ヤマト2018年3月期 四半期決算を発表。痛みを伴う改革はどれほど影響があったのか

ECのミカタ編集部

 各社続々と四半期決算を発表する中、ヤマトも2018年3月期第1四半期決算を発表した。今期も「働き方改革」や「大口の法人顧客への対応」など様々な話題が上ったヤマトだが、そういった事案が数字面にどう現れたのか掘り下げてみたいと思う。

 まず注目したいのは、やはり国内デリバリー事業だ。宅急便の取扱数量増加に連動した、外部戦力を含めた人的コストの増加や、前期からグループ全体で実施してきた社員の労働時間に関する実態調査について継続確認を進めた結果、新たに認識した労働時間に対する一時金を計上したことなどにより、100億円の営業損失となり、対前年174億円の減益となった。

 やはり「働き方改革」に伴う「痛み」は表れているようだ。「社員の労働環境の改善と整備」、「宅急便の総量コントロール」、「宅急便ネットワーク全体の最適化」、「ラストワンマイルネットワークの強化による効率向上」、「宅急便の基本運賃と各サービス規格の改定」など、その取り組みは多岐にわたる。

 特に「宅急便の総量コントロール」においては、荷物の急増による社員の負担増を回避するため、大口の法人顧客に対し、繁忙期の出荷調整や再配達削減などを要請するとともに、運賃の見直し交渉を進めているが、外部戦力を含めた人的コストの増加が利益を圧迫するというこれまでの流れが継続し、業績は厳しい結果となっている。

 宅急便の取扱数量は、引き続き急速な通販市場の拡大等により、対前年5.1%増加している。単価面では、個数構成比の変化により、対前年1.6%下落している。こうした中、10月1日に値上を控えていることもあり、それがどう数字に反映されていくのか注目しておかなければならない。

グループとしての強さで「痛み」に耐える。大企業が背中で見せる社会的意義

グループとしての強さで「痛み」に耐える。大企業が背中で見せる社会的意義

 グループとしての連結決算は136億円の増加。前年同期比+4.0%で着地している。海外向け通販事業者の既存サービスが相変わらず好調な点や、引越関連サービス、フリマアプリとの連携など大型荷物を簡単に送れる新たな配送サービスを提供するなど「らくらく家財宅急便」の堅調な推移などにより増収増益となった。

 まとめると国内デリバリー事業での「働き方改革」などの流れで大きく減益となったが、それ以外のノンデリバリーサービスが大きく伸びを見せることでトータルで増収になったという形だ。大きく注目されたヤマトの働き方改革で出てきた数字はやはり厳しいものだったが、裏を返せば「痛みに耐えられるだけの強い地盤がある」ということ。

 長い目で見た場合に健全なデリバリー事業を運営していくには、人材の確保は避けて通れない課題となる。また、働き方に関する報道が多くある中、大企業であるヤマトがこういった姿勢を見せることは社会的意義が大きい。

 上期においては、宅急便総量の増加基調が継続する中で、数量やプライシング等に関する交渉を実施していく期間であることから、厳しい経営環境が継続する見通しだ。しかし下期以降においては、総量コントロールやプライシング等の効果が出始め、下払費用なども抑制される見通しであり、利益回復基調に入ると想定しているという。物流とEC事業は切っても切り離せない関係にある。今後の動きも含めて動向を追い続けていきたい。

ECノウハウ


記者プロフィール

ECのミカタ編集部

ECのミカタ編集部。
素敵なJ-POP流れるオフィスにタイピング音をひたすら響かせる。
日々、EC業界に貢献すべく勉強と努力を惜しまないアツいライターや記者が集う場所。

ECのミカタ編集部 の執筆記事