国内通販市場はスマホ経由のECが拡大をけん引、2022年の物販ECは対前年7.6%増の見込み
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋、社長:清口正夫)は、新型コロナウイルス感染症の流行を受けたニューノーマル時代において、ECを中心に存在感が増している通販(物販)の国内市場を調査し、その結果を「通販・eコマースビジネスの実態と今後2022」にまとめた。
本調査では、通販市場を形態別(EC、カタログ、テレビ、ラジオ、その他)、商品カテゴリー別に調査・分析。加えて、主要企業のケーススタディやネットスーパーやオンライン旅行サービスなどの注目市場動向を捉えている。
2022年市場見込(2021年比)
・通販(物販) 15兆4,263億円(6.6%増)
ECの好調が拡大をけん引。テレビは微増、カタログやラジオは減少~
・EC(物販) 13兆5,927億円(7.6%増)
2021年にPC経由を上回ったスマートフォン経由を中心に伸びる~
・ネットスーパー 2,770億円(12.1%増)
全国規模の大手流通企業だけでなく、地域に根差した地方チェーンの参入も進む
通販(物販)の国内市場(概要)
2020年は新型コロナの流行により緊急事態宣言が発出され外出自粛を余儀なくされたため、食品や日用品を含めたあらゆる物を購入する際に通販チャネルが見直され、店舗からの新規顧客の流入が進んだ。また、政府の一律10万円給付により家電や家具の購買が急増したほか、テレワークの実施によりパソコンやデスク・椅子などの販売が好調で、市場は前年比17.7%増となった。ECはもちろん、テレビやカタログ、ラジオも伸びた。
2021年もコロナ禍での外出控えが継続しており、伸びはやや落ち着いたものの、通販利用は増えている。家電製品・パソコンや家具・インテリアなどの耐久品は買い替えサイクルが長いため、特に前年の反動を受けた。
一方、食品や日用品などは着実に通販利用が定着しつつあり、今後も堅調な伸びが期待される。また、チャネル別では、カタログやラジオが再び減少に転じ、テレビは微増にとどまるが、ECは好調を維持しており、特にスマートフォン経由の利用が増える中、参入企業も対応を強化し需要創出につなげている。
近年の通販市場の拡大はスマートフォン普及に伴ECの利用増加が大きく寄与している。カタログやテレビ、ラジオでもECへの送客を図る動きがみられ、EC比率の上昇を後押ししている。コロナ禍でスマートフォンの利用率や使用時間が増加し、特にSNSや動画サイトによりインターネット広告に触れる機会が増えたことも、追い風となっている。
企業側はスマートフォンに向けたUI(ユーザーインターフェイス)・UX(ユーザーエクスペリエンス)の改善やアプリの提供が需要の取り込みに直結するため、ユーザビリティの強化を図っている。
EC
2020年は、新型コロナ流行を受けたテレワークや外出自粛の広がりにより、自宅での仕事環境の整備や“快適性”を重視する消費者が増えたことや、一律10万円の給付があったことから、高額な家電製品・パソコン、家具・インテリア・寝具が大きく伸びた。
2021年は前年の反動もあり、それらの品目の急激な需要増は落ち着いたものの、EC利用の定着により堅調に伸びた。食品・生鮮品は実店舗の位置づけが大きいが、EC利用は順調に増えており、引き続き高い伸びとなっている。
日々の生活必需品のためリピート率は高く好調が続くとみられ、参入企業も物流インフラの整備やエリアの拡充などにより需要の取り込みを強化している。
EC(受注形態別)
受注形態は、長らくPC経由の受注が過半数を占めていたが、コロナ禍によりスマートフォンの利用率が高まったことで、2021年はスマートフォン経由がPCを上回り過半数を占めた。動画サイトやSNSの利用拡大に伴いインターネット広告に触れる機会が増えたことが、スマートフォン経由のEC利用増加の一因となっている。
企業側でもスマートフォンに特化したUIの整備や専用アプリの配信を積極的に行っている。特に、アプリはポイント施策による新規顧客の獲得とユーザビリティの高さにより、ユーザーの定着につながっている。
PC経由も構成比は低下したものの、在宅時間の増加を受けて堅調である。
注目市場:ネットスーパー
GMS/SMをはじめとした流通系企業による、店頭の食品・生鮮品などを、自社物流網を活用して最短で注文当日に配送する店舗発送型のサービスを対象とする。店舗発送型をメインとし、補助的にセンター発送を行うサービスも対象とする。
2020年は、新型コロナ流行により、消費者の外出を敬遠する動きがみられ、新たにネットスーパーを利用するケースが急増した。参入企業側でも増加する需要に対応するために物流や受発注システムの改良、専用アプリの提供によるユーザビリティの強化に取り組んだことにより、市場は大幅に拡大した。
2021年は、参入企業の増加がみられ、前年以上に市場は活性化した。全国規模の大手流通企業だけでなく、地域に根差した地方チェーンの参入が目立ち、それらの企業は即日配達対応などにより差別化を図っている。
また、既存の参入企業は取り扱い店舗を順次拡充することによりエリアの増強を進めており、カバー率の拡大が新規顧客の獲得につながり、取扱品目数の増加による単価アップも寄与して、市場は前年に引き続き大幅な拡大となった。
通常のネット販売と比較して受注管理や配送システムといった設備投資が課題であったが、大手通販企業が自社のプラットフォームを活用したビジネス支援を積極的に行っているほか、参入企業は取扱商品数の強化や物流拠点の構築、店舗受け取りシステムの拡充などサービス面で強化を図っており、今後も新規顧客獲得とリピート顧客の定着によって市場拡大が続くとみられる。
コロナ禍で成長が加速した国内EC市場だが、スマホ比率の高まりやネットスーパーの市場拡大というトレンドは今後も継続していくだろう。これからのECビジネスにおいては、コロナ禍での一過性のトレンドと、長期的に継続するトレンドの見極めが大切だと言えそうだ。