの一員としてその秋雨客も、SoftBankユーザーやヤフープレミアム会員などをうまく主客につなげていくことで、先行投資をする様々な施策の成果を最大化させようということなのかもしれない。

 土台があって、挑戦があるからこそ、そこには新しい価値であふれている。火災という事故を乗り越えてなお、前向きに、挑戦し続けるアスクルの姿勢は、EC業界の明日を切り開く機運がある。同社のさらなる成長に、EC業界の成長をなぞり合わせて、大いなる期待でみ続けていたい。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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