返礼品バブル終了か?「ふるさと納税」法改正後のアンケートが実施される
総合旅行プラットフォーム「エアトリ」を運営する株式会社エアトリ(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:吉村 英毅、以下エアトリ)は、20代~70代の男女685名を対象に「ふるさと納税」に関する調査を実施した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。
調査概要
同社によれば、2008年にスタートした「ふるさと納税」。返礼品の競争が過熱し、今年の9月からは“返礼品の返礼割合を3割以下、地場産品のみ”という規制も導入されることで、益々ニュースで目にする機会が増えている。そこでどのくらいの人が実際に利用しており、法規制に対してどのように感じているのか調査を行ったとしている。
調査タイトル:「ふるさと納税」に関するアンケート調査
調査対象:20代~70代の男女685名
調査期間:2019年4月23日~4月26日
調査方法:インターネット調査
調査主体:株式会社エアトリ
年代によって寄付実施率に差
調査1:今まで「ふるさと納税」を行ったことはありますか?
「ある」と回答した割合を年代別に見たところ、20・30代では44.4%と約半数だったのに対し、40代では42.1%、50代では35.7%、60代以降では28.4%と漸減した。
未実施の理由は「制度がよくわからない」
調査2:(「ふるさと納税」をしたことがない人に対し)なぜ「ふるさと納税」を利用していないのですか?
「収入がない、少ない」(19.9%)、「制度に反対」(3.6%)等の『やらない、やりたくない』という理由以上に、「制度がよく分からない」(25.5%)、「面倒臭い」(22.4%)といった制度の難しさによってふるさと納税をしていない人が多いことが分かった。
寄付なのに「返礼品目当て」
調査3:(「ふるさと納税」をしたことがある人に対し)納税先はどうやって決めましたか?
8割超えの人が「返礼品」と回答した。2位にも「還元率の高さ」(28.3%)が入り、場所や税金の使い道で選んでいる人は少数派のようだ。
返礼品規制の法改正「知らない」が18.2%
調査4:2019年6月以降、返礼品に規制がかかることを知っていますか?
「知っている」人が大多数を占める一方で、18.2%の人が「知らない」と回答した。まだ周知がなされていないようだ。
返礼品規制「賛成」が29.3%、「反対」が5.4%
調査5:“礼品の返礼割合を3割以下、地場産品のみ”という返礼品の規制についてどう思いますか?
「賛成」が29.3%、「反対」が5.4%と「賛成」の方が多くなったが、過半数が「どちらとも言えない」と回答した。
また「どちらとも言えない」という意見には「規制は理解できるけど、自身としては還元率の高い商品をもらえた方が嬉しい」というものや、「そもそもふるさと納税の仕組みが理解できない」というものも多く見られた。
「ふるさと納税制度そのものをやめれば良い」の声も
回答の中には以下のような声があったようだ。
●規制「賛成」の理由
・地元と関係ない返礼品で納税者を集めようとするのは、短期的にはインパクトがあって成果が上がるかもしれないが、長期的に過剰な競争や返礼品エスカレートで消耗するのは良くないので。 地域振興戦略のひとつとして、地場の魅力やコンテンツを伝えるものを発信したほうが良い。(30代・女性)
・特産品がない地域には不公平な気がするが、Amazonの金券など全く地域に関係ないもので税金を集める地域もあり、制限は仕方ないのかとも思う。(40代・女性)
●規制「反対」の理由
・「お礼」に規則なんて付けなくても…。 「お礼」ではなくなる気がします。気持ちの問題なのに…。(40代・男性)
・地方の努力を無にする。いちいちクレームをつけるなら、ふるさと納税制度そのものをやめれば良い。(60代・男性)
・返礼率を上げてでも税収を得たい地方の判断を尊重すべき、また地場産品も地域間で格差があるのだから、それだけに縛るのは地域によっては大変不利になる。(30代・女性)
●規制「どちらでもない」の理由
・規制の意味合いもよくわかるが、実際自分にとって魅力的であれば、納税先を返礼品で決めているというのが実情のため(40代・男性)
・ふるさと納税制度自体、いまいちわからない方も多いと思います。 もう少し、浸透するように、区役所なり、市の説明が必要だと思います。 (40代・男性)
くすぶる「制度廃止」論
調査結果にあるように、6月からの法規制を「知らない」が約2割となり、 納税先を「返礼品」で選ぶ人が8割超えである一方で、 返礼品の規制には「賛成」が29.3%、「反対」が5.4%という結果となった。
ふるさと納税制度導入から間もなくして、制度の隙を突く形で高額な返礼品を各自治体が用意する状況が広がり、制度の主旨に反する形で過激ともいえる返礼品競争が発生していた。そもそも自治体の施策への寄付であるふるさと納税制度であるが、寄付をする側もそうした返礼品目当てで行うことが基本となるという状況に陥っていた。
こうした事態を重く見た政府と総務省は再三、各自治体に対して、高額な物品や金券を返礼品としないよう通達や声明の形で自制をうながしてきたが、多くの自治体がその意向に従う一方、大阪府南部の某自治体などは、まったく従わないどころか、総務省側に反旗を翻すかのような態度を取り続けた。
その結果、返礼品について寄付額の原則3割以下にすべし、地元の産品を使うべしといった内容を盛り込んだ法改正をするに至ったのだ。つい先日は、その大阪府南部の自治体をはじめ、方針を改めない複数の自治体が、ふるさと納税制度の対象から除外すると総務省が公表したところだ。
こうしたこともあり、すでに返礼品バブルといった状況は沈静化に向かいつつあるが、はたしてふるさと納税本来の主旨にもとづいて制度が運用されるかは不透明で、制度そのものの廃止についての議論も政界や省庁、一般の間でくすぶるなか、今後ふるさと納税制度がどうなっていくか大いに気になるところだ。