「二重価格表示」方針案発表 21日までパブリックコメント

ECのミカタ編集部

将来の販売価格を参考価格として、現在の価格を安く見せる「二重価格表示」について、消費者庁は、景品表示法を適用する際の執行方針を発表した。今月21日まで、パブリックコメントを受け付けている。

二重価格表示とは 過去に行政処分も

「二重価格表示」とは、現在の販売価格より高いほかの価格を併記して表示する販売方法。今回は「将来の販売価格」を参考価格とさせるケースで、たとえば、

「赤ワイン 来月1日から7800円 現在セール中5800円」
「ペットボトル水12本入、セールで1200円 来月1日から2000円」
などと表示する販売手法だ。

この表示が本当なら問題ないが、実際には将来販売の予定がない場合などは、消費者をだましているとして、景表法上の「不当表示」にあたる可能性がある。行政処分や、売上の3%の課徴金が科されることがある。

過去には、「期間限定」とうたいながら、その期間を過ぎても表示した価格で販売しなかった通販会社が排除命令を受けたケースや、テレビ通販会社が番組内で販売した商品で、ごく短期間のみ「『期間限定以降』の販売価格」で販売して措置命令を受けたケースなどがある。

「あいまい」な基準 補完へ

今回方針案を発表した背景には、景表法の適用基準が比較的あいまいだったことがある。

「将来の販売価格表示」への規制は、消費者庁が2016年に出した「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方(ガイドライン)」が現在の基準になっている。

そこでは、「表示された将来の販売価格が十分な根拠のあるものでないときには、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがある」とされているほか、具体的な事例は一つしか書かれておらず、事業者にとってわかりにくいとの批判が出ていた。

そこで消費者庁は、「将来の販売価格を比較対照価格として用いた二重価格表示等に関する意見交換会」を今年5月に初開催。8月にも第2回を開催し、ガイドラインを補完する目的でこのほど方針案を公表した。

適用のケースを例示 消費者庁「事業者の準備に役立つ」

発表した方針案では、景表法が適用される可能性があるケースを例示している。

たとえば適用の可能性があるケースとして、
「事業者がセール期間経過後に商品等の販売自体を行っていない場合」
「比較対象価格とされた将来の販売価格とは異なる価格で販売している」場合だとおおまかな基準を伝えている。

さらに、消費者に対して示していた「将来の販売価格」で販売した期間がごく短時間にすぎなかった場合も「同様(適用の可能性がある)」としている。

適用されないケースとしては、
「合理的かつ確実に実施される販売計画を有していたことを示す資料やデータ」がある場合だと説明。製造計画や、他の事業者との契約がきちんと整っていることが必要だとした。


そのほか、将来の販売価格で販売できない「特段の事情」が認められて適用されないケースとして

「酒店が、『赤ワイン 来月1日から7800円の品 現在セール中にて 5800円』と表示したが、表示した後に地震が発生し、A酒店の店舗が損壊したことにより、セール期間経過後に赤ワインを販売できないとき」

「通信販売業者が、『除菌ハンドソープ セール価格700円 来月1日か ら1000円』と表示したが、表示した後に新たな感染症が発生し、その流行が著しく拡大したため、表示開始時までには予期できなかった需要の急増が生じ、除菌ハンドソープの販売が増加して在庫がなくなり、仕入先の業者から納入してもらうこともできなくなったことにより、セール期間経過後に除菌ハンドソープを販売できないとき」

などと具体例をあげている。


一方で、「特段の事情」が認められないケースとしては

「百貨店が、『お中元セール うなぎのかば焼き 来月1日以降は4800円 セール価格3500円』と表示したが、一部の顧客からセール継続を求められたためセール期間を延長したとき」

「家電量販店が、『ドラム式洗濯機 来週木曜日までの特別セール17万9000円 来週金曜日以降は19万9000円』と表示していたが、セール開始後他社が値下げしてきたため対抗上セールを継続したとき」などとした。

案をまとめた消費者庁表示対策課の担当者は、「景表法が適用される具体例を示すことによって、事業者にとっては『将来価格の表示』をどのようにすれば良いのかを事前に予測でき、準備に役立つ」と説明している。

パブリックコメントは
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=235070035&Mode=0
から提出できる。

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