越境ECで決済・物流が重要な理由は

西村 勇哉

越境ECビジネスを行う上で避けては通れない決済・物流。日本とは異なる文化、配送方法は現地に熟練していないと中々わかりにくいものがあるだろう。今回はPayPalとDHLの共同セミナーに参加してきた。なぜ、越境ECにおいて、決済・物流が重要な意味を持つのか、最新の越境EC事情を踏まえながら解説していく。

海外が求めているのは安心・安全な決済方法

海外が求めているのは安心・安全な決済方法

まずは決済。2018年は日本でもキャッシュレスの動きが非常に活発だった。特にQR決済システムはヤフーとソフトバンクの合弁会社PayPayが登場し、市場を賑わしている。その他にも国が東京オリンピックや消費税増税に際し、キャッシュレスを促進していこうとしているのもあり、2019年も更に様々な動きがあると思われる市場だ。

多くの人が既に知っている通り、日本のキャッシュレスは海外に比べ遅れている。そのため日本で販売する感覚で、越境ECを運営してはいけない。進出先の各国それぞれがどのような決済方法を求めているのかを把握し、それに合わせた対策が必要になる。

ペイパルが調査したアンケートによると、アメリカ、イギリス、オーストラリアでの越境ECの決済利用率はペイパルが最も多い。そして選ぶ理由は利便性や、クレジットカードのブランドより、「安心・安全」を求めることがわかっている。

日本より越境ECで商品を購入する機会の多い国でも、まだ決済には敏感だ。安易に他国サイトにカード情報を登録するのではなく、ペイパルのような様々な国で利用されているサービスでアカウントを作成し、決済を行うことの方が安全だと考えるのは当然なことのように思える。実際に「どんな条件下であれば越境ECで商品を購入するか?」という質問に対して、「安全な決済手段」と答えた割際は38%と全体の3番目に高い割合なのだ。

外注先が何をできるかはあらかじめ把握しなければいけない

外注先が何をできるかはあらかじめ把握しなければいけない

先のアンケートや「越境ECで購入を諦めてしまう理由は?」という質問に対して上位を占めたものが配送に関連する内容だった。

その物流に関する内容を解説したのはDHLジャパン株式会社 法人営業第四部 野口正弘氏だ。世界各国にエアネットワークを展開しているDHLが強調する物流面でのポイントは迅速で安全な配送だ。ペイパルでのアンケートでも、越境ECでの配送に関する懸念点として届くまで時間がかかるのではないか、きちんと配送されるのかといった不安を抱える人が約半数もいることがわかっている。そのような消費者ニーズに対応しているパートナーと一緒に仕事をすることが越境ECでは大きなポイントになってくるだろう。

実際にDHLのクライアントは商品に対しての高レビューの他、素早い対応、綺麗な梱包に対しての高レビューがつくこともしばしばあるという。EC業界に従事していると盲点かもしれないが、一般の消費者は梱包に対しての意見を店舗にぶつけがちである。これはお褒めの言葉でもクレームでも、だ。そのため流通加工を担う物流企業の選定には気をつける必要があるのだ。DHLの事例のようにお褒めをもらえると、リピーターの醸成の第一歩にもなる重要なフェーズなのだ。

また、税制への対応も事業者にとっては悩みの種だ。国によって細かく変わる法律は物流面でも大きな壁になり、現地を熟知している者でないと商品が正しく配送できないといったことになる。それほど物流における法律関係の業務はシビアなのだ。昨今では多くの物流企業が税関をスムーズに通れるよう準備を整えているが、越境ECに進出する際は外注先が対応できる国をあらかじめ確認しておく必要性は非常に高いとのことだ。

多様なニーズがあることを忘れずに。

多様なニーズがあることを忘れずに。

最後にDHLを利用し、売り上げが向上した例を紹介する。イギリス発祥のGYMSHARKはDHLを利用したことによって単価が70%増加、注文から配送までを2〜4日で完了することができるExpress輸送オプションを選択するユーザーが50%、そしてExpress輸送オプション追加後の売り上げ増加率が210%と驚異の伸びを見せている。もちろん、Express輸送オプションは有料のサービスだ。それでもユーザーが利用するのは少しでも早く商品を受け取りたいから。配送費が少し高くなろうとも、商品を早く受け取りたいというニーズは高い。

ここで勘違いしてはいけないのは、商品の受け取りを急がない人もいるということ。物流だけに留まらないが、サービスは消費者の多様なニーズに対応できる方がいいだろう。越境ECともなれば日本とは違う文化があるため、事業者だけの判断でサービスを確定するのにはデメリットになってくるかもしれない。

どんどん複雑化が進んでいる越境EC市場だが、市場はまだまだ成長している。中国市場などは競争が激化しているという人も多いが、実際はまだまだブルーオーシャン市場だという。

丁寧な市場分析はもちろんのこと、越境ECの課題である、決済・物流・法律・言語など専門家に相談すべき内容は越境ECに関してはどんどん質問したほうがメリットは大きい。その分自社で動くことが少なくなり、商品開発や、企画・マーケティングに注力することが可能となる。障壁を障壁と思わず、様々な企業と相談することが重要だ。

まずはハードルが高いと思わずに、越境ECに踏み出してみたらいかがだろうか。

 ECノウハウ


記者プロフィール

西村 勇哉

メディア運営事業部 編集チーム所属
見た目はヒョロイのに7歳から空手を習っています。
他にも水泳、サッカー、野球、弓道の経験有り。
たまにメルマガに登場しますが乃木坂46の話しかしません。
連絡先→nishimura@ecnomikata.co.jp

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