漸進的なピーチ・ジョンらしい進化とは?PJアプリ刷新で見えたお客様を惹きつける理由

石郷“145”マナブ

カスタマーデライト向上インフラ推進部 宮澤雅行さん(右)尹永淑さん (左)

 不思議とこの会社からは通販企業というよりは、職人肌のメーカーのような印象を僕は受けた。それはこの記事を最後まで読み進めていけば納得いただけるだろう。

 今回、訪問したのは株式会社ピーチ・ジョン。社名と同じく「PEACH JOHN」という名の女性向けのインナーブランドを通販と実店舗で展開しているが、カタログ通販のイメージが強い。

 同社は実店舗にも積極的に進出しており、その考え方はおそらく正しい。お客様との接点を増やし、あらゆるアプローチをして消費者を触発してこそ躍進できる時代だからである。

 だから、お客様とのタッチポイントをどこに作っていくかは要なのである。この程、同社は「PEACH JOHN」のスマートフォンアプリにおいても全面リニューアルを実施して、ECに絡むところでも徐々に変化の兆しが見られる。

 アプリの大きな変更点はこれまで別々に存在していた「カタログアプリ」と「検索アプリ」を一つに統合した点にあり、より商品購入に直結しやすくなり、よりECが重んじられるようになったと言えるだろう。

 カスタマーデライト向上インフラ推進部 宮澤雅行さんはこう話す。「カタログ通販、つまり紙媒体は依然として重要であるけれど、情報収集でスマホを使う機会が多くなってきた。それに加えて、かつてであればカタログが発行されたときに伸びる傾向にはあった売り上げが、今も伸びてはいるものの、スマホの浸透と共に安定して季節を問わず売れる傾向になってきている」と。

PEACH JOHNの真骨頂はオリジナリティ

 まさに、ここへのテコ入れがこの会社の成長にプラスに働くと判断したわけだ。また、そのリニューアルの中身をもっと詳しく見てみると、いかにも同社らしくて、彼らのポリシー「顧客感動」と紐づいていると思った。「PEACH JOHN」の世界観をより深く伝えたいという意向も働いて、表示速度が格段に向上した。これまでは画像の表示に7秒程度も要したものが、リニューアルで1秒ほどになったのだ。

 PEACH JOHNの商品にはオリジナリティがあり、「様々な商品を自分達の描くイメージと共にお客様には見て欲しい」という考えから、商品写真の点数は多い。イメージ写真は彼らの世界観を伝える上で、重要な要素なのだが、それが表示速度においての負担となっていた。速度が早くなれば、一度に伝えられる情報量が一気に増える。目先の売上ではなく、まずあらゆる媒体を通して優先されるのが顧客感動。そこが、彼ららしいと思うのだ。

 その他、商品の特性上、サイズに関する悩みは存在することから、これまでも実店舗で店員が採寸した自らのサイズを書き込めるカードを用意していた。現にお客様の中にはそれを来店時持ってくる人もいたという。が、アプリでは店舗で試着した商品のバーコードをスキャンしてカラー・サイズの情報まで記憶できるようにした。これで、店に行くきっかけが増えると共に、その商品データはスマホ内のECでも活用できるようになって、リアルとECとが結びつく。“感動”へのアクセス機会が増えたわけである。

 また、販売ページでもサイトを開いた人に新商品に関してのポップアップがすぐに立ち上がり、日常的にアクションがしやすくなって、カタログでは成し得ないキッカケが生まれた。ピーチ・ジョンから様々な情報をアプリを通してお客様へ届けている。勿論、これは購入履歴に加えて、過去に通販、店舗でチェックした商品などのデータから、ひとりひとりに合わせた内容となっている。あらゆる側面から「PEACH JOHN」の感動に近づくきっかけを、このアプリは行っている。

 カスタマーデライト向上インフラ推進部 尹 永淑さんによれば「ウェブと併用している人がカタログ通販でもリピートする率が高く、かつ実店舗でも行動を起こしている」と話していて、この層を手厚くして、いかに「感動を伝え続けられるか」が自分たちの未来を考える上で必要なことと考えたのだろう。

商品力もお客様をソソらせる仕掛けもまたPJの個性

商品力もお客様をソソらせる仕掛けもまたPJの個性

 不思議なものだが、取材現場にいたときに尹さん、宮澤さん他、広報の田中美帆さん、増田千紗さんまで一斉に目が輝いたのは、新商品に関しての説明の時であった。今振り返っても、彼らは誇らしげでもあり、その時の様子が一番僕の脳裏には焼き付いている。

 新商品というのはノンワイヤーブラ「自由のブラ」である。最近、ノンワイヤーブラに興じる女子が増えていることに着目し、彼らなりのノンワイヤーブラを出してきたのだ。「女性の多くはオシャレに興味があるのに、なぜインナーに関してはお洒落ではなく、楽さを追求しているのだろう」と商品をもってして問題提起したのだ。

 彼らはノンワイヤーにありがちな胸が垂れてしまうという点に注目し、ノンワイヤーでありながら胸の輪郭をきれいに描き、型崩れしにくく、ほどよく厚みを持たせたモールドカップで自然な谷間を作る。無駄を削ぎ落とした新発想の構造で、胸を逃がすことなく正しい位置でキープし、動いてもズレにくく一日中快適に過ごせるというわけだ。その説明は生き生きとしていて、漸進的で力強さを感じた。

 企画として、お客様にはいくつかのチェック項目にトライしてもらい「あなたは隠れノンワイヤー女子ではないでしょうか」と問いかけた。チェック項目を埋めるうち、自らが楽さを追求したノンワイヤー女子だとハッと気づかせる。そして、デザイン性に優れたノンワイヤーブラを見せ、服の中の意識改革をしましょうと謳う。この「隠れノンワイヤー女子」というキーワードはTwitterなどでも拡散され、多くの女子の関心事となった。

 冒頭話したように、だから彼らのやっていることは通販というよりはメーカーだと思った。通販は手段のひとつであり、本当の目的は商品そのものでお客様を「あっ」と言わせることにあるのかもしれない。

 思うに、ポリシーが顧客満足ではなく、満足を超える顧客感動をしていると述べるあたりに、この会社の真髄を感じるのである。お客様の望むものを提案するために耳を傾け、商品作りをするというよりは、お客様と共に歩みながら、想像力を働かせて、お客様さえも驚かせるような一歩先ゆく提案をするのである。

 それをもってして、今回のアプリのリニューアルが活きてくる。そうしたこだわりの世界観や、そこに魅了される企画力がより感度高くタイムリーに伝わることになれば、まわりまわって「PEACH JOHN」のファンとなり、ひいてはそれらの商品の購入者となる。

 これが「PEACH JOHN」なりの進化なのかもしれない。彼らの話を聞いていて、企業の進化には勇気ある挑戦と、そしてその企業の魂と血が通った伝統とが常に隣り合わせだと気づいたのである。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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