アプリ500万DL突破のCreema催しに密着!才能が溢れる現場

利根川 舞

ハンドメイドアプリやフリマアプリなど、簡単に商品を販売できるサービスの増加を背景に、気軽に商品を販売することができるようになった。”クリエイター”と呼ばれる人たちにとっても、そうした場が自分の作品と消費者とをつなぐ重要なモノになっている。今回は、”クリエイター目線”でのECについて、Creema主催「HandMade In Japan Fes 2017」で出会ったお二人の方にお話いただいた。

クリエイター活動と子育ての両立を実現

クリエイター活動と子育ての両立を実現

 まず1人目はシカの剥製(ハンティングトロフィー)を模した壁掛けのオブジェを販売するFabric trophyの都築まゆ美さんだ。白や黒、単色のシカだけでなく、カラフルなシカが並ぶ。

 もともとイラストレーターとして活動する中で、ぬいぐるみを作る機会があり、その際にシカの剥製を模したぬいぐるみを製作したのがきっかけ。その後、あるC to C販売サイトを経てCreemaに出店している。何故Creemaで作品の販売を続けているのかという質問に対して都築さんはこう語る。

 「展示会に出展する場合、基本的には作家の在中が求められます。しかし、子どもが小学生くらいの頃は育児と家事との両立を考えると展示会への出展はあまり現実的ではありませんでした。それに、大量生産ができるものではないですから、制作時間が取れなくなると作品の価格も値上げしなければなりません。」

 1つの作品を作り上げるには、手縫いとミシンを利用して大体3日間かかる。もちろん、シカの角の形が複雑になればなるほど、時間はかかる。制作できる数が限られるということもあるが、在庫管理の手間がかかるということもCreemaに限定している理由だという。

 都築さんのお話の中で意外だな、と思ったエピソード2つがある。1つ目は作品への感想について。感想が多ければ多いほど良いのかな、と勝手に思っていたわけだが、都築さんは次のように話してくれた。

 「取引の際にはメッセージのやり取りをするんですが、商品が届くと評価と一緒にコメントを書いてくれる人がいるんです。もちろん無い人もいるのですが、そういう方々は”本当に商品が欲しかったんだな”と思っているんです。それが本当に欲しいから買ってくれたんだなと思うと、それはそれで嬉しいんです。」

 そして2つ目は聞いて驚いた。「シカが好きで好きで、というわけじゃないんです。」というからだ。あくまで、自分のオリジナリティを発揮出来る”角”を持っていたのが”シカ”だったというのだ。

最後に、これから作品を販売しようとするクリエイターさんへ向けて思いを語ってくれた。

「私の作品はどこか毒気のある作品だと思うので、誰でも好きになってくれるものではないと思っています。それでも好きになってくれる人はいます。是非販売にトライしてみてください、インターネットは見てる方はイベントよりも多いですし、必ずあなたの作品を好きになってくれる人はいますよ。」 
 
 クリエイターであり母である都築さん。色々な人に作品を見て欲しいという思いと、家族を大切にしたいという両方の願いを叶える場所として、ECが存在しているのである。

まるで本物?いえいえ、正真正銘本物のパンです。

まるで本物?いえいえ、正真正銘本物のパンです。

 綺麗に並ぶパンたち。しかしこれからが並ぶ場所はパン屋ではなく、「HandMade In Japan Fes 2017」の会場だ。実はこれらは本物のパンを使ったインテリアライトなのだが、話に聞く以上に”パン”である。この作品を作っているのは、モリタ製パン所の森田優希子さん。パンを愛するが故にパンをインテリアライトに変えてしまったのだ。

 美術大学に在籍していた頃にアルバイトをしていたパン屋で、廃棄となるパンたちを見ていて、食べるか棄てるかしか選択肢の無いこのパンたちををどうにかできないかと森田さんは思った。

 「パンを乾燥させたり、スライスしたものを顕微鏡で観察してみたりしました。ときにはあえてカビを生やしてみたり。”実験”を繰り替えしていく中で、ふと窓から太陽の光が入り込んだ時、パンが光ったように見えたんです。」そして生まれたのが「Pampshade」だ。

 「Pampshade」は本物のパンをくり抜き、特殊な液体でコーティングすることで劣化を防いでいる。少ない時でも月に100個、多い時には月に300個ほど制作するというから驚きだ。

自分の思いに忠実になることが説得力を生む

自分の思いに忠実になることが説得力を生む

 先の都築さんと異なるのは様々なチャネルで販売を行っている部分にある。Creemaだけでなく他のハンドメイドサイトや、自社サイトでの直販、そして全国各地の販売店へも作品を卸しているのだ。商品の管理が大変なのではと思えば、買取がほとんどであることや、作品は7種類に限られているため、管理は難しくないのだという。 

 様々なチャネルで販売しているということで、まず初めにどこでの販売がオススメなのかと聞いてみると、次のような答えが返ってきた。

 「イベントでもWEBでの販売でも、敷居は低くなっていますから、とりあえずやってみるのが一番だと思いますよ。まずは何かしらにチャレンジしてみて、そこから次のことを考えればいいと思います。もし写真のスキルがあるのであればWEBでの販売もいいかもしれませんね。」

 都築さんと同様、これから販売にチャレンジしようと考える人たちにメッセージをいただいた。

 「売れる作品を作ろうと思うと選択肢が広がりません。自分が何をしたいのかを突き詰め、自分の思いに忠実になることで、その作品には説得力が生まれると思うんです。色々な人が色々なモノを作っていますが、その特別なモノを大切にしていくのが大事なのではないでしょうか。」

簡単ECがクリエイターの背中を押す

「家庭とクリエイター活動の両立」そして「自分の作りたいものを突き詰める」というような、自分のやりたいことを実現する場所として二人の中にECは存在している。

 「芸術で飯は食えない」というような話はよく聞くが、海外では日本よりも芸術に対する価値は高く見られている。日本津々浦々、どんな場所にいたって商品を販売・購入ができるECがクリエイターの背中を押し、日本のクリエイターがより活発に活動できる世の中になれば良いなと思う二人の話であった。


記者プロフィール

利根川 舞

ECのミカタ 副編集長

ロックが好きで週末はライブハウスやフェス会場に出現します。
一番好きなバンドはACIDMAN、一番好きなフェスは京都大作戦。

ECを活用した地方創生に注目しています!
EC業界を発展させることをミッションに、様々な情報を発信していきます。

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