ジェトロがECを含む世界経済と貿易についてまとめた最新版『ジェトロ世界貿易投資報告』を公開

ECのミカタ編集部

日本貿易振興機構(以下「ジェトロ」)は、2018年版の「デジタル化がつなぐ世界の国際経済」に関する『ジェトロ世界貿易投資報告』を取りまとめ、その内容を公表した。

ジェトロが『ジェトロ世界貿易投資報告』を取りまとめその内容を公表した。ここでは、ECに関連する部分を中心にその中身を見て行く。

越境ECが伸長、日本のEC企業にはチャンスも

まず世界のデジタル貿易についてだ。同分野では、「財・サービス」より「EC・データ」が伸びているとしている。世界の「デジタル貿易」を①デジタル関連財貿易、②デジタル関連サービス貿易、③越境電子商取引(EC)、④越境データ・フローという4指標(下記定義参照)から分析すると、財・サービス貿易に比べ、近年、越境EC、越境データ・フローの伸びが著しいのがわかる。

また、2016年の世界の「越境データ・フロー」(世界で使用された越境インターネット帯域幅)は、2001年の165倍の26万4,968ギガビット毎秒(Gbit/s)に拡大。越境データ・フローの36.8%がアジア、31.4%が欧州によるもので、年平均成長率(01-16年)では、アジアや中南米、ロシアCIS、中東、アフリカといった新興・途上国の伸びが顕著だとしている。

2018年版「ジェトロ世界貿易投資報告」より(以下、同様)

さらに「海外展開進める新興・途上国のデジタル企業については、米国と中国のデジタル大手を比較すると、米国企業は世界各地域で売上がある一方、中国企業は国内売上への依存度が高いとしている。一方、中国企業も近年、東南アジアをはじめ国外への投資を積極化している。

その他の新興デジタル企業も海外進出を進める動きをみせており、日本企業は、ライドシェアリングや電子決済、ECなどのサービスを提供するこれら新興デジタル企業と連携することにより、新たなビジネス展開の可能性が広がるとしている。

電子商取引のルールが世界レベルで形成へ

次に世界の電子商取引のルールについてだ。2017年12月のWTO第11回閣僚会議では、有志国による電子商取引ルール検討の枠組みが、日本などが共同議長国となり、米国を含む71カ国・地域により立ち上がった。2018年に入り、中国なども加わっている。

デジタル貿易政策は、各国の思惑が異なり、規制の導入など独自に進められているのが実態。しかし、電子商取引の有志国枠組みに米国と中国がともに参加していることは、多国間貿易ルール形成の意義と必要性を示すものであるとしている。

2017年のデジタル関連財貿易の規模は2兆9,505億ドル

次に「デジタル技術と世界経済・貿易」についてさらに詳しい数値をみていく。世界のデジタル貿易:財・サービスに比べ越境EC、データの伸びが顕著世界の「デジタル貿易」を①デジタル関連財貿易、②デジタル関連サービス貿易、③越境電子商取引(EC)、④越境データ・フローという4指標から分析すると、財・サービス貿易に比べ、近年、越境EC、越境データ・フローの伸びが著しいとしている。

4つの指標の規模は、①デジタル関連財貿易が2兆9,505億ドル(17年輸出、財貿易全体の17.0%)、②デジタル関連サービス貿易が5,273億ドル(17年輸出、サービス貿易全体の9.9%)、③越境EC(B2C)が5,300億ドル(17年)、④越境データ・フロー(越境インターネット帯域幅)が26万4,968ギガビット毎秒(16年)となる。

越境ECでは中国に存在感、日本はいまだ存在感を示せず

次に越境ECの数値についてみていく。2017年の世界の「越境電子商取引」 (越境EC、B2C)の市場規模は、2014年の2.2倍の5,300億ドルへ拡大した模様(AliResearch・アクセンチュアの推計・予測値)。

中国の越境EC購入規模(B2C)は米国と並び、財輸入以上に中国の存在感が大きい。一方、日本は財輸入に比べ、越境EC購入における存在感が低い。日本は、オンライン購入者に占める越境購入者の割合も5%(PayPal調査)で他の主要国に比べ格段に低く、輸入における越境ECの利用が進んでいない。

2018年以降、ECで勝負に出る好機か

同報告書にあるとおり、世界全体でのECの規模は、その取引額や流通するデータ量をみても膨大なものとなりつつある。ECを含む国際的な電子商取引に関するルール作りが進む中、EC市場での中国の存在感が大きさを増す一方、日本の存在感はいまだ薄いのが実情だ。

報告書では、日本企業にも越境ECをはじめとした国際的な電子商取引の舞台で大いにチャンスがあるとも言及しており、同分野でとかく後塵を拝してきた日本のEC界、そしてそこで日々奮闘する事業体にとっては、2018年以降、新たな施策を展開する上での好機とも言えそうだ。

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