EC市場での日用消費財の売り上げがリアル店舗での売上を超える見通し

ECのミカタ編集部

世界最大のマーケティング調査会社ニールセン(以下「ニールセン」)は、11月1日、最新の消費者行動分析報告書「Eコマースのこれから(原題: What’s Next in e-commerce)」を公開した。 同報告書によると「FMCG=日用消費財」製品におけるオンライン販売の成長が著しく、今後5年以内にオンラインでの売上がオフラインの売上を超える見通しとなっている。

激変するEコマースでの消費動向

ニールセン社が、2017年11月1日に公開した報告書「Eコマースのこれから(原題: What’s Next in e-commerce)」によると、特に日用消費財部門での最新トレンドに注目していて、世界的に同カテゴリの商品をオンラインで購買する傾向が強まっていることを指摘している。日用消費財はこれまで、電子機器、モバイルグッズ、旅行をはじめとする各商品カテゴリに次ぐポジションにあったが、オンライン購入によって、今後そうした傾向が変わっていくと記している。

一般的に、Eコマースを事業に導入するには、インフラの整備と供給体制、決済時の不正対策(クレジットカード詐欺対策等)、ラストマイル(一般家庭までの最終区間)を支える物流といった課題がある。その課題を小売業者と製造業者が果敢に乗り越えて行くことを通して、日用消費財のEコマースは急激な成長を見せていると言える。そしてこの成長はさらに続くとみられる。

実際に数字の上でもその成長ぶりははっきり示されている。日用消費財の全世界の小売売上高全体の伸び率は現在年間4%程度だが、Eコマースでの総売上高は、2020年までに20%の成長(2.1兆ドルの増加)が見込まれているのだ(全世界のEコマース市場規模: “The eMarketer Forecast for 2016” e-Marketer調べ)。

Eコマースの成長のカギを握る4大インフルエンサー

Eコマースの成長のカギを握る4大インフルエンサー

このような状況について、ニールセン社のグロース・マーケット Eコマース部門代表Prashant Singh(以下「プラシャント・シン」)氏は界的な成長トレンドに大きな影響を与えている「4大インフルエンサー」について次のように分析している。

1.Eコマースは急速に成長しているが、その要因は1つではない:
より手軽な情報へのアクセスや端末のつながりやすさが消費者行動の転換に重要な役割を果たしており、全体として、スマートフォンの普及がEコマースの潜在的成長の先行指標となっている。しかし、スマートフォンの広範な普及のみがEコマースの浸透をもたらしたとは言えない。文化的側面と市場の機微もまた、消費者のオンライン行動とオフライン行動に影響を及ぼしていると考えられる。

2.1つの例外を除き、ドライバーとバリアーは表裏一体:
ほとんどの国で、Eコマースでの購入の動機は「便利さ」だが、例外的に米国では損得が動機となっている。逆に言うと、Eコマースに対する障壁を精査する際の3つの主な検討事項は次の通りだ。
1つ目は、食料品でもアパレルでも、購入前に現物を吟味したいという欲求。
2つ目は、小売店が新鮮なものを提供するだろうかという点での信頼性の欠如。
3つ目は、店頭購入する品物に対し、オンライン購入する品物に品質レベルでの懸念があること。
小売店が消費者にEコマースでお金を使ってもらうためには、これらの障壁を取り除く必要がある。

3.小売Eコマースでは、入手しにくい食料品を揃えられるかどうかが成功へのカギ :
小売店にとって食料品を扱うことは究極の目標だが、Eコマースでの販売ではまだまだ普及していない。オンラインでの日用消費財部門の成功には、食料品の品揃えが決め手となる。

4.オムニチャネルの消費者にアピールする:
小売Eコマースで消費者にオンライン購入を決断させる条件は、便利さ、価格・価値、品揃え、カスタマーエクスペリエンスだ。魅力ある Eコマース戦略を立てるためには、小売店は、これら4つの各ドライバーで期待を上回ることを目指す必要がある。

シンは次のようにまとめている。「小売部門は、転機となるタイミングを繰り返し迎えています。利益率の高いリアル店舗と、まだ利益率の低いオンライン店舗のバランスを変えるには、思い切りと確信と洞察が必要です。これから利益を得ていくのは、計算されたリスクを積極的にとる者です。成長株は、オンラインチャネルに傾いていくでしょう」。

日用消費財部門はこれまで世界的に低成長もしくはゼロ成長だった。しかしその情勢は一変してきており、現在は力強い成長の兆しが見えている。これはもっぱらEコマースの牽引による。また、日用消費財部門の購買チャンネルがオンラインに移行していく中、小売店やブランドにとっては、より本質的な自社商品やサービスの拡散ポイントを把握し、それらをもとに適切な包括的デジタル戦略を構築していくことがますます重要になっていくものと思われる。


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