物流倉庫とは?役割や業務内容、種類別の特徴をわかりやすく解説

ECのミカタ編集部

効率的な物流管理に欠かせない存在として注目される「物流倉庫」。物流業務の効率化やコストダウンの方法に頭を悩ませる担当者も少なくないだろう。今回は、物流倉庫の役割や倉庫で行われる業務内容、種類別の特徴をEC初心者でもわかりやすいように解説する。

物流業務を委託する場合に知っておきたい費用や注意点となるデメリットも記載する。物流倉庫の基礎知識を改めて理解し、自社業務の効率化・コストダウンに向けてどのように活用できるか考えてみよう。

目次

●物流倉庫とは、商品の保管・仕分け・配送を行う施設のこと
●物流倉庫の役割
●物流倉庫の種類
●EC物流に特化した物流倉庫4タイプ
●物流倉庫で行われる業務内容
●物流倉庫を活用するメリット
●物流倉庫を活用するデメリット
●物流倉庫業務を委託する場合の費用
●物流倉庫の特徴を知り業務の効率化やコストダウンを検討しよう

物流倉庫とは、商品の保管・仕分け・配送を行う施設のこと

物流倉庫とは、販売者から消費者に商品が渡る過程のうち、商品の保管から、仕分け・配送までを担う施設のこと。物流倉庫というと、商品の保管のみを目的としているイメージが強いかもしれない。しかし現在では、倉庫のシステム化が進んだことから、単に商品を保管するだけではなく、効率的な在庫管理や要望に応じた梱包・出荷などが実現できる。そのため、商品が手元に届くまでの日数を短縮したり、ニーズに沿った梱包を形にしたりといった、顧客満足度向上への施策ができる施設として変化している。

物流倉庫の役割

商品がメーカーや事業者から消費者の元に届く過程は、自社に倉庫を保有し、商品の製造から保管、配送までの全行程を社内で担うのが一般的だった。しかし、自社で倉庫を保有すると維持コスト以外にも、人件費や光熱費といったさまざまな費用が発生する。また、商品を盗難から守るといったセキュリティ対策まで行う必要があり、自社物流の運用は大きな負担となっていた。

そこで新たに登場したのが、クライアントの商品を預かり、物流業務を一手に担う「物流倉庫」だ。これまで自社で担う必要があった物流業務を、専門業者に委託することで、物流体制の構築にかかる費用を大幅に軽減。さらに、煩雑化しやすい物流業務の省力化にもつながった。

システム化された物流倉庫は、手間やコストの負担を軽減し、消費者の元に迅速に商品を届けるために無くてはならない存在となっている。

物流倉庫の種類

物流倉庫にはどのような種類があるのか、対象や機能別に見ていこう。

BtoB倉庫とBtoC倉庫の違い


物流倉庫には、企業向けの発送業務を行う「BtoB倉庫」、個人向けの発送業務を行う「BtoC倉庫」の2つがある。双方の違いは以下の通りだ。

BtoB倉庫の場合、出荷先1つに対する同一商品の保管量や出荷量が多いため、納品先ごとの細かい納品ルールに対応してくれる。倉庫と専属契約できるケースもある。

一方でBtoC倉庫の場合、扱う商品が多品種小ロットという特徴があり、複数の業者と同じ倉庫を利用することがある。販売者が提供するサービスに応じた個別対応に長けており、商品の入れ間違えや誤送などがないような仕組みが構築されている。

なお、倉庫によって扱う種類が異なる場合があるため、選定時には注意が必要だ。前述したようにBtoB倉庫とBtoC倉庫はそれぞれ特徴が違う。そのため、商品に対する管理方法が異なり、誤った種類を選択することで運用が困難になるケースがある。自社が求める物流管理と運用を理解し、自社商品にマッチする物流倉庫を選択しよう。

ディストリビューションセンター(DC)


ディストリビューションセンター(DC)とは、入荷した商品の検品や保管、ピッキングから発送までを行う倉庫のこと。面積が大きく、保管設備が必要となるためコストがかかる。物流倉庫内に在庫を所有することで急な注文にも対応しやすいため、小売業や製造業、卸売業など幅広い業種に活用されている。

プロセスディストリビューションセンター(PDC)


プロセスディストリビューションセンター(PDC)とは、ディストリビューションセンターに流通加工の機能が含まれる倉庫のこと。具体的には、商品へのタグ付けや家具の組み立て、食品の加工などに対応している。専門性が高く技術力が必要な流通加工サービスを提供するため、利用には高いコストがかかるが、オリジナリティのあるサービスを提供しやすい。

トランスファーセンター(TC)


トランスファーセンター(TC)とは、在庫を保管せず、中継地点として仕分けや積み替えのために活用される倉庫のこと。複数拠点に送る商品を配送先別に細かく仕分けるのがトランスファーセンターの主な役割だ。これにより、配送の効率化を図っている。

EC物流に特化した物流倉庫4タイプ

近年、市場拡大を続けているEC事業。ここでは、一般消費者向けのEC物流に特化する物流倉庫4タイプを紹介する。

販売主体タイプ(フルフィルメントセンター)


販売主体タイプとは、EC事業者の物流業務をサポートする倉庫のこと。商品の保管・注文受付・送り出し・顧客対応までの業務を担う、フルフィルメントセンター(FC)と呼ばれるケースもある。販売主体型の有名なFCとしては、「フルフィルメント by Amazon」や「楽天スーパーロジスティクス」などが挙げられる。

関連記事:フルフィルメント by Amazon(FBA)とは?メリットや留意点を解説

業種特化タイプ


業種特化タイプとは、EC事業者の中でも一定の業種に特化し、流通加工に対応できる倉庫のこと。例えば、食品関連のEC事業者であれば、食品の品質を保つ低温保管が可能な設備が整い、アパレルを専門に扱う倉庫であれば、検針や修繕などができる設備が整う。専門設備を必要とする商品を扱う事業者が、設備費用を削減したい場合などに適しているEC物流倉庫だ。

倉庫サービス主体タイプ


倉庫サービス主体タイプとは、物流倉庫が主体となりEC事業者の要望に応じた対応を行う倉庫のこと。倉庫によってサービス内容は異なるが、電化製品やパソコンなどの部品の組み立てや、木材やガラス材のカッティングなどの流通加工が委託できる。EC事業者ごとに、倉庫運用の最適化が実現できるため、特殊なケースも依頼しやすい。

システム会社主体タイプ


システム会社主体タイプとは、システム会社がEC事業者に適した倉庫を紹介して運用する形式の倉庫。在庫管理システム(WMS)などを活用し徹底した在庫管理を行うため、商品の種類やロット数に関係なく利用でき、費用を抑えやすいといったメリットがある。仕組み化されたルールの基に運用するため、人的ミスが発生しにくい点も魅力といえるだろう。

関連記事:EC物流倉庫の選び方は?相場の費用やおすすめの物流倉庫6選を紹介

物流倉庫で行われる業務内容

ここからは、物流倉庫ではどのような業務が行われているのか、業務フローに沿って紹介する。

入庫・検品


「入庫」とは、倉庫に届いた商品を保管するのに適した場所へ移動させる作業のこと。入庫時は、在庫数を管理する重要なプロセスとなるため、在庫管理システムを活用して管理するのが一般的だ。また、入庫時には破損やキズなどの異常がないかをチェックする「検品」もあわせて行うケースが多い。

ピッキング・仕分け作業


「ピッキング」とは、帳票や出荷指示書などの受注データをもとに、指示された商品を倉庫内から探し取り出す作業のこと。近年ではデジタル化が進み、バーコードから読み取った商品を、指示された通りにピッキングするという流れの倉庫が増えている。

ピッキングが終わると「仕分け作業」に入る。仕分け作業とは、発送先ごとに商品を仕分ける作業のこと。物流倉庫の規模や種類によって、手作業の仕分けのほかに、自動仕分けを活用するケースがある。

流通加工


荷主のニーズに応じて加工する作業が「流通加工」だ。一般的にはオプションとして扱われている事が多い。流通加工の具体例として、次のような作業が挙げられる。

●複数の商品を一つにまとめた詰め合わせ
●ギフト用のラッピング加工
●商品への値札付け
●ラベルの貼付 など

どのような流通加工に対応しているかは、物流倉庫によって異なる。そのため、流通加工を希望する場合には、事前に具体的な対応範囲を確認しよう。

梱包・出庫


仕分けが完了した商品を包むのが「梱包作業」だ。割れやすい商品には緩衝材を使うなど、商品に適した対応を行う。梱包作業が完了し、出荷前の検品作業を行うなどの最終チェックを経て配送トラックに積み込めば、無事「出庫」となる。

物流倉庫を活用するメリット

自社に物流倉庫を備えていない場合や、商品数が増えて自社倉庫で賄うことが難しくなっている場合もあるだろう。そのようなケースでは、外部の物流倉庫に委託することも選択肢の一つだ。ここからは、外部の物流倉庫を利用する場合のメリットを見ていこう。

業務の効率化


物流業務に特化した専門業者へ依頼するため、業務効率化や合理化の実現が可能なことが特徴だ。自社倉庫では、他業務と並行して物流業務を行うためマルチタスクを強いられ業務効率が低下しやすい。

一方の物流倉庫であれば、効率性を重視した設備や管理のためのシステムが完備されており、物流業務の合理化を図りやすい。倉庫管理を委託することで、倉庫管理が効率的に行われ、業務効率の改善が期待できるだろう。

コスト削減


業務効率化によって、倉庫の運営にかかる費用や人件費の削減も期待できる。仮に、自社で倉庫を構築し維持する場合、設備投資や人件費などに膨大なコストを要する。また、自社倉庫では急激に注文が増減した場合、人員を増やすまたは減らすといった柔軟な対応は難しい。

一方で、倉庫業務を外部委託することで、設備管理費などが不要なほか、繁忙期・閑散期も自社の物流量に応じた柔軟な対応が可能だ。時期に応じて適切な在庫を確保できるためコストの最適化につながるだろう。

物流作業の負担軽減


自社の物流作業における業務負担削減もメリットといえる。EC事業者は限られたリソースの中で、商品企画や仕入れ、在庫管理、受注管理といったさまざまな業務に対応する必要があり、業務負担が大きい。

物流倉庫の活用で、これまで物流業務に割り当てていたリソースを、「新商品の開発」「マーケティング」などの生産性の高い別業務に投入できれば、利益の拡大が期待できるだろう。さらに、物流のノウハウをもつプロに任せることで物流のクオリティー向上も図れる。人員の不足や配置に悩んでいる企業にとっては大きなメリットといえるのだ。

関連記事:物流倉庫の自動化とは?システム導入のメリット・デメリット、国内企業の事例を解説

物流倉庫を活用するデメリット

自社物流の改善を促す物流倉庫だが、活用するうえではデメリットを理解しておくことが重要だ。注意すべき点を見ていこう。

物流ノウハウが蓄積しづらい


物流倉庫に業務を委託すると、物流業務を全般的に任せることになるため、物流ノウハウを蓄積しづらいというデメリットがある。将来的に自社での内製化を検討している場合には、「出荷や流通加工など一部の業務のみを委託する」「委託業者との定例会を設けてノウハウを学習する機会を作る」といった検討も必要だろう。

情報伝達の遅れが懸念される


自社物流と比べると、情報伝達にタイムラグが発生しやすいことが挙げられる。特にEC物流は、注文のキャンセルや注文内容の変更といったトラブルが発生しやすい。イレギュラーな対応が必要になった場合に、担当者とすぐに連絡が取れるよう、連絡ツールやフローなどを整えておくことが重要といえるだろう。

また、倉庫委託によって責任の所在がわかりにくくなることにも注意が必要だ。物流倉庫に委託した場合、契約した会社とは別の下請け企業が、実際に作業を行っているケースがある。トラブル発生時のことも念頭において、委託する際は現場の組織体制などを十分把握しておこう。

物流倉庫業務を委託する場合の費用

物流倉庫業務を委託する場合の費用は、固定費と変動費に分けられるのが一般的だ。固定費と変動費の具体的な内容を確認し、実際に運用する際の参考にしよう。

固定費


毎月固定で発生する費用が「固定費」だ。梱包方法や出荷量にかかわらず、定期的に支払う必要がある。物流管理を委託する場合にかかる、主な固定費用は次の通りだ。

●システム利用料
●倉庫保管料
●業務管理料 など

「システム利用料」とは、倉庫管理システムを利用する際に発生する費用のこと。近年では物流管理がシステム化されているため、倉庫作業を行うにあたって必要な情報の収集や入力が行われる。

また、商品を保管するスペースを借りる際に発生する「倉庫保管料」、荷物を破損から守るなど商品全般の管理にかかる「業務管理料」もある。特に倉庫保管料は、費用単価やスペースの貸出方法が物流倉庫によって異なるため、自社の商品保管に適した倉庫の検討が必要だろう。

変動費


取り扱う商品や入庫件数など、月によって変わる費用が「変動費」である。物流管理を委託する場合にかかる、主な変動費は次の通り。

●入庫費用
●梱包費用
●発送費用 など

「入庫費用」は、商品の仕分けや入庫する際にかかる費用である。段ボールやパレットなど入庫方法によって単価設定されているケースが多い。そのほか、「梱包費用」や「発送費用」など、出庫するまでに必要な業務に対し、それぞれ費用がかかることを覚えておこう。

委託先によって、単価設定方法やオプション内容などが異なるため、費用対効果の高い委託先を比較検討できるとよいだろう。物流倉庫の費用については、下記の記事に詳しく記載しているので参考にしてほしい。

関連記事:物流倉庫の委託にかかる費用・価格相場

物流倉庫の特徴を知り業務の効率化やコストダウンを検討しよう

販売者から消費者に商品が渡る過程のうち、商品の保管から、仕分け・配送までの工程を担う「物流倉庫」。物流需要の高まりとともに、物流サービスが充実し商品の特性に応じて種類も複数存在するのが特徴だ。効率的な物流の実現には、物流倉庫のような合理的な商品管理・運用が求められるだろう。自社で物流倉庫を用意・運用することが難しい場合は、外部に委託するのも一つの方法だ。費用対効果などを検証し、自社に適した物流管理方法を検討し、効率化やコストダウンを検討してみてはいかがだろうか。

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