ニコニコ超会議2018 16万人来場で昨年超え〜中村獅童と初音ミクが舞い、小林幸子とキズナアイが歌う奇跡
ネット発 ユーザーが主役 個性にリスペクトした祭典
今年のキャッチフレーズが素敵である。
「キミの日常は、誰かの特別。」
株式会社ドワンゴは、4月28から29日まで、千葉県の幕張メッセで「ニコニコ超会議2018」を開催。思うに、同社が運営する「ニコニコ動画」は一人一人が発信者として個性的に発信する場の先駆けであり、そしてそんな彼らだからこそ想い持って手掛けられたリアルなイベント、それがこの「ニコニコ超会議」である。今年だって並ではないはずで、故に、今年も潜入した。
まずこのイベントはあくまでユーザーが主役であり「ニコニコ動画」でやられているあらゆるカルチャーがこの場で実現する。勿論、ニコニコ動画と連動して、リアルタイムでネットとリアルはシンクロする。
そして、気になる来場者数はというと、リアルで161,277人。ネットで6,121,170人となり、共に昨年の実績を上回ることとなった。
はたしてニコ超、その中身は?
まさに、今年もカルチャーのカオスであり、年1回のイベントな為、かつプレミアムであった。こちらのステージでは小泉進次郎と落合陽一らが政治話をしているかと思えば、その前の日には、別のステージで、春風亭 昇太さんMCのもと、「笑点」が開かれていたりする。「踊ってみた」「歌ってみた」など今年も多くのチャレンジャーを目にすることができ、また恒例のようにコスプレイヤーも所狭しと闊歩している。
また、ここには多くの協賛企業がいて、NTTや日清食品など、遊び心を通して、企業は自らのサービスを伝えようとあの手この手で工夫をしていた。ちなみに、ヤマト運輸は、ニコニコ超神社と銘打って、鳥居を作りブースを構え、神様のごとく佇む巨大なクロネコに触るとニャーンと鳴く。願い事をいい、ネットで世界へと発信するのだ。彼らは「届ける」企業だからこそ、願いを届けるわけで理念は一致する。裏ではしっかり再配達などの依頼が楽になる「クロネコメンバーズ」のアピールもしていた。
カルチャーの集大成のイベントへ
さて、他では「バーチャルYouTuber 」という言葉が昨年末から流行り出し、Youtuber ではあるものの、配信する人はバーチャルであり仮想の人物であるというもの。その「超バーチャルYouTu BAR」と称して、バーチャルYouTuberと交流ができるバーをリアルに設置するなど、トレンドを抑えた動きもある。バーチャルYouTuberではミライアカリさん、樋口楓さん、のらきゃっとさん、静凛さん、ねこますが出てきた。また、ニコニコ超会議では、ラスボスと呼ばれる「小林幸子」さんがバーチャルYouTuberのキズナアイさんと歌によるコラボレーションを行い、お互いがお互いの良さをリスペクトしながら、いつもと違った良さを引き出す事に成功させていて、来場者も熱狂したのだ。
以前は、ニコニコ動画から発信したものがリアルで輝く色彩の強いイベントだったのが、いわゆるYouTubeでブレイクしている事がこの場に来ていたりして、僕は、コミュニケーションのあり方が多様化した事で超会議の役割も変わってきている事を思った。このイベントの果たす役割は、ニコニコ動画どころかカルチャー全体を包括するものとなっているように思うのだ。
もっとカオスになればいい
とことんカオスになればいい。岩手県のブースで岩手まるごとおもてなし隊(サクラ凛 さん)が呼びかけていたのは、地方と縁もゆかりもなさそうな宇宙の話だ。
彼女から冊子を手に取っただけなのだが、その後、気になってしまい、調べてみたのだ。どうやら岩手では、全長31キロメートルから50キロメートルの地下トンネルに建設される大規模研究施設「IlC(国際リニアコライダー)」を建設しようという試みがあるらしく、その行動を後押しすべく出て来たのが「素粒子男子」という漫画のキャラクターだ。ブースで配られた冊子では漫画とともにその世界観を伝えていた。岩手のその動きは、確かにニコニコと親和性が高いと言えば、そうかも知れない。
今年も圧巻だったのは「超歌舞伎」である。冒頭の写真がその模様である。NTTのイマーシブテレプレゼンス技術「Kirari」を使って、あたかもそこにいるかのように初音ミクを映像で映し出す。本当に存在する中村獅童さんと仮想であるはずの初音ミクさんの掛け合いはピッタリ。
しかも舞台の幕に映像が映し出され、それが映画のような迫力で、歌舞伎を近未来的に引き立てるのだ。大きく映し出された映像と舞台上のリアルは見事に融合している。まさにリアルと幻想の襷掛け。
鬼気迫る演技でしっかり生の魅力は伝えながらも、それと自然につながるテクノロジー。未来と伝統の融合を体感できるという意味では秀逸なコンテンツと言えよう。中村獅童さんの演技に引き込まれ、初音ミクとの共演に皆が熱狂するのだ。
終わりがけ、中村獅童さんが「帰って来たぞ」と発した一言が彼の境遇を思わせ、超歌舞伎という聖地が彼にとっていかに大きいか思わせた。また千秋楽では特別に千本桜が流れる中、皆がペンライトを振り、中村獅童さんの掛け声とともに反応するその光景はその日の熱狂のピークを迎えた。
ニコ超は、ニッポンを魅力的にさせる舞台へ
この熱狂はリアルでこそ、得られるものだ。しかし、ネットを起点に生まれたものなのである。リアルな場を作り上げる事は、かかる費用の大きさもあって、ドワンゴのような多くの個性を伸ばそうとする心意気と余裕がなければできることではない。そして、ここでの熱狂は、我々で言う所のEC業界にも少なからず影響を及ぼすはずだ。なぜならファンの数自体はタレント並みに多くなくてもその密度は高いからで、この影響力がキモだ。
昨今においては、先程書いた通り、SNSの浸透でコミュニケーションの質は多様化を極めている。そこで、ニコニコ超会議の存在感が薄れつつあると言う声もなくはないが、僕はそうは思わない。だからこそ、ニコニコ超会議は、さらに大きなジャンルをまたにかけ、それらをまとめて面倒を見て、日本のカルチャーを活況へとつなげる存在となってより大きく羽ばたく事を祈念したい。